「バスキングで稼いだお金でiPadを買う」

▷12月18日/ニュージーランド、オークランド

 

 

 

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「A案」と「B案」があったとしよう。

君は前者の方を前々から考えていて、後者の方はふと思いついたものだ。

 

特に何かを購買行動において、僕は直前で「B案」を選択してしまう時が多い。僕はノリで決断することが多のだ。

その時は自分の決断が正しかったと思うのだが、しばらくすると自分の取った行動が間違っていたんじゃないかという気になってくるのだ。

そうして、僕はけっこうな頻度で誤った(というか微妙な)決断をすることが多い。

今回もまさにそんな感じ。

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嫌なことがあった日にはグッスリ眠ることにしている。というのもiPhoneのWi-Fi機能がすっかりイカレちまったからだ。

テントの周りを何度も犬がやってきては、飼い主が機嫌の悪そうな声で犬を呼んだ。まるで汚いものに犬を近ずけさせないように。母親が子供に落ちた食べ物を口にさせないように。僕はそんな声を無視して二度寝を繰り返した。

 

 

話は前後するけど、今のニュージーランドの気候は秋の始まりくらいの気候だ。夏の終わりと言ってもいいかもしれない。日中は肌の露出した服を着ている人が多いが、夜になるとだいぶ涼しくなる。

特に深夜になると気温は一気に下がる。僕の持っている薄い夏用の寝袋とブランケットでは歯が立たず、ついにはサバイバルシートの力を借りることのなった。

 

チェコで買った何度でも使えるサバイバルシートに、いったいこの旅の中で何度助けられただろう?

筒状になっているこのサバイバルシートの中に入ることはしない。ただ体の上にかけるだけでいいのだ。寝袋との間にブランケットを挟めば結露はある程度抑えることができる。

さすがサバイバルの名前だけあって保温性はかなり優れている。これを使うか使わないかで睡眠の質も変わってくるくらいだ。

昨日も深夜に寒さで目をさますとすぐさまサバイバルシートをかけた。おかげでそれからはグッスリと眠ることがっできた。

 

 

 

 

 

ゆっくりとパッキングを済ませると、ひとまず僕はダウンタウンへと向かった。昨日会ったアレックスの彼女のティンに、iPhoneの修理に詳しい友達との連絡は取れているか確認する必要があった。

 

 

公衆電話は至る所にあった。だが、その半分以上はクレジットカード専用の公衆電話だった。

この国の人たちは何かにつけてすぐにクレジットカードを使おうとするのだ。この前、たかだか2ドルのクッキー1枚にクレジットカードで支払っている女のコを見つけて僕は愕然としたよ。

 

 

なんとかコインを受け付けてくれる公衆電話を見つけると、僕はティンに電話をかけた。

何コールかして眠そうな声のティンが出た。

すぐに僕だということは分かってくれた。僕はその友達との連絡が取れているか尋ねたが、ティンはそんなことすっかり忘れた様子だった。

その時点で僕はiPhoneの修理など見込みがないことを悟った。とくにこれといって確証はないけれど、そう感じたのだ。

 

 

 

 

 

 

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ティンにはあとで電話をかけ直すことを伝えると、僕はクイーンストリートの電化製品店を見てまわった。

やはり買うならApple製品がいい。だが値段は日本とほとんど変わらなかった。もしくはそれ以上。

そりゃ僕ってiPhone6Sが欲しいけど、一番安いので9万近くするのだ。ちなみに現在の手持ちは八万円ちょっと。

 

 

僕は前々からiPhone5Sが欲しかった。型落ちしているやつで中古なら安く買えるだろうと思ったのだ。「A案」だ。

ゲーム屋で中古のiPhone5Cと5Sを見つけた。5Cであればなんとか予算内だった。

 

 

僕は中古のiPhoneでもデータを転送してもらえるのか、インド人のスタッフの多い電化製品店へと行った。49ドル支払えばデータの転送をやってくれるとのことだった。

 

 

 

 

その店にはAppleが綺麗にディスプレイされていた。

僕の目に留まったのは「iPad mini」だった。

mini2であれは中古のiPhone5Cと値段が変わらない。リテーナモデルで画面も綺麗。リリースされたのがiPhone5と同時期ならば、使える年数も同じくらいだろう。それに僕はiPhoneというものにいささか飽きてしまっていた。

 

 

 

『えっ…それならiPad miniの方がよいかも??』

 

 

 

先に言っちまうんだけど、僕はこの時の決断に後悔している。

もっと真剣に吟味すべきだったんだ。僕はいつもそうなんだ。その時の気分で簡単に思いつきの行動を選択するんだ。

 

 

 

気のいいインド系ニュージーランド人たちは僕の購買行動を煽ってきた。

僕はウンウン悩むふりをして、iPad miniを適当にいじると、すっかり買う気になってしまった。

 

 

スタッフにアジア顔でフランス国籍、ワーキングホリデーでニュージーランドに滞在中のスティーブンというお兄さんがいた。53カ国を旅したことがあるという彼の髪の毛は長く、耳にはピアスをつけていた。上司からは身だしなみで怒られていたくらいの、フランクなお兄さんだった。

 

 

彼は僕が路上パフォーマンスで似顔絵を描いていることを知っていた。そのことを同僚のインド人スタッフたちに話すと、彼らは一気に僕に食いついた。三十代半ばくらいのスタッフからガンガン依頼が入った。娘やお母さん、お世話になった上司夫婦の写真やらを僕に見せると、それを描いてくれるように僕に頼んだ。

僕は心の底では製品のディスカウントがあるのではないかと期待したのだが、顔に出さないように平然を装った。

 

 

 

 

僕はiPad miniを買う前に似顔絵に取りかからなければならなかった。

店のすぐ脇に荷物を降ろした。いつものようにバックパックを椅子代わりにしてボードを膝の上に置くと制作を開始した。

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二時間くらいで終わるだろうと考えていたが予想以上に時間がかかってしまった。B4のデカい画用紙で描いて欲しいとお願いされていたし、全体像が映し出された家族写真とかでかなり大変だったのだ。

全部を描き終わった時には16時を回っていた。稼ぎは110ドルジャスト!一枚あたり10ドルで買ってもらった。

正直に言うと、一人ディスカウントしようとしや人がいたんだ。その人には4枚も描いたんだけどさ。だから僕はかなり顔を曇らせて「他の同僚の方は一枚10ドルで買ってくれましたけどね。ま、価格はお客さん任せなんでいいっすよ」と言った。

見る感じに金持ってそうな人に値切ったような価格を提示されるとがっかりするよ。だってiPhone6Sとか使ってるんだぜ?

僕がそうボヤくと、彼はすぐに他の同僚と同じ価格で絵を買ってくれた。

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一瞬、妖怪かと思ったのはここだけの話。

 

 
似顔絵を描き終わると僕はいよいよiPadを買うことにした。

最後の最後でやっぱりiPhone5を買おうかという気持ちも起こったが、ここでキャンセルしては野暮だなと思い、僕はiPadをカウンターに持って行った。

『面白い方へ』とか変な言葉が頭の中に浮かんでいた。

iPad mini2のWi-Fi機能のみ、16GBで450NGドルだったが、カバーを買ったり補償をつけたりすとプラス100ドル近くになっていた。全く今考えてもバカらしい。何が面白い方へだ。

 

 

iPadを手に入れると今度は壊れiPhone4SのデータをiPadに移すことになった。

手始めに双方のOSを最新バージョンにアップデートするところから始まり、またそれに時間がかかった。そしてそれにもコストがかかり49NGドルから69NGドルになった。もう金銭感覚がよくわからなくなってくる。

 

似顔絵を描く前にティンに電話したのだが、ティンからディナーのお誘いを受けていたのだが、予想以上に時間がかかりそれには行けそうもなかった。

結局iPhoneのアップデートに時間がかかりすぎるために、データの移行は明日に持ち越しになった。

 

 

 

 

 

iPad方はアップデートが完了したので僕はスターバックスで手に入れたばかりのiPadを触ってみようと思った。

 

こういう時に限ってスターバックスのWi-Fiはちっとも動かなかった。まさかOSをアップデートしたためiPad miniに不具合が出たんじゃないかと、僕は周りにいた人たちにWi-Fiが使えるか訊きまくったほどだ。

しかも長文を打つのに、iPhoneよりも時間がかかることがわかった。タッチパネルのキーボードだと妙になれない。練習すればいくらかまともになるとは思うけど…。

まぁいつもと同じように日記を長々と書いたけれど、その苦労はいつもの1.5倍だ。キーボードなのにiPhoneのフリッカーよりも文字を打つのが遅いのだ。

 

 

これがまた数日経てば変わってくるんだろうけど、今はiPadを買ってしまったことに対して猛烈に後悔しているよ。はぁ〜〜〜〜〜…。

 

 

まぁ、バスキングで稼いだお金なんだけどね。

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