「谷越え。野宿」

世界一周226日目(2/6)

 

「どちらを
手に入れたいか

ー新品のフリースジャケットと、
自分の父親がネパールで
ヒッチハイクしたときに着ていたジャケット。
それには素晴らしいストーリーが詰まっている。

どちらの方がより価値があるのか、
私の応えは明確だよ」

 

相棒のオススメの動画
「パタゴニア/着ることについてのストーリー」
に出てくる、アウトドアメーカーpatagoniaの創設者、
イヴォン・チョーイナードのセリフだ。

 

 

正直、アウトドアメーカーなんて
どこが違うかなんて分からなかった。

パタゴニアもノースフェイスもコロンビアも。
ただ金額が違うだけでしょ?

自分が選んだ道が漫画家ということもあって、
以前はそこまでアウトドアに
惹かれなかったというのもある。

大学時代なんてお金がなかったし。
(と言っても、バイト代はいつも無駄な出費に消えていった)

 

 

アウトドア?
お金の余ってるヤツのするものだよ。

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テントを買ったり、バナーを買ったり、
日常生活から離れるために、自然に入っていくために
無駄な買い物をしているんだ。

 

そんな偏見を抱いていたわけだ。

 

 

というのもアウトドアは
経験の有無が顕著に表れるレジャーだ。
お手頃なBBQにせよ、キャンプにせよ。

 

僕はそこで何度も「経験者」たちに
辛酸を舐めさせられてきた。

 

女のコのいる前で、
テントの立て方もよくわからず、
ぼおっと眺めていることしかできない
居心地のわるさ。

結局はアウトドアに
金を使っているヤツの独壇場じゃないか!と。

 

星空の下で女のコと横に並んで座って、
ホット・チョコレートみたいな話をして、
etcetcetc…!!!

僕のロマンを返してくれ!

 

そうして、僕の逆恨みは
アウトドアへ向けられたのだ。

 

 

だが、今はもうすっかり
patagoniaの大ファンだ。

相棒に連れて行ってもらったパタゴニアのお店で
僕は他のお店とは違う雰囲気を感じた。

スタッフさんたちは
自分たちの商品を誇りを持って扱い、
パタゴニアというブランドに対する
愛情のようなものさえ感じたのだ。

いつだって相棒は、僕に持っていない
良いセンスを持っている。

 

 

 

 

そんな
世界を旅するために持って来た
パタゴニアのフリース。
しかも今僕はネパールを旅しているじゃないか!

もうネパールでヒッチハイクするしかないでしょ!
メジャーじゃない小さな町も見れるしね♪

 

ポカラまでヒッチハイク、
もしくはローカルバスを
乗り継いでで行こうかと考えた。

 

 

 

だけど、前日、
一時間60ルピー(61yen)のネット屋で
Facebookのメッセージ・ボックスに

漫画の依頼をしてきた仲間から
原稿用紙に漫画を描き始めていいという
「ゴーサイン」をもらった。

 

面白い方は断然、
ヒッチハイク&ローカルバスで
ポカラまでなんだけど、
依頼された漫画を一刻も早く
描き始めたいという思いもあった。

 

 

『ポカラに行こう!』

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セットしたiPhoneのアラームより早く目覚め、
パッキングを済ませる。

 

一回のレストランでも働いている
宿のオーナーに鍵を返した。

 

「これからポカラに向かうことにするよ。
バスはあるのかな?」

「バスは7字半に出ちゃったよ!
それを早く言ってくれれば
昨日チケット用意したのに!」

「えっ、マジ?
えっとじゃあ、
どうやったらポカラまで行けるかな?」

「ローカルバスでブラフマパルまで行けば
ポカラ行きのバスに乗れるよ」

 

 

そのブラフマパルという隣町までのバスは
ルンビニから15分おきに出ているらしい。

こっちは頻繁にあるんだな。

 

近くに停まっていたバスに
「ブラフマパル?」と大声で訊くと、
「そうだ!そうだ!早く乗れ!」と
集金係が手招きする。

バックパックをバスの上に置いてもらって
(この作業が地味に大変なんだ)
バスに乗ることができた。

出だしは好調♪

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ちなみに、ルンビニからポカラまで
直通のバスは700ルピー(712yen)。
6時間で行けるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

バスは
深い霧の中を走る。

何個かバスターミナルに停車し、
そのつど数人の乗客たちが乗り降りしていく。

 

1時間で着いたブラフマパル。

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現在朝9時。

霧はまだまだ残っている。
曇り空のような天気だ。太陽が恋しい。

 

バスを降りるとサイクルリキシャや
タクシーの客引きが僕をしつこく勧誘してきた。

「ヘイ!バスターミナルまで
100ルピーで乗せてくぜ?」

「はいはい。大丈夫ですよ。
歩いて行きますから」

「何言ってんだ?
バスターミナルまでは2キロあるんだぞ?」

 

あ~、出ました。
あのパターンですね。

実際すぐ近くにあるのに
距離を増して教えるパターン。

 

どうせすぐ近くなんだろ?

と近くの売店のおばちゃんや警察官に
道を尋ねまくってひたすら歩く僕。

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インドに比べて、ネパールは
人が穏やかになった印象だが、
どんな国にもボってくるヤツはいるのだ。

メシやタクシーの運転手なんかそうだ。

でもー…

 

 

 

遠くない?

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歩けども、歩けども
一向にバスターミナルは見えて来ない。

 

はぁ、はあ、ちくしょー…
距離だけは正直に言いやがって…。

 

気温の低いネパールで
フリースとアウターを着ているため、
上昇した体温の熱がだんだんこもってきた。

 

そしてなんとか辿り着いたバスターミナル。
ポカラ行きのバスは何本も出ているようだ。

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一番早く出るバスを訊きだし、
500ルピー(508yen)でポカラ行きの
チケットを買うと僕はバスに乗り込んだ。

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ここまで来るのに50ルピー。
150円くらい浮いたわけだ。
あんまりお得感はないなぁ。

本日2本目のバス。
直通バスに3時間遅れ。
夕方頃には着くだろう。

 

 

2時間くらいして隣りに座った
28歳のネパール人の兄さんが
随分と人懐っこかった。

僕がお菓子をむさぼっているのを見て、
「水飲むか?」と訊いてきたり、
「名前は?家族は?結婚しるの?仕事は?」など、
当たり障りのない質問を
いくつも僕に投げかけてくる。

 

 

バスが故障して長く
停車している時間があった。

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兄さんが尋ねる。

 

「そのスマホいくらした?」

 

インドなんかでよく訊くフレーズだ。

物価の違う国では正直応えずらい。

僕の使っているのはシム・ロックのかかった
iPhone4Sなんだけど、確か4万円近くした
(分割払いだったからいくらか覚えていない)。

 

それに、この質問の意図が分からない。
本当の値段を言えば、この2年以上使ったiPhoneは
かなり高価な物に見えるだろう。
盗難のリスクも考えずにはいられない。

 

 

「iPhoneだよ。
ローン組んで買ったんだ。
毎月お金を支払ってさ」

とお金持ってないぜアピールする僕。

 

「へぇ~それは?
ケース?」

と言って勝手に
ケースに触ってくる兄さん。

 

「ちょっ…!!!」

僕の警戒レベルが
3段階くらい引き上げられた。

 

 

 

「なぁ、人の物勝手に触るなよな。
普通、事前に『触ってもいいか?』とか訊くよな?
日本人だったら人の物に
勝手に触る様なマネは絶対しない。
これはマナーの問題だ」

 

たかだかiPhoneのケースに触ってきたくらいで
何をそんなにムキになっているんだろうと思わなくもない。
だが、警戒を怠るのもよくはない。

思春期の中学生モードで、
それ以降兄さんに話しかけられても
軽く返事をするくらいだった。

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バスは砂煙を巻き上げ谷を走る。
接触スレスレで何台もトラックを追い越した。

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バスが到着するはずの6時間は
とっくに過ぎてしまった。
でもそんなことどうだっていい。

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この大きな谷を見ていると、
自分が旅をしていることが実感できた。

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バスがポカラのターミナルに到着したのは
19時過ぎ。向かう先は決めている。

インドのプリーで泊まった日本人宿
「サンタナ ロッジ」

 

ここポカラにも
同じ系列の宿があることを
プリーの宿で知ったのだ。

タクシーの客引きをかわし、
宿の集まるレイクサイドへ歩いて向かう。

 

トレッキングの出発点として
観光地化されている
ポカラの街でも停電があるようだ。

街灯もポツポツとしかない。

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「サンタナ・ロッジって知ってる?
日本人宿らしんだけど」

と近くの人に訊いても「サンタナ?」と言う。

 

手がかりもないまま
僕は暗い夜道をトボトボと歩いて行った。

いつもだったらこんな暗い夜道は歩かない。

ネパールの治安の良さと。
犬が全然いないから歩くことができるのだ。

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バスターミナルから歩き始めて30分。
貧乏性の僕はサンタナロッジの方向へ
向かっていはいたが、泊まる気はなかった。

だってこんな遅くにチェックインしたら
お金もったいなくない?

 

「今日は野宿を決行する!」

 

この暗さじゃ、どっちにしろ
サンタナ・ロッジは見つけられない。

心なしかレイク・サイドに近づくにつれ
野良犬も増えて来た気がする。

 

 

僕はレイク・サイドへの道の途中で
野宿できる場所を探した。

 

『あそこは芝生が生えてて
寝心地が良さそうだけど、
向かいに電飾がピカピカして
大きなレストランがあるからダメだ』

 

『あそこのバスターミナルなんて
目立たなくていいんじゃないか?
や、犬がいた…』

 

『おっ!
あそこの植え込みの芝生なんて』

「ヘーイ!タクシー!」

ちっ!人目につく所はダメだ。

 

 

集合住宅の裏。
大きなバイクがいい感じの
バリケードになっている。

そして見つけた木の生えた場所。
近くで歯磨きを済ませ、
辺りの様子を伺っていると、

 

 

「おい!
そこで何やっているんだ?」

バイクの持ち主とかち合ってしまった。

 

「えっ?何って
写真を撮っているんですよ?ほら?」

旅人の演技力を駆使し、
一眼レフのボヤけた写真を見せる。

 

「あ~…やっぱ
星の写真撮るのって難しいですね♪」

 

バイクの持ち主は訝しみながら、
バイクに乗ってどこかへ行ってしまった。
集合住宅の裏はダメだ。となるとー…

 

 

すぐ脇にある金網に囲まれた茂み。
木がそこまで生えておらず、
ブルーシートを敷けるスペースもある。
それに金網が張ってあれば
野犬も入って来ないだろう。

僕は金網の一番端からバックパックとギター、
Penny Board、サブバッグを
ひとつずつ往復で中に持ち込み、
一本の木に荷物を寄せ
Penny Boardに腰をかけて息をひそめた。

 

 

 

 

 

野宿するにあたって
何が一番困るかっていったら、
場所探しだ。

横になれれば
どこでも野宿できるわけじゃない。
人目につかず、それでいて
安全そうな場所を見つけなければならない。

もちろん、さっきのように
人に見つかって怒られる時もある。

 

 

時々、向こうの方から走ってくる
車のヘッドライトが僕の顔を照らす。

金網の向こう側を人が歩いて行く。

僕の姿は気づいていないのだろうか?

たぶん停電中のこの暗闇の中で、
金網の向こうの茂みには意識は向かないはずだ。

僕の気配に気づいた
野良犬だか飼い犬だかが、
さっきからずっと吠えている。

 

木々の間から見える星を眺めた。
月光が明るすぎるくらいだ。

 

しばらくじっとして、
野宿できると判断した僕は、
バックパックから寝袋と
ブルーシートを引っ張りだし、寝床を作った。

 

夜が深けるにつれ、
寝袋の表面がだんだんと湿ってきた。
寝袋の中ではpatagoniaのフリースが僕を温めてくれる。

またひとつこのフリースに
ストーリーができたわけだ。

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まぁ、バスターミナルの近くでも
500ルピーの宿とかあったんだけどね。

ネパールは治安は悪くないし、
ちょっと星を眺めて見たかったんだ。

自分でもアホなことやってるなぁと思うけど、これもいい思い出になる。

野宿をするとアドレナリンが出る。

野生に戻ったみたいだ。

 

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