世界一周692日目(5/22)
清掃のおじさん
が来る前に6時半に起床。
撤収。
そしてそのままの流れでフレッド・マイヤーへ。

ドーナッツを二個とベーグルをひとつで2ドルちょっと。
頭の中では『そろそろ野菜摂った方がいいんじゃないの?』
と声がするけど、気にしない。
いや、そこは気にしよう。
だけれど僕の手はドーナッツへと伸びてしまうのだ。
どういうわけだか朝に糖分とらないとシャキっとしないんだよ。
お会計を済ませてそのまま三階にある個室トイレへ。
トイレは一階にもあるのでこんな時間に
この場所のトイレを使うヤツなんてまずいない。
旅に出てから伸ばしっぱなしの(二回すいてもらったけど)髪を
オーガニックソープで洗って、時間があれば洗濯もする。
洗うのはせいぜい靴下や下着、Tシャツとタオルくらいだ。
で、洗い終わったらそれをバックパックにくくりつくける。
それが終ると二階のテーブル席へGO!
コンセントのある席で充電をしながらWi-Fiに繋ぐ。
一応張り紙がしてある。
「90分以上は留まらないように」
それ以上いるとセキュリティに追い出されるのだ。
フレッド・マイヤーさんとは良いお付き合いをして行きたい。
このルールは守ることにしよう。
ここはアメリカ、ポートランド。滞在8日目。
アップタウンにあるワシントンパークから僕の一日は始まる。

ポートランドの都市型キャンパーはクリエイティヴだ!
9時半になると僕は
ポートランド州立大学に向かうことにした。
「世界新聞」に描いたマンガと
イラストのスキャンをしたいと思ったからだ。
アメリカに来てから日本の様なコンビニはなく、
スキャンそのものに1ドル以上もかかってしまう場合がほとんどで、
僕はなかなかスキャンができずにいた。
大学までの道の途中で気がついたことは、
洗濯した靴下をフレッド・マイヤーの椅子の下に
干したままにしてきてしまったということだ。
どうせ汚い靴下なんて誰も盗りはしないだろう。
誰かがカスターマーセンターに忘れ物として届けてくれるだろー、
いや、待てよ。濡れた靴下を
誰がカスタマーセンターまで持って行くだろうか?
『うわっっ!何これ汚ねぇ!』
と捨てられるのがオチだ。
う~む…。
南アフリカで買ったトレッキング用の靴下。
いつも外を歩き回っている僕は重宝している。
来た道を引き返すのはなかなかにテンションが下がった。
バックパックを背負ったままだと運動量も上がるので汗もかく。
フレッド・マイヤーの椅子の下には靴下がひっかかったままだった。
まるでごみのように引っかかっていた。

ポートランド州立大学
に着くと
僕は学生センターのようなものを探した。
大学自体はそこまで大きくはない。
昼前の時間で講義が始まっているなのだろう。
大学の敷地内にはそこまで多くの人間の姿を見ることはなかった。
グラウンドではユニフォームを着た女のコたちが
コーチの前に集合していた。
学生科の職員に訊くところによると、
どうやら図書館に行けばスキャンができるようだった。
バックパックを背負ってギターを持った
ホームレスみたいなヤツが果たして
図書館に入れてもらえるのだろうか?と若干の不安はあったが、
探知機にも反応せず(あれは本の持ち出しをしないようにチェックするヤツだ)
中に入ることができた。
スキャナーは当然のように四台ほどそこにならんでいた。
日本のコンビニのような風景だった。
それだけでなくタダでスキャンできると言うから驚きだ!
インド人顔のお兄さんは僕が学生でないのにも関わらず
親切にスキャンしてUSBにデータを移してくれた。マジサンクスです。
「世界新聞」読んでね☆

スキャンを済ませると僕は
ゆうこから借りた「True Portland」を開いた。
中から面白そうな場所を見つけ出し、
オフラインマップアプリに場所を記録してその場所へと歩いて行った。
バスを使えばソッコーで行けるのに
『2.5ドルあったらー…』
と別の使い道を考えてしまうのだが貧乏旅行者の悲しい性だ。
本日向かった先は
“Independent Publishing Resource Center”だ。
IPRCが略称。

個人の出版物である”ZINE”の印刷を受け付けており、
ここのZINEの蔵書はポートランド一なのだとか。
スタッフはフレンドリーに僕を迎えてくれた。
ガイドブックに記載された箇所を見せると、仕事の時間を割いて、
印刷に使われる機材を簡単に説明してくれた。
活版印刷という一見時代に逆行いしているようなものが、
この場ではとてもカッコよく見えてしまうから不思議だ。
個人のTシャツのプリントなども請け負っているらしい。


ここでのZINEのアーカイブも興味深かった。
中には20年以上昔に出版されてたZINEもあった。
その当時ならZINEが読まれていたであろうことが
なんとなく想像できた。
だが、
ネットのある今では一体誰がZINEを読むのだろうか?
とまた同じ疑問が頭の中に浮かぶ。

ZINEは年代を遡ればクオリティが高いものが多く、
現代に近づけば近づくほど簡単なものへと鳴って行く。
僕は15年も前に描かれた漫画のページをパラパラと繰りながら
ZINEの存在意義について考えた。
もし多くの人に読んでもらうことを考えてZINEを作るのであれば、
装丁や内容をもっと工夫するだろう。
ネットではなく、紙媒体を通して発信したいこと。
手に取るのは発行者の回りにいる人だろう?
広がってポートランドに住む誰かだ。
そうして、僕は
「やはりZNEというのは
作る行程を楽しむものなのではないか?」
という結論に達した。
ポートランドに住む人でも
「あぁ、ZINEね。機会があったら作ってみたいかな?」
くらいに思うだろう。
だが、それを実行する人は果たしてどれだけいるだろうか?
きっと行動にさえ移さない人の数の方が多いはずだ。
20ページにも満たないZINEを作るのに
時間も労力もコストもかかるだろう。
それでもZINEが未だに作られ続けているのは
そこから学ぶ何かがあるということだし、
人はその行為を楽しんでいるということだ。
「利益なんてまずはいいじゃん?
まずは自分が楽しまなきゃね♪」
ぎっしりと本棚に収納されたZINEたちが
僕にそんな言葉をかけてくれた。

そうして
僕はまたポートランドの街をぶらぶらと歩き、
見つけたベーカリーでコーヒーをすすりながら絵を描いた。

閉店時間と共に、
今度は別の場所にある24時まで営業するバーガー屋で
同じように作業をしていた。
今日はダウンタウンまで戻らなかった。
寝床を探してウロウロしていると見つけたのは墓地だった。
墓地はなかなかに敷地が広く、芝生が生えており、
そして誰もいなかった。
僕は注意しながら寝やすそうな場所を探し木の下にテントを立てた。
テントの中に入ると、墓地の横を走る車の走行音しか聞こえなかった。
幽霊なんて信じないし、
日本人の僕はアメリカの幽霊に対してあめり怖さを感じなかった。
むしろ会いてーし!
1時半に人の声が聞こえた。
見回りか??!!こんな時間に?!
声は僕のテントの周りをウロウロし、
そのまま通り過ぎていくことはなかった。
テントの外から声が聞こえる。それもこんな時間に。
イタリアのフィレンツェでお会いした
13年間世界を放浪しているKさんは
「墓場はいいよ♪誰もこないから」
と墓場で野宿することを勧めていた。
夜中に墓場に来るヤツなんていないはずだろ…??
まさか幽霊!!??
僕が思い出したのは
村上春樹の「レキシントンの幽霊」という短編集だった。
おそるおそるテントから顔を出してみると、
僕の20m先でホームレスが二人
小さくたき火をしながら酒盛りをしていた。
ため息が出る。
『うるせぇな…。眠れやしない..』
そう心の中でブツブツと文句を言い、僕は目を閉じた。

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