「ポケットから出て来たのはハチミツ」

世界一周661日目(4/21)

 

 

寒さに

断続的に目が覚め、ブランケットを体に巻き付けるようにして
何度も寝返りを打った。

だが、カナダで野宿した時よりはずっと寝やすかった。
というかカナダの野宿はひど過ぎた。

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テントを張った場所のすぐ隣りには川が流れている。

野宿の達人なら橋の下で眠ったんだろうなぁと、
朝日に照らされてきらめく川を見ながらそんなことを考えた。

8時を過ぎて撤収を始めた。
今日もまたヒッチハイクでシカゴを目指す。

 

 

ここはアメリカ、ペンシルヴァニア州、ピッツバーグの郊外

 

 

 

 

北西部に向かうヒッチハイクに関する情報は何もなかった。

そのため僕はマップアプリから、
ヒッチハイクができそそうなハイウェイの入り口を
今日のポイントに定めた。

途中にあった小さな売店でコーヒーとクッキーを買って朝食を済ませると、
ギターケースから段ボールを取り出し、今日の目的地としている
Columbus(コロンバス)」の名前を書いた。

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お店の店員たちは僕に「グッド・ラック」と声をかけてくれた。

他人から幸運を祈られると少しでも成功確率が上がったような気がする。
僕は「Thanks!」と言って店を出た。

カードボード(段ボール)には離れた街の名前を書くことはない。
「シカゴ」なんて書いても車は止まってくれないからだ。

北海道から「沖縄」と書いたボードを持って
ヒッチハイクを始めることを想像すれば、理解していただけるだろう。

 

 

 

 

 

徒歩20分ほどでヒッチハイクのポイントに到着した。
だがそこは違法手前のグレーゾーンだった

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地図によると僕が今立っているこの場所は
まだハイウェイではないことを示していたが、
そこには歩道というものは存在しなかった。
歩行者の侵入は禁止されているのかもしれない。

 

 

『警察に注意されたら終わりだな』

ヒヤヒヤしながらヒッチハイクを開始した。

 

 

 

朝の時間帯であればコロンバス方面に行く通勤途中の車が
捕まりやすのではないかと思ったが、
僕が狙いを定めたヒッチハイクポイントの交通量はまばらだった。

車もほとんど通らず、それに加えて周りに誰もいないような状況で
一人ポツンとダンボールを持って立っている。

そのような自分の置かれた状況に対して思うのはギャグ過ぎて笑えるか、
悲観的になるかのどちらかだ。

時折やってくる車に精一杯アピールするが、レスポンスは薄い。

『これ、ダメなんじゃないの?』

そう思わずにはいられない。

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一時間の間に奇跡的に二台ほど止まってくれる車があったが、
方面が違っていたため、僕は彼らに礼を言って
見送らざるを得なかった。

パトカーも近くを通り過ぎることがあったが、
何も注意をされることはなかった。

ここでヒッチハイクをしても構わないか、
もしくはこんな場所でやっても車なんて捕まりっこない、
そういうことなのかもしれない。

ネットの情報によると
ピッツバーグを取り囲むハイウェイは入り組んでいるらしく、
この街からヒッチハイクをするよりかは
バスか電車に乗った方がいいとさえ書かれていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒッチハイク

開始から二時間待った。

すぐ横を走るハイウェイを眺めながら僕は親指を立て続けた。

車が全く来なくなってしまうと、大声で唄ったり、
後で思い出せないくらいくだらないことを考えて時間をつぶした。

 

 

止まってくれた車は、今いる場所から
ほんの数マイル先の隣り街へと向かう車だった。

僕はピッツバーグから脱出することが先決だと思い、
お礼を言って車に乗り込んだ。

運転手のリチャードソンさんは娘さんの写真を車の中に貼っていた。
青い背景の写真はどこかアメリカを感じた。

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リチャードソンさんにはハイウェイの入り口で降ろしてもらった。

標識に書かれた「WEST」という文字を見ると
僕は西に進んでいることが確認でき、それは僕を安心させた。

不思議なことに最初の一台が捕まると、
それに呼応するように次の車も止まってくれる
ヒッチハイカーの法則」のようなものが存在する。

 

 

ヒッチハイク開始から5分もたたずに車が止まってくれた。

中に乗っていた陽気なおばちゃんは
「ほんの先までしか行かないのよ」
と申し訳なさそうに言って去って行った。

こういう時にどのような決断をとるのかもヒッチハイクにおいては重要だ。

一発で目的地まで行く車を待つべきか?
それとも、少しでも先に進むべきか?

僕は次に止まってくれた車の目的が
たとえ数キロしか進まなかったとしてもそれに乗り込むことにした。

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二台目の車の運転手はジョージと言う名前の中年男性だった。
彼からは口数の少ない男という印象を受けた。

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だが、写真を撮る時は笑顔!

 

 

ひととおり自己紹介が終えた後、彼が発したセリフは

「ヒッチハイクは危ないんだぞ」

というものだった。

もちろんヒッチハイクが
ある程度の危険を孕んでいることは僕も理解している。

日中のみのヒッチハイクで事前に情報を調べる。
危険な地域は避ける、というのが僕のリスクヘッジでもある。

 

 

 

 

ジョージさんにはワシントンという町の近くで降ろしてもらった。

降ろしてもらった場所はハイウェイへ続くランプだったが、
ここも通り過ぎる車はほとんどなく、
一時間ヒッチハイクして全く手応えが感じられったため、
その場所に見切りを付けることにした。

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全然車来ねぇ…

 

 

 

地図を確認すると4km先に
別のハイウェイの入り口があることが分かった。

4kmなら一時間も歩けば辿り着けるだろう。

僕はバックパックを背負うと歩き始めた。

 

 

 

『早くヒッチポイントに着きたい!』

そんな気持ちの焦りとは裏腹に、自分の歩く速度は一定だ。

なんせ15kgのバックパックと7kgのサブバッグ、
手にはギターを持っている。

強い風が吹いてくるとギターが煽られた。

僕は「くそっ…!」と悪態をつきながら、
なるべく前を向かずに、下を向いて歩いた。

 

 

周りの背景に気を配らずに、ひたすら歩くことだけに集中する。

ふと顔をあげて自分がいる場所を確認すると、
一気に変わった景色に自分がワープをしたような気分になった。

カナダに来て都市型キャンプ生活を始めてからと言うもの、
歩きっぱなしだなと僕は思った。

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下を向いて黙々と歩いていると車が止まった。

中から陽気なおじさんが出てきて
「どこに行くんだ?」と訊いてくれた。

ヒッチハイクをするための場所まで向かっているのだと伝えると、
おじさんは僕を車に乗せてくれた。

1時間以上かかるところがわずか20分で車に乗れるなんて!

 

 

 

ワシントン在住の
(ちなみにアメリカには同じ様な名前の町が沢山ある)
モーガンさんの車の中では僕の好きなJack Johnsonがかかっていた。

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そのことをモーガンさんに言うと、
彼は「それじゃあこんなのはどうだい?」とかけてくれたのは
「EELS(イールズ)」というアーティストの”parallel”という曲だった。

窓から見える郊外の街並と
今こうして旅をしている自分の心境が曲とマッチングした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら!
ここならすぐに車が捕まるよ!」

とモーガンさんは自信満々で僕を降ろしてくれた。

 

 

そこはほとんどハイウェイの真ん中と言った場所だった。
僕が行こうと思っていた場所からは少し離れていた。

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車はスピードを落とさずに通り過ぎて行く。

もはやギャグ過ぎて笑える。

僕は開き直ってフルスピードでやってくる車に向けて
やけになってボードを掲げた。

 

 

 

開始からわずか10分でトラックが止まってくれた。

アメリカではトラックはなかなか止まってくれない印象があったので、
しかもこんなハイウェイのど真ん中に止まってくれたのは意外だった。

僕は大急ぎて車に乗り込んだ。

運転手はロバートという名前の男性だった。
クセのある英語を話したので全くなんと言っているか分からなかった。
甘党なのか、床にはお菓子袋が散らばっていた。

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彼の目的はほんの数マイル先だった。

ハイウェイの入り口で僕は降ろしてもらったのだが、
そこもまた交通量の少ない寂れた場所だった。

近くに「Sunset Beach」という
洒落た名前の場所があるみたいだったが、
今いる場所に少しでも合っているかと言われれば

答えは「否」だ。

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ヒッチハイクをしていると、
このようなローカルな場所に降ろされることが度々ある。

この場所で降ろしてくれた運転手を信じてヒッチハイクを続行するか、
また別の場所に移動するかだ。

場合によってはその場から移動できないこともある。

 

 

ひとまず僕は地図を確認した。

次のハイウェイの入り口までは歩いては行けない距離にあった。

ここでヒッチハイクを続けることに決め、僕は車を待った。

時折やって来る車は
ことごとく僕を無視してハイウェイに入っていった。

 

 

『どうしておれはこんな辺鄙な場所で
ヒッチハイクなんてやっているんだろう?』

何百回と思ったことか。

ヒッチハイク開始前に食糧を買っておかなかったことが悔やまれた。
ペットボトルに補給した水も残り僅かだった。

夕方になると空には雲がかかり、
風が強く吹くようになって来た。

僕はバックパックからpatagoniaのTrioret Jaketを出して羽織った。

 

 

ポケットに手を突っ込むと
中に何かが入っているのが分かった。

 

 

 

 

 

出て来たのは
チューブに入ったハチミツだった。

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どこかのレストランからかっぱらってきたものだった。

僕はそれをチューチューとすすりながらヒッチハイクを続けた。

こんな時だからこそ、そんなささいな食糧とも言えないものが
僕のモチベーションを保ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開始から2時間。

ようやく車が止まってくれた。

中から笑顔が素敵な女性が出ててきて
途中まで乗せて行ってあげるわよと僕に申し出てくれた。

こんなクソ何もない場所に現れるような類の女性ではなかった。

僕は泣きそうになりながら車に乗り込んだ。

 

 

フランさんはウェスト・ヴァージニア在住の方で
これから娘の待つ家に帰る途中とのことだった。

僕の話にケタケタ笑ってくれて、
僕もつい嬉しくなってペラペラと話した。

 

 

フランさんはトラックが停まる
大型のサービスエリアで僕を降ろしてくれた。

それだけではなく、
レストランでハンバーガーまでごちそうしてくれた。

僕は何かお返しをしなければと
スケッチブックにフランさんの似顔絵を描いた。

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支払いを「サッ」と済ませると、
フランさんは素敵な笑顔と共に去って行った。

いや、男の話をあんなにケタケタ笑って聞いてくれるって、

うん、そういう人っていいなぁって思いました♪

 

 

 

 

 

日が沈むまでの間、僕はサービスエリアの出口で
トラックに向かって「Colunbus」と書かれたボードを掲げ続けた。

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結局、コロンバス行きの車は捕まらなかったが、
一人の運転手が
「明日コロンバスに帰る際にここを通るから、
朝も待っているなら乗せて行くよ」と申し出てくれた。

彼と拳をコツンと合わせて、
僕はこの日のヒッチハイクを切り上げることにした。

 

 

先ほど食事を済ませたレストランに戻ると、
店員たちは薄汚い僕にとても良くしてくれた。

レストランはビュッフェ式となっており、
店員の一人が
「あなたがもし何か食べたいなら私たちがお金を出してあげるわ」
と申し出てくれたのだが、

先ほどフランさんからハンバーガーを頂いたばかりだったので、
丁重に断っておいた

(そしてのちのち
『なんであの時喰っておかなかったんだ?!』と後悔した)

 

 

 

 

「コーヒーのおかわりいる?」

「え?いいんですか?」

「いいのいいの♪」

 

 

 

旅をしていると優しさを受ける場面に沢山遭遇する。

深夜三時までレストランで日記を書き、
座ったまま僕は目を閉じた。

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ついったー

2 件のコメント

  • 読んでて、旅がしたくなりました。毎日毎日仕事と酒と、休みはギャンブルの空っぽの生活(それでもそれなりに楽しんでいるつもりだが)の自分にはなんだか憧れます。これからも読みます。

    • >タマタマさん

      いやいや、僕はギャンブルのセンスが皆無なので
      バイト時代に同い年のヤツらが
      「回転数がどうのこうので、あそこの店なら絶対10万はいける!」
      とか言っているのを羨ましく思っていました。

      時間とお金があれば旅は意外と実現可能だと思います。
      世界一周なんてしなくても今ならビャビャーーーッッ!!と
      どこでも行けますしね♪

      旅の中でお会いしたSEのお兄さんが先日
      突然もらった休みでアムステルダム行ってました。
      (飾り窓(売春通り)行ったのかなぁ…?)

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