世界一周641日目(4/1)
ついに旅立ちの時だ。

二ヶ月旅したアフリカとも今日でお別れ。
これから二日かけてカナダ、トロントに向かう。
だが、ちょっと待ってくれ。
フライトの時間は夜の8時なんだ。
一体それまでの時間何すりゃいいんだっての?
僕は空港の三階のベンチの上で座ったままの体勢で目覚めた。
気づいたら僕の周りには職員が集まっていた。
ベンチは空港内に沢山あるチェックイン・カウンターの前にあったからだ。
僕がベンチのある場所に来た時に、横になって寝ていた欧米人は
どこかへ行ってしまっていた。
僕はあまりにも眠かった。
そのままの体勢でフリーズ。
座って眠ると眠った気に全くなれないのだ。
熟睡できないまま、その場で何度もうたた寝を繰り返した。
念のためバックパックとギターは紐で結んである。
サブバッグは前に抱えるようにしてキープしている。
それでも寝落ちしてしまうと、
何かを盗まれても気がつかないもんなんだろうなと思う。
これは盗難のターゲットになる可能性を下げるための
ハッタリに過ぎないのだろう。
8時過ぎにとうとう職員に注意されて僕の一日はようやくスタートした。
空港での行動パターンみたいなのができてしまえば、
時間を使うことは難しいことじゃない。
僕の場合は日記以外にも絵を描いたりするので、
テーブルさえあれば何時間だって作業することができる。
ボヤボヤした頭を抱えて、昨日の充電場所に行き、
ガムテープで変換プラグを調整してパソコンやiPhoneに
電気を供給しながら日記を書いた。

僕が日記を書いていると、空港内の職員の何人かが
「なんで昨日と同じ場所にいるんだ?お前のフライトはいつなんだ?」
と質問して来た。
そりゃそうだろう。だってここに住んでいるみたいなものだから。
彼らに昨日エティハド空港のブースでプリントアウトしてもらった
eチケットを見せると笑いながら納得してくれた。
意外にここの人たちは変なヤツに理解があるようだ。
日記を二本書くと、Wi-Fiの使えるカフェに行き、
一番安いカプチーノを注文してパソコンを開いた。

昨日もここで働いていた店員たちは僕の顔を見ると
陽気に挨拶をしてくれた。
こういうアフリカ特有のフレンドリーさとも今日でお別れだと思うと、
少し寂しい気持になる。
出発前の最後の作業内容はブログのアップと
自分のオリジナル曲のアップだった。
旅をしながら作って来た自分の曲。
グロービッシュ(千語程度のミニマムな英語)なら
誰でも使って構わないだろうと、
いっちょまえに英語の歌詞を当ててシコシコと作ってきた。
それが現在8曲ほどある。
音がクリーンに録音できる場所を見つけてはiPhoneのレコーダーに
ちょくちょく記録してきたのだが、
それを自分のサイトにアップしてみることにした。
僕はミュージシャンになるつもりはない。
だけど、ミュージシャンになるつもりがなかったとしても、
音楽を自分で好き勝手に作ることはできる。誰も気にしない。
iPhoneからパソコンに音声データをメールに添付して、
それをパソコンで開き、サイトにアップするという
手間のかかる作業だったが、一曲だけアップロードすることができた。
僕はそれを相棒なんかに
「ちょっと聴いてみてくれない?」
とコメントを添えて感想を求めた。
アップしたのは”Commuter train“という曲だ。
エチオピアのジンマという町の薄暗い部屋でシャウトしながら作った曲だ。
果たしてどんなレスポンスが得られるのだろう?
自分でも『よく作れたな』と思うだけあって、
感想を聞くのが楽しみだ♪
チェックイン
が開始されたのは登場の4時間前からだった。

カウンターのお兄さんのネイティヴ並みの英語に
たじろぎながらもバックパックを預けてカウンターを通り抜けた。
荷物の検査ではサブバッグもギターも何事もなく通過させることができた。
僕は毎回飛行機に乗る度に思うのだが、
どうしてチェックイン後のフロアの方がリッチな感じがするんだろうか?
きっとこれをチェックインを済ませて
初めてその人間は客としてみなされるのかもしれない。

免税店やお土産屋さんをプラプラと見てまわった。
この時になって
「もう数時間後にいよいよカナダへ行くのだ」
という気持が強くなってきた。
手にじんわりと汗をかき、トイレに行きたくなる。
僕はプレッシャーに弱い。
『もしこれで入国を拒否されたらどうしよう?』
なんてネガティヴなことさえ考えてしまう。
滑走路の見えるベンチに座り、絵を描きながら時間をつぶした。

一時間前に搭乗が開始され、僕は列に並んだ。

は、はうっっっ!O・SO・RO・I !!!
ここから添乗員たちの英語が英語に聞こえなくなった。
あまりに流暢で何を言っているのか半分も分からないのだ。
僕はホテル・ニューハンプシャーに出てくる難聴のエッグみたいに
「What???」と何回も訊いてしどろもどろに返答した。
そして飛行機に乗る直前になって、スチュワーデスから声がかかった。
「ちょっとお客様」
「へっ??!!は、はい?」
「ギターの持ち込みは困ります。預けてください!」
「はッ?へ?あ、はい。
え?預けなきゃだめですか?」
クソ流暢な英語があまりにも聞き取れないかった。
今まで培って来た「旅をして英語が喋れるようになった」
という自信がボッコボコにへこまされた。
「チケットを見せてください」
「は?」
「だから、チケット」
「え?」
そうしてスチュワーデスは
嫌悪感をあからさまに顔に出してゆっくりと喋り始める。
だが、簡単な英単語を使っていてそれが聞き取れるのだが、
それらの組み合わせが放つ微妙なニュアンスがよく分からない。
てか、それ英語なの???
結局僕のギターはカナダまで直送されることになった。
今生の別れとでも言うかのように、
僕は乗客たちの列に押されながらギターを肩越しに見送った。

これでギター紛失だとか壊れてたら、どうしよう…。
飛行機に乗ってさえしまえば、気持はずっと落ち着いた。

あとはここで静かにしていれば目的地に着くのだ。
乗っているエティハド航空は
アラブ首長国(アブダビ首長国)連邦の会社だ。

僕は一度カサブランカからヨルダンに行く際に
この会社を利用したのだが、この会社が好きになった。
どこの国籍だか分からない綺麗な人たちがビシっと制服を着こなし、
サービスが良く、アメニティも充実している。
座席に一台スクリーンがついており、
そこで映画を観たり音楽を聴いたりすることができるのだ。
それは他の会社も同じか。
運ばれてくる食事に舌鼓を打ち
(僕は腹が減っていればなんでも美味しく感じてしまう)、
今回は映画を観ることした。

飛行機の中で観る映画は最新のものである場合が多い。
「ウェストサイド・ストーリー」など
随分昔の映画も観ることができたが、今回僕が観たのは
「WILD」
という映画だ。
最初は字幕なしの英語のみで、もう一回は日本語吹き替えで観た。
僕の座席ではヘッドホンの片側が聞こえなかったので、
右左交互に音の出る方を代えて映画を見た。
内容は母親を病気で亡くして、
人生がめちゃくちゃになってしまった娘が自分を見つめ直すために
メキシコ国境からアラスカまで続く1600kmの
「パシフィック・クレスト・トレイル」を歩くという話だ。
旅関連の映画が好きな僕にはたまらなかった。
これは実際にこのトレイルを踏破した
シェリル・ストレイドという女性の自叙伝が基になっているらしい。
彼女がトレイルを賢明に歩くのに、
彼女がどうして歩くことになったのかという
サブエピソードが織り交ぜられている。
セリフは少なめで、
なんだか自分もトレイルを歩いているような気分にさせてくれる
そんな映画だった。
空港内の書店でも映画の写真が表紙になった本が売られていた。
旅映画が好きな人は是非。
女のコが主人公ってあまりないね。
映画が僕の不安を紛らわしてくれた。

初めまして、ぱいんと申す者です。
いつもブログを楽しく拝見させて頂いております。
実はアメブロの時からずっと拝見させて頂いていたのですが、中々コメントするタイミングが掴めず…
曲、聴かせて頂きましたが、最高でした。
私はこの曲に、歌声に元気を貰いました。
日常に疲れた時、また聴かせて頂いても良いでしょうか?
いつか、生の歌声で聴きたいと思っています。
文章メチャクチャで申し訳ありません。
シミさんに幸あれ!
>ぱいんさん
「え?!そ、そんな…!!!」
(片手を口に当ててたじろぐシミ)
喋ったこともない後輩の女のコに告白される気分ですよ!
(もちろんそんなことは経験したことございません。脳内オンリーです)
アメブロからって…、
え?三年?くらいですか?
ほんと、ありがとうございます。素直に嬉しいです。
そして歌を聴いてくれてありがとうございました。
リピート再生しても大丈夫なくらいにもっと完成度上げたいと思います。
(っていうか今日マディソンって町で唄ったんですけど
学生の町で、みんな素通りでしたよ..泣ける)
それに日常に疲れたなんて言わないでください。
何事も考え様じゃないですか?
ヴァイオリズムが下がったら、また上がります。
その振り幅を高く保てればいいですね。
ぱいんさんもグッド・ラック♪
うた、すっごい、いいですよ!!
佐々木さんが言ってたのは本当のことだね。
情熱的な歌い方もいいし、
歌詞もいいですよ。
自分の経験じゃなくて、カエルさんの話?
経験したことじゃなかったら、創作のセンス
かなりあると思います。
若い子って、どうにかしたい、って気持ちを常に持っている
と思うし、みんな共感すると思いますよ。
今度はぜひぜひ、日本語でお願いします。
小学校や中学校で、合唱で歌われるような、
そういうの、お願いします。
>あっきーさん
ふふふふ♪
そんな優しい言葉をかけてくれるのは
あっきーさんが初めてですよ。
「リズムが走っている。コードが単調。コードチェンジが下手。
聴かせたらみんな笑ってたよ」
が相棒からの返信でした。
日本語は小っ恥ずかしいのでナシで(笑)
合唱なんて、僕にはできっこありません。
きっと内省的で暗い曲が出来上がるに違いないから…。
というのは冗談でして。
僕は漫画家の仕事は絵を描く他に
「ストーリーを作ること」だと思っております。
だから人より妄想しているのです。
いい感じで妄想できれば日本語の曲も作るかもしれませんね。