「ヒッチハイクと格闘家」

世界一周364日目(6/27)

 

僕は迷っていた。

一体どうしたものか…?

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なんとなく首都のアンカラに来たものの、
ここは都会っぽい都会で、
旅人の僕はそこまでアンカラに惹かれなかった。

お酒を飲める友達と来ていれば
ちょっとは面白かったかもしれない。

バスキングに対してセキュリティが
いつも目を光らせているってのもある。

素敵な出会いはあったけどね。

 

 

ここはトルコの首都アンカラのバスターミナルだ。

ベンチの上で僕は目を覚ました。

寝袋から出て、iPhoneとにらめっこ。

悩んでいるのは次の目的地。

 

 

ここから北に向かうと世界遺産の街、
サフランボルがある。

本来だったらここはルートには含まれていない。
ここを訪れたとしたらイスタンブールはすぐそこ。
トルコの最終目的地だ。

反対に、南に少し戻ったところに
コンヤという町がある。

これと言ってとくに見所はなさそうなんだけど、
前々からのルートではここに行ってみる予定だった。

そしてその先にある石灰棚で有名なパムッカレ
名前を聞いただけでワクワクするイズミルがある。

世界史で「イズミルの戦い」とか会った気がするっっ!

 

 

 

これをルートから外していいものか?

サフランボルまで行って引き返すってのも考えたが、
時間とお金もかかる。

ヒッチハイクするのがめんどくさくなって
イスタンブールに行ってしまうだろう。

 

 

 

よし!

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僕はアンカラの街を抜け出すために
街の中心からミニバスに乗って、
端の方にあるギョルバシへと向かった。

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2リラ(95yen)。街の中での移動だったら安い。

運転手のおっちゃんにギョルバシ以降の目的地告げ
(もちろん英語がそこまで通じないので単語だ)、
そこへと続く幹線道路の入り口で降ろしてもらう。

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さぁ、今日もヒッチハイクだ!
元気出して行こう!

 

幹線道路には車がいい感じで走っている。

が、けっこうなスピードだ。

僕はいつものように歩きながら左手の親指を立てた。

歩きながらだと後ろが見えないので、
車が来る気配を感じたら、腕を伸ばし親指を立てる。

それだけだとつまらないので、
振り返って『乗せて~!』
とブンブンと左手を振る。

ブオォォォン…
と走り去っていく車。

へへ。そう簡単には行きませんか。

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何台も車を見送った。

助手席から「ムリムリ」や
「頑張ってな」とハンドサインを送ってくれる車。
エールを送るように
軽くクラクションを鳴らしてくれる車。
僕のことなんて目にも留めない車。

ただ通り過ぎるだけでも、
色んなレスポンスが感じられる。

 

 

30メートル先にトラックが止まっていた。

あれはきっと僕を待っているんじゃない。
すぐに出発してしまうだろう。

トラックとの距離が詰まっていく。

あれ…もしかして…。

 

 

 

「もしかしてコンヤまで行かれます?」

思わず日本語で訊いてしまう?

 

 

「コンヤ?」

「おぅ!乗れ!」

 

 

快く僕を乗せてくれたアサーンさん。
熟練のトラックの運転手だ。
服のヨレ具合がたまらなかった。
この道一筋で長く働かれていたことが分かる。

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いつものように出だしはハイテンションで
「ドンドルマ美味いっすね~!」
とコミュニケーションをとっていく。

アサーンさんもけっこうご機嫌だ。

朝からいいヒッチハイクができたぞ。

 

 

「シミット!
(ちなみにトルコでよく見かける
胡麻パンの名前が「シミット」だ)
チャイ飲むか!」

「あっ!はい!あざっす!」

 

 

トラックの中には電子ケトルみたいなのが置いてあって、
アサーンさんは車の揺れに水がこぼれることを
お構いなしでお湯を沸かした。

ダッシュボードには
大きめの紅茶のパックが箱詰めで置いてあった。

てか、車内にいながら
お湯が湧かせてチャイが飲めるって、
どんだけチャイに愛情注いでるんだよ。

とトルコのチャイ愛に思わず関心してしまう。

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ダッシュボードにはトルコでは
見慣れたガラス製のチャイカップが置いてあった。

それを1リットルのペットボトルに入った水で
「サカサカサカ~ッ」と洗い、
できたチャイをグラスに注いでくれた。

もちろん角砂糖とスプーンもある。さすがだ!

 

 

「ほら、タバコ吸うか?」

「ざっす!」

 

 

意外とヒッチハイクをすると
ドライバーからタバコを勧められる機会が多い。

トルコに入ってからタバコを買わなくなった。

別に禁煙してるわけじゃないけど、
こういう時にタバコを勧められると
素直にもらってしまう。

断ると、ドライバーさんも「吸っていいかい?」と
気を遣わせてしまうことがある。

助手席から風に吹かれて吸う煙草は旅の味がした。

トラックの運転手たちの中ではキャメルが定番のようだ。

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「いやぁ~、にしても、
こんだけ同じ様な道がずっと続いていると
眠くなりません?」

「あぁ、なるよ」

「ですよね~」

 

 

会話がなくなってくるとお互いあくびをした。

アサーンさんは運転席の上にある
カーステレオの電源を入れる。

ポップミュージックでも民族音楽でもない曲が流れた。

これは日本で言うとどういう位置づけなんだろう?

そんな風にしてドライブは続いた。

 

 

 

 

「じゃあ、ここでお別れだ。この道がコンヤに続いてるよ」

 

分岐点でアサーンさんは僕を降ろしてくれた。

「今日も乗せてくれてありがとうございます」

助手席側のミラーに向かって頭を下げて手を振る。

走り出す赤いトラック。

「じゃあな」と言うように
リズミカルなクラクションが鳴った。

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すぐそこにおっちゃんヒッチハイカーが立っていた。

時々トルコの人もヒッチハイクをしている。

おっちゃんの脇に速度を落として止まるくるま。

てか、僕のことも呼んでる。

えっ??!!何?
降りた瞬間次のヒッチハイクができるなんて!!!

 

 

テンションの高い
おっちゃんヒッチハイカーと車に乗り込んだ。

「テシュケレデレム!マイネームイズ、
シミ!What’s your name?」

「おれの名前?ジンギス・ハンさ」

 

 

名乗るほどの名前は持ち合わせてないんだ
とでも言う様なクールなお兄さん。

英語が喋れる方だった。そしてクルド人だった。

車内に3人いると会話ははずむ。

というよりおっちゃんヒッチハイカーが
けっこうなお喋りでトルコ語で
楽しそうにお兄さんと喋っていた。

僕もニコニコしながら会話に耳を傾ける。

何言ってるか分かんないけど。

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おっちゃんは大学の事務員だと言っていた。

そんなふうには見えない陽気な人だった。

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おっちゃんは途中で降り、
車内は僕と運転手のお兄さんの二人だけになった。

お兄さんはエンジニアでイスタンブルに住んでおり、
朝早くからアンカラまで車を走らせ、
運転開始から10時間経過したと言っていた。

隣りのドライバーさんも眠そうだ。

 

 

「トルコの色んなところに行ってみて、
何人かのクルドの人たちに会いました。
みんなそろって
「アイム クルディッシュ」って言ってたけど、
アイデンティティみたいなものがあるんですか?」

「ん~、アイデンティティっていうよりかは
「出身」に近いかなぁ?ほらアメリカの人たちも
「カム フロム ロサンゼロス」とか言うだろ?」

 

 

クルド人の歴史は長い。

国の成立に伴って、住む場所を
隔てられてしまった人たち。

単なる民族問題ではないのだ。

それでも、クルドの人たちは自分を
クルデイシュと自覚して、
その国に溶け込むようにして生きている。

お兄さんもそのうちの一人だ。

 

 

 

 

お兄さんの友達と合流し、途中休憩を挟んだ。

トーストサンドをごちそうになり、
チャイを三杯いただいた。

日差しがジリジリと暑かった。

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僕もお返しに名刺を描く。

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「ははは。これがおれたちかい?」

 

 

似顔絵が似てないのは似顔絵と呼ぶのだろうか?

お兄さんは今日はコンヤに滞在して、
明日イスタンブルに戻るらしい。

街の中心で降ろしてもらった。

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コンヤの街は

そこそこの大きさで
街にはトラムが走っている。
街並も整っており綺麗な印象を受けた。

さてー、とりあえず街の中心にでも行ってみるかな?

バックパックを背負いながら
まだまだ暑い16時の街を歩き出す。

こまめに水分を補給する。

ここでバスキングできんのかなぁ~….。

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見つけたのはめちゃくちゃいい感じの通り。

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ここでやれば稼げるよっっっ!!!

 

 

新しい街で唄いだすのにちょっと緊張した。

果たして小汚いアジア人の僕に
どんなレスポンスが返ってくるのだろう?

演奏を開始して何人かが足を止めた。

パラパラと入るコイン。
笑顔で「ティシュクレデレム!」と言う。

そして5分もしないで
笑顔でやって来る警察。

ニコニコしながら手を横に振る。

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で、ですよね~!キビシイッッッ!!!

そそくさと荷物をまとめる。くっそう!

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その後も周辺で試してみたが
『スタンバってるの??!!』ってくらい
迅速に警察が出て来て、
中心地でバスキングなんてできなかった。

 

 

諦めて少し離れた路地でギターを弾いた。

近くにいた「ウサギ占い」(そういうのがあるのだ!)
のおっちゃんが「そこでやりなよ」と言ってくれたからだ。

路地裏のギター弾き。

まぁなんかこんなのもアリかな?

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メインの通りほどではなかったが、
ボチボチとレスポンスが入った。

道行く人がニコニコしてりゃあ僕もハッピーだ。

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それにさっきから聴いてくれている
ガタイのいい小柄な青年がいる。ありがとう!

英語はそこまで通じないんだけど、
何やら僕の助手を買って出てくれていることは分かった。

僕がバックパックを背負って歩き出すと
「大丈夫。おれに任せてくれ」
とわざわざ僕の重いバックパックを背負ってくれる。

上腕二頭筋の膨らみがハンパなかった。

 

 

19時を過ぎたので最後に調子に乗って
メインの通りで再びバスキングを試みたのだが、
間髪入れずに警察が登場して、すごすごと退散した。

や、だってね、彼が
「ここでやっても問題ないよ」
って言うんですものと責任転嫁だ。

 

 

 

 

 

彼の名前は
ユサフと言った。

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ここでムエタイをやっているらしい。

あぁ~なるほどだからそんなにムキムキなのか。

えっ…???トルコでムエタイ??!!!

トルコ在住のイラン人で
忍者ラブらしい。

トルコでお世話になっているカフェ、
「シミットサライ」でチャイを飲みながら
Google翻訳で会話した。

や、Google翻訳ってトルコ語にも
対応してるんだね!すげーよ。

iPhoneのキーボードにトルコ語を加えて
交互にワードを打ち合う。

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何やらユサフは日本に来たがっているようだった。

 

「どうすれば日本に長く滞在できますか?」

「すいません。知りません」

「私は忍術を愛しています」

「ありがとう(僕にどうしろっていうのだ?)

 

 

それでもユサフが日本に憧れを抱いているのが分かった。

イラン人が日本に長期滞在するには
どうしたらいいのか調べてみる。

けっこう厳しいな..。

ちゃんと滞在目的やしっかりしていて、
書類もないとダメっぽい。

短期の滞在でもだ。

日本人の招待状(?)みたいに、
保証人になれれば簡単みたいだけど、
僕まだ日本に帰らないしなぁ。

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トルコ人なら比較的長く日本に滞在できるみたいだ。

でもユサフはトルコ在住のイラン人。
パスポートもイランのものらしい。

国によって日本に来やすいかが異なるんだなぁ。

パスポートの違いを改めて感じた。

 

 

「今日はどこに泊まるの?」という質問に対しては
「キャンプさ!」と応えておいた。
このポジティヴな響きがいい(笑)。

 

 

ユサフがジェスチャーを交えて言う

 

「うちに泊まりにおいでよ」

ってマジっすか!

「さ、サンキュー!」

 

 

え?初めてのお泊まりなんですけどっっっ!!!
ちょっとワクワク!

 

 

 

「じゃあそろそろ行こうか」と
僕はユサフの住んでいる場所に案内された。

また僕のバックパックを背負ってくれている。

格闘技やってるから力に自信があるんだろう。

あのムエタイの肘鉄みたいなの喰らったら
一発でのされる自信があるな笑。

 

 

 

 

ユサフはトルコ人のおっちゃんの事務所に
住み込みをしているようだった。

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そこで体を鍛えている人間が食べる
低タンパクのごはんを一緒に食べた。

パンと卵焼きと鶏肉。脂肪の多い皮は食べない。

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淡白な味わい。
塩の味が利いている。
それでも美味しかった。

パンをちぎって僕にまわしてくれる
ユサフを見ていると、

「分かち合う(シェア)」という言葉を
連想せずにはいられなかった。

これが分け与えるということなのだなと。

大学で少し触れた聖書の場面にも
イエス・キリストが弟子たちにパンを分け与える
シーンがあったな。
酒がキリストの血でパンが肉だっけな。

意味合いが違うけど、
今こうして目の前でパンを分け与えてもらうことに
僕は何かを感じたのだ。

 

 

ユサフの住んでいるところのシャワーは水だった。

僕は洗面台で髪の毛だけ洗った。

ユサフは僕のすぐ後ろで
「くふっ~~~~…」と寒さにこらえながら
シャワーを浴びていた。

冬はマジでキツいだろうな。

ムエタイをやっているユサフの
ハングリーさが伝わって来る。

 

 

24時をまわるとユサフとおっちゃんは
事務所の床にブランケットを敷いた。
僕にはソファをあてがってくれた。

ユサフは気を利かせてiPhoneの充電をさせてくれた。

 

 

「グッナイ」

 

 

そういって事務所の電気が消えた。

閉め切った事務所が暑く、
僕は何度も寝返りを打った。

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やっぱり出会いはバスキングをやってた方が
いろんな人に出会うことが出来ます。

ユサフがプロの格闘家になろうとしているのか
どうかは分からないけど、頑張ってんなーと思いました。

いつか日本に来れると良いね♪

…って簡単に言うけど、
よっぽど根性がないと無理なんだろうな~。
動機をはっきしさせてビザも申請して。

だれそれ構わずこれちゃったら、
就労問題とかも出て来るだろうしなぁ。

国家間の信用問題ってほんと不思議。
僕が生まれる前はイラン人はノービザだったなんてね。

 

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