「ブログ最近サボリがち」

世界一周768日目(8/6)

 

 

起きようか

二度寝しようか毛布の中でウダウダしてていると、

ドミトリーの扉が開いた。

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サンディエゴで描いたウェルカムボード(の絵)がすげぇことになってる!
あ、僕の描いたのは右側の二人なんですけどね。

 

 

 

 

そっと誰かが中に入って来る。

 

 

「あ、どーも♪」

「起こしちゃいました?」

スーツケースを持った歳上の男性。短期旅行者のようだ。

 

 

「や、大丈夫です。どうせ今起きるところでしたから」

やや声のトーンを上げてフレンドリーに話す。

 

 

「ベッドってどこが空いてるんですかね?」

「そことそこですね。
あ、でも明日僕チェックアウトするんで
実質シングルルームっすよ!」

「は、はぁ」

 

 

丁寧な受け答えだが、
そこには仲良くなろうといった意思はあまり感じられなかった。
こちらからフレンドリーに行ったのにそりゃないぜ..。

 

 

 

ここはメキシコシティ

日本人宿「ぺんしょん・あみ~ご」の滞在も今日で4日目。
宿代は今日の分まで払ってしまったので、明日出るつもりだ。

 

 

 

 

 

そのあまりフレンドリーではない日本人男性とは
共有スペースでも一緒だった。

ここの宿は来た初日から朝食にありつくことができる。
僕はトレイの上にジャムサンドを何セットか作り、
コーヒーをプラスチックのマグに入れた。

僕はiPhoneを片手にいつものように
FacebookやTwitterのアプリを開いてた。
眼鏡の男性はポツポツと僕に質問をした。

 

 

「ここの宿って日本人多いんすですかね?」

「(そんなこと訊いてどうする?
ここに一年中いるわけじゃねーんだから
多いか少ないかなんて知るわけねーだろ?
っていうかさっきドミ見ただろ?)
さ、さぁ?時期によるなんじゃないですか?」

 

 

「ここに長く泊まってる人とかいるんですかね?」

「(そんなこと訊いてどーする?)
ま、まぁ、一年くらい滞在されてる方はいみたいですよ?」

 

 

「近くにスーパーマーケットあるんですかね?」

「(わりい、
おれスーパー行ったことねえわ。
っていうか、そこに地図あんべ?)
ウォルマートがあるらしいですよ。僕は行ったことないですけど..」

 

 

「オーナーさんってここに住んでるんですか?旦那さんは?」

「(なぜ知りたい??)
す、住んでますね。旦那さんは知りませんねぇ」

 

 

先ほどのファーストコンタクトのせいもあり、
僕はかなりそっけなかったし、質問がひどく野暮な質問に思えた。

他人を詮索するような質問は好きじゃない。
別に知る必要のないこともある。

朝食を済ませて僕はすぐに外に出た。
ドミトリーで彼と一緒にいると気が詰まりそうに思えた。

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革命記念塔を過ぎた辺りで僕はまだモヤモヤしていた。

ひとまず売店で一本タバコを買い求め、
ベンチに腰を下ろしてそれを吹かした。行き交う人を眺めながら

『どうしてあんなにイライラしていたのか?』

と考えた。

 

 

ちょっと前までは
「大切なのは目の前にいる人」「愛だよ!愛!」とか言って
ピースな穏やかでいた自分を思い出せすことができなかった。

あんな野暮な質問でもニコニコしながら答えてもよかったのに。
まぁ、愛想笑いできない時もあるけどさー。

 

 

気持ちの整理がつくと僕は「虐殺博物館」へと向かった。

なんでこのタイミングで虐殺博物館なのだろうと思うけど、
今日明日しかチャンスがないのだ。

 

 

 

虐殺博物館の近くには
拷問に使えそうな四角錐がいくつも並んだ池のような場所があった。

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建物の前にはツアーの団体がおり、
コンダクターが建物の説明をしていた。
僕は受付に行き55ペソ(420yen)で割引のチケットを購入した。

 

 

館内は清潔感が溢れていた。

クロークでギターとサブバッグを預けると
エレベーターに乗るように案内された。

 

 

5階でエレベーターは止まり、
係員に案内されて暗い部屋へと入る。

そこでは虐殺の舞台になった場所なんかのコラージュの映像が
スペイン語と共に流れた。

「人類の負の歴史をいつまでも忘れないように
この記念館が作られたのです」そんな感じだろう。

 

 

 

内容の半分はユダヤ人の迫害、
ホロコーストについての展示だった。


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僕はここに来る前、
てっきりメキシコの負の遺産だと思い込んでいたので、
ポーランドのアウシュヴィッツなんかを見ても、
直には伝わって来なかった。

世界史の資料集を見るのとあまり変わらない。
『あぁ、こんなことが歴史にあったよね』という感じ。

もちろんそういった歴史を何の感慨もなく受け流すわけではないが、
カンボジアのトゥルース・レーンやキリングフォールドに行った時のような
ダイレクトなものはあまり伝わって来なかった。

 

 

館内は至る所に映像モニターが設置されていた。
内装もかなり手が込んでいる。
金がかかっているんだろなぁと僕は思った。

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一部屋ごとに係員がおり、
中には暇そうにしている者も見かけた。

いくら仕事とは言え、こんな辛気くさい場所にずっといるなんて
気がおかしくなってしまわないだろうか?と
僕は少し彼らのことが心配になった。

映像はインタビューや
当時使われていた道具が映し出される味気ないものから、
処刑が行われるものもあった。

 

 

 

僕は思う。

 

 

人間は環境によって
簡単に人を殺せてしまう生き物なんだろうと。

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そして人間をそうさせるのは彼らを束ねる政府や国だ。
そこにいる人間が腐っていると世界はとんでもないことになる。
いや、なっている。

きっと当時のドイツでもヒトラーが政権を握り、
ユダヤ人を迫害することに対して多くの人が疑問に思ったことだろう。

だが組織と個人では勝負にならない。

あのような組織は徐々に作られたものであり、
そうさせたのは個々人が歯止めをかけられなかっただろう。

これは対岸の火じゃない。
どんどん狂って行く日本にだった十分考えられることなのだ。
殺された多くのユダヤ人たちは、
どうして自分が殺されたのか理解できなかっただろう。

 

 

いつだって人間は愚かなままなのか?

世界規模の平和の実現は個人では不可能だ。

「やはり己にできることは人種や国境を越えて仲良くすること」

なのだなと僕は思うのだ。

そう考えたら世界を旅する旅人たちは、
言ってしまえば親善大使だろう。
平和活動の小さな実践者にもなれる。

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博物館を出る前にカフェで絵を描いて、日記を書いた。
やはり外だとはかどる。

あいにくコーヒーはあまりおしくなかった。
紙コップに入っており、インスタントみたいんな味で、
値段だけ高かった。

アツシさんから「元気な時に行くように」と
言われていたけど、そこまで気分は落ち込まなかった。

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外に

出ると日は高く昇っていた。
暑いけど日本のそれほど不快感はない。

そのまま歩いて文房具通りに行くことにした。

 

 

カナダ、アメリカと似顔絵を描く路上パフォーマンスをしてきたが、
メキシコでも本格的にやってみようと僕はずっと考えていた。

その準備として新しいスケッチブックが必要だ。

片っ端から僕は文房具屋に入ってスケッチブックを探して行ったのだが、
どこの店も筆は絵の具あれど紙の方は学校で使うような
ノートやコピー用紙しかないではないか。これには困った。

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何度もくまなくチェックしたのだが
なかなか目当てのサイズのスケッチブックを
見つけることはできなかった。

そもそもグレードの高い文房具屋になると
商品がカウンターに置いてないのだ。
万引き防止のためなのだろう。

客たちは文房具屋の店員をコンサルトとして
「これこれこういう物が欲しいのですが..」と尋ねるしかない。
スペイン語が話せないので、微妙なニュアンスが分からない。

実際自分の手に取り商品を見てみないことは
スケッチブックを買いたくはなかった。

素材にはこだわりたい。どこでも手に入るけど、
その中で品質のいいもの。

 

 

一時間以上色々な店を梯子してみたが、
目当てのスケッチブックは見つからなかった。

僕はダメもとで持っていたスケッチブックを店員に見せて
「これと同じサイズのものはないか?」と尋ねた。

 

 

 

「ああ!それね。こんな感じだろ?」

 

 

するするとカウンターの下から今使っているスケッチブックと
ほとんど同じものが出て来るではないか!さすがだよ!おっちゃん。

 

メキシコの文房具屋のめんどくさいところはまだ終らない。
その場でお金のやり取りをするわけであないのだ。

おっちゃんから処方箋のようなものをもらい、
別の窓口で払い込みを済ませ、
そしてそれを再びおっちゃんの元へ持って行く。

そこまでやってようやくスケッチブックは僕のものになった。

値段は400円くらいの30枚入り。
このパフォーマンスはきっとメキシコでバカウケだろう。

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下心と一緒にマデロ通りのいつものポジションについた。

だが、どういうわけだろう?

レスポンスは悲しくなるほど少なかった。
新しく書いた

「JAPON(日本) RETRATO(似顔絵)」

という二文字だけでは伝わらないのだろうか?

それとも今かけている眼鏡がよくないのか?

それとも単に日が悪いだけか..。

 

 

すぐに警察がやってきてストップをかけた。

え?今日もダメなんすか?
まぁ、これだけ唄い散らかしてりゃあな..。

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僕のラテンアメリアカ・タワーの近くの「秋葉原」の前でも
同じように歌ってみたのだが、
ここでもレスポンスの薄さは同じだった。

数曲歌うと隣りの店から爆音でBGMが垂れ流された。
店先の店員が僕の顔を見てニヤリとする。

あぁ、そうね。

なんせ二週間以上もこの町で歌っているのだ。
そりゃ、何度か僕の姿を見たことのあるヤツもいるだろう。
もしかしたら飽きられちゃったのかもしれないな。

肩を落として宿まで戻った。

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宿に戻ると

何もする気がなくなってしまった。

 

 

やはりレスポンスが薄いと少し落ち込むのだ。

新しく描いた漫画をアップロードしようとしたが、
宿のWi-Fiが遅過ぎてちっとも進まなかった。

そうしてウダウダと時間は過ぎ、あっと言う間に24時になった。

 

 

 

 

「あ、もう寝ます?」

今朝方ドミトリーにやって来た男性、ヒデさんに僕は尋ねた。

 

 

「いや、別に」

ヒデさんはベッドにくつろいだ体勢で横になり
タブレットをいじっていた。

 

 

僕が朝に感じたイライラはどこかに行ってしまっており、
ドミトリーでは単なる同室者だった。
よくある旅行者の風景のようにポツリポツリと会話が始まった。

 

 

「僕、今二年世界をプラプラしてるんですけど、
ヒデさんはどのくらいの期間
旅されているんですか?短期ですか?」

「おれ?おれも世界一周だよ。
四年まわっているかな?」

「よ、四年!!???」

「ほんとうはもっと短いつもりだったけどね。
ゆっくり旅しているうちに時間が経っちゃってさ」

「って、四年って長過ぎやしませんか?」

「でもおれって長期旅行者に見えないだろ?」

手には「地球の歩き方」、
オスプレーのスーツケーツは鍵でベッドの足に固定されている。

 

 

「でも、防犯対策すごいっすね。めんどくさくないんですか?」

「ああこれね。慣れちゃったよ。いつもこうだから」

 

 

これで日本を出るのが二回目だというのに、
ヒデさんは世界を縦横無尽に飛び回っていた。

南米を一周してからヨーロッパ、
そしてカナダ、アメリカ、メキシコ、キューバ、
そして再びメキシコ。

もちろんそれ以前のルートで東南アジアやアフリカにも言っていた。

 

 

 

 

僕はヒデさんに
「無茶ぶりですけど」と面白い話をせがんだ。

ヒデさんは自分の体験よりも、
旅の中で出会った面白い人を語るのが得意のようだった。

 

 

「チャリダーの人ってさ、すげーよ?
世界一周するのに七年計画だったりするからね。

おれが会ったチャリダーの人は、
他の旅人の話を訊くのが好きだったんだけど、
決して自分から旅の話をしようとはしないんだよ。
自分は何でも知ってるからね。
しかも自分が何年旅をしてるか隠そうとするんだよ。
他のチャリダーの人でもそれは同じだったな」

 

 

「香港ですげー人に会ったんだよね。
バックパッカー同士で食事にいくような流れだったんだけど、
その人は旅の始まりからすごかったんだ。

旅の始まりの第一カ国目の韓国でギャンブルしたらしいんだけど、
全財産をスったらしいんだよね。だって全財産だぜ?

まぁ、もともとそんな持ってなかったのかもしれないけど。
その人はオーストラリアにワーホリに行って、ちょこちょこ旅をして、
それでおれと会った時は彼女と香港で暮らしていたんだ。
食事はおごってくれたんだよね。

「私も昔似たようなことをしてもらったので旅人によくしたいんだ」
って。いやー、いい人だったなぁ」

 

 

「それでさ、そのトランペッターの人から、
えーっと、名前なんつったっけな?
その人と仲良くなってエロ動画もらったんだよね。

でさ、ウケるのが、そのファイルのタイトル欄に
その人のレビューが書いてあるんだよ。それもひとつづつ!

「巨乳、童顔。絶対ヌけます!」とか
「安めぐみ似。好みです!」とか。
マジその人の好みなんて知らねーじゃんっつーの!

しかも観てみると全然似てなかったりするからね!」

 

 

僕は声のボリュームに気をつけていたが、
気づけば1時半まで話を聞いてしまった。

やっぱ話してみないと分からないものです。

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