世界一周643日目(4/3)
目の前の
ベンチで寝ていた女のコがいなくなっていた。
ベンチで座りながらの体勢で熟睡することには慣れていない。
横になれればフロアやベンチだったら楽勝なんだけどなぁ
なんて考えながらiPhoneで時刻を確認する。
ここはアイルランド、ダブリン。
ここからカナダ行きの飛行機に乗ることができるのだ。

朝イチでまず僕がやることは航空券の入手だった。
なぜだかヨハネスブルグでチェックインした時に渡されたのは二枚
(ヨハネスブルグ→アブダビ、アブダビ→ダブリン)のみで、
一番重要なトロント行きのチケットは渡されていなかった。
スタッフはここでもらえると言う。
僕はブースに並び、パスポートとプリントアウトされたチケットを提示した。
担当してくれたのはアジア人顔のおばちゃん。
「それで、あなたビザは持っているの?」
「いや、日本人はビザいらないんですよ」
「滞在目的は?向こうで働くか何かかしら?」
「う~..、すいません、
もうちょっとゆっくり喋ってもらっていいですか?」
「はぁ…、
だからカナダに行く理由は何かしら?」
「えっと、観光っすかね?」
「それで出国のチケットは持っているのかしら?」
「いや、まだ持ってません。向こうで買うつもりです」
「出国のチケットがないのであれば、
あなたにチケットは渡せないわ」
マジで…??!!

自由勝手に気ままにふらふら旅をしてきた僕は
そんなことは知らなかった。
ひとつめの滞在場所を控えておいたくらいだ。
空港内のWi-Fiでソッコーで出国のチケットを買った。
滞在期間は12日。こ、このくらいでいいかな?
買ったのはトロントからニューヨークに行く
“Greyhound”というバス会社のもので42ドル。
もちろん移民の多い国だから
不法就労なんかを防ぐためだってのは理解できるんだけど、
行く前から出国のことを考えるのはあまり好きじゃない。
その国を気に入れば滞在を延ばしたいし、自分の旅に制約ができるからだ。
ネットでチケットを購入し、それをおばちゃんに見せると、
おばちゃんはなんだか納得できていない顔で僕にチケットを渡してくれた。
なんだか最近チェックの厳しい人に当たる気がする..。
荷物検査を何事もなく抜け、ちょっとリッチになったフロアで
セール品の1.5ユーロのプリングルスを買い、それを瞬殺した。

13時になり、搭乗ゲートが表示された。
僕はiPhoneで軽く情報収集しながらそこに向かった。
飛行機に乗り込む直前で分かったのは
アメリカ入国にも出国のチケットが要る
ということだった。
しかもメキシコやキューバなど隣国などに抜けるチケット以外。
ははは…。
持ってねぇし。
僕はメキシコに行きたかった。
これと言って特に理由はない。
ただ、それは”On the Road”のサルたちが行った国だったし、
雑貨も可愛い感じがしたからだ。
陸路でメキシコに行くだなんてなんだかワクワクするじゃないか。
だからこそ、ここで僕は破り捨てる予定のチケットを
買わなくてはならなかった。
買ったのはスピリット・エアライン、グアテマラ行き。
1万5千円。
はぁなんだかどんどんお金がなくなっていいくなぁ…。
アメリカの入国税と考えよう。

飛行機に乗る前に入場ならぬ搭乗整理が行われた。
それはどうやらビジネスクラスの乗客が先というものらしかったが、
ここでも添乗員たちのクッソ流暢な英語が
なんて言っているのか分からなくて、
搭乗を拒否されているような気持になった。
カナダに入国できるか不安になっているこの状況ならではだ。
航空会社はエティハド航空から
アイルランドの航空会社のエア・リンガスに変わっていた。
グレードもエティハドのものよりいくらか落ちたように感じる。
機内はどこか窮屈で、スチュワーデスたちはどこか
サバサバしている気がした。

14時を過ぎて、飛行機はアイルランドを離れた。

飛行機の中では、また「バードマン」を見たり、
音楽を聴いたりして過ごした。予定では7時間半のフライトだ。

そして僕はようやく
カナダ
にやって来たのだ。

外は曇り空で飛行機の窓からは雪が残っているのが見えた。
見ただけでここが寒そうなのが分かった。
トロントまで来るのにかかった日数は二日間。
30日に南アフリカ、ケープタウンを出て、
ヨハネスブルグの空港で一泊したわけだから
4日間もシャワーを浴びていない。
もうどうにでもなれだ。
できることならずっと飛行機に乗っていたかったがそうもいかない。
他の乗客たちと一緒に飛行機を降り、そのままの流れで入国審査へと向かう。
これで入国拒否なんてことはあるのだろうか?
出国のチケットも持っているのに、僕はそんな不安に駆られていた。

必要以上に喋り過ぎると胡散臭さを演出するだろうと思った僕は、
声のトーンを下げ、見た目以上に礼儀正しい日本人を演じることにした。
一発目の審査官は二、三質問しておしまい。
訪れる予定の場所だったり、滞在予定日数だったり、
そのままカードを渡され第二審査官の元へ。
どうやら入国審査は二段構えのようだった。
僕だけではなく他の乗客も列に並んでいた。
こちらも特にこれと言って突っ込んでくるような質問はしなかった。
出国のチケットさえ持っていれば向こうも疑いはかけてこないのだろう。
なんだ。意外とあっさりしていたな。
入国審査を終え、次に僕がすべきことは
預けた荷物を回収することだった。
これも僕をかなり不安にさせた。
ロストバゲッジは帰国を意味していたからだ。
そして一番の気がかりは
「ギターは果たして無事なのか?」
ということだった。
ヨハネスブルグで機内に持ち込むのを止められ、
お姉さんはインクのかすれるボールペンで一生懸命行き先を書き込んでいた。
もしかしたらどこかで足止めを喰らっているかもしれない..!!
ベルトコンベアーからバックパックはすぐに出て来た。
だがギターはいつまで経っても姿を現さなかった。
周りにいた人の数がどんどん少なくなってくるのが分かる。
とうとうそこで待っているのは僕一人だけになり、僕の不安は最高潮に達した。

「あの?何をお待ちなんですか?」
アジア人顔の男性スタッフが僕に声をかけてくれた。
「あーー、あのぅ、ギターを待ってるんです…」
「あぁ、ギターですね。
それならこちらに」
そこにはビニール袋にケースごと包まれたギターの姿が!
中身は無傷!やった~~~!
やった~~~~!!!
思わずガッツポーズを決め、お兄さんは「ははは」と笑った。

これにて
僕は完全にカナダに入国したことになったのだ。
空港内の遅いWi-Fiでトロントのある
オンタリオ州の地図をダウンロードしておいた。
ダウンロードが済むとバックパックを背負って空港内をうろついた。
この空港はそこまで大きくはないことが分かった。
もうあらかたの飛行機が出発してしまったのか、
空港内にはほとんど人がいなかった。
スタッフの数の方が多いくらいだった。
僕はベンチの上に座り、グダグダと時間を過ごした。
もう時間も遅い。ここで外に出ても、ほとんど何もできないだろう。
っていうかーーーーー
『怖い…』
初めての足を踏み入れるアメリカ大陸に僕は
完全にビビっていた。
空港に住み着きたいくらいだった。
ふと外を見ると、なんと雪が降っていた。
僕はそれをあまり考えないようにしてiPhoneの画面に集中した。

情報収集もロクにできないまま、時間だけが過ぎて行った。
南アフリカで買っておいたヒマワリの種を
ボリボリとかじって気を紛らわせた。
トイレの水は温水が出たが、水量が弱く、
頭を洗うのにかなり時間がかかった。
ベンチに横になったが、スタッフが叩き起こしてくるのでは?
と気になってなかなか眠れなかった。
そんなカナダ一日目。
僕はとうとう
ここにやって来た。

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リアルタイムはいまどこに??!!
いよいよ、アメリカ大陸ですね!
仕事合間に楽しみに拝見してます。
>Masukoさん
まさか自分の想い描いたルート通りの旅ができてるのに
自分でも驚いているよ。
マスコくんともどこかで会えたらいいんだけどね♪
こっちもただプラプラしているだけじゃなくて
できるだけ作品を作れるように頑張りやす!
応援ありがとう♪
ついに北米ですか、おめでとうございます!
どうやって大西洋を超えるのかと思っていたらカナダからでしたか。私は以前にマレーシア航空の準世界一周チケットでケープタウンからブエノスアイレスに飛んだことがありますが、てっきり南米から入るのかと思っていました。メキシコから南米へ南下されるのでしょうが、その後はオーストラリアですか?LCCの太平洋路線ができれば安く帰国できるでしょうが、エアアジアジャパンの再スタートは2016年になるとか。タイミングが微妙ですね。燃油サーチャージが安いのもいつまで続くかわかりませんし…
>citydeさん
ありがとうございます!
いや、アフリカを旅された方は大体は南米に行かれますね。
それでもこの時期だと航空券は7万円以下でした。
そこまで変わらなかったので僕はカナダを選びました。
というのもアメリカに行きたかったからです。
入国審査の厳しいであろうアメリカに入国するには
陸路からの方が簡単と聞いたもので。
(実際に今はアメリアです。余裕でした)
ルートはこのまま南下して
メキシコからアルゼンチンまで行こうかなと考えております。
余裕があればオーストラリア、ニュージーランド、
そしてシンガポールから帰れたら最高ですね♪
まぁ、大海原を越えるのにはお金がかかると思っています。
果たしてLCCは実現するのでしょうか?楽しみです。
シミ君無事にカナダ入国おめでとう。
私はカナダは未踏の地ですので、ブログとても楽しみです。
>JOSANさん
ありがとうございます。
『入国できるのか?!』とビビっていた割には
特に何事もなく入国することができました。
出国のチケットさえあればなんとかなるみたいですね笑。
でも、やって来た季節はまだ早かったようです。
ベストシーズンは6月ですね…。めっちゃ寒かったです。