「歯が立たなかった。ただそれだけ」

世界一周720日目(6/19)

 

 

いつまでも

ウダウダと寝ていた。

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8時過ぎにならないと
潮風でシケったテントのフライやら寝袋が乾かないのだ。

砂をならす小型のブルドーザーみたいな車が走り始め、
清掃員があたりを歩き回っていてもしばらく僕は起きなかった。
朝が弱い学生みたいだ。

シカゴでもらったパタゴニアのダウンジャケットは
毎回寝る前に着ている。寝袋が夏使用で薄いぶん、
着込むことによって温度を調整するのだ。

 

 

 

ここはアメリカ、ロサンゼルス。サンタモニカ・ビーチ

 

 

 

そろそろ夏だって言うのに空一面には靄がかかっている。
青空が出てきてくれるのは10時くらいだ。

撤収を終えると、僕は体を洗いに行った。

アメリカのビーチには無料のシャワーがいくつもあるのだ。
もちろん個室シャワーというわけではなければ、温水だって出ない。

助かるのはここがアメリカだってこと。
一人や二人変なヤツがパンツ一丁でいてもそこまで気にされない。

バックパックを目の届く場所に置いて、
僕はボクサーパンツ一枚になり、水シャワーで体を洗った。

9時といえども少し肌寒かった。

 

 

 

 

ビーチ沿いあるトレーニングエリアでは
スラックラインのプロみたいな人が
神業的なバランス感覚で宙に浮いていた。

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ポールの両端に張ったゴムのラインはあっちこっちに動くのに、
乗っている本人の体勢は変われど、同じ位置から全く動かない。

 

 

 

シャワーを終え、僕は作業が出来る場所を探した。

サンタモニカのダウンタウンにあるスターバックスは
朝10時から満員だった。

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カウンタウー席に座った他の客が
天井にあるコンセントを使っているのが分かった。
こういうところに貧乏旅行者のテクニックはある。
次からは僕も真似することにしよう。

散々探してコンセントが見つからなかったので、
スターバックスの店員は一体どうやって
店を掃除しているのか?と気になったが、
ようやく謎が解けた気がした。

 

 

ダウンタウンのスターバックスは本屋と併設していた。

中にはサーフィンの雑誌がごく自然に置かれている。
写真のセンスもよくサーフィンをやらない僕でも
ついつい中を見てしまう。

サーフィンが盛んな西海岸は沢山のカルチャーを生み出して来た。
それがどこか羨ましく感じる♪

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作業場

を求めて僕はフラフラと辺りを歩き回った。

昨日行ったオーガニック・フードが売られているスーパーの外に
ちょうどいいテーブルを発見した。

コンセントもあれば、Wi-Fiだって入るのだ。

コーヒーを中で買ってテーブルにつくと、
いつもの日課である日記を書いたりブログをアップして過ごした。

 

 

コンセントを使っている人間は僕以外にももう一人いた

スーパーの駐車場ではサングラスをかけた恰幅のいい中年の男性が
電気自動車に充電している。

最初この車は彼のものかと思ったのだが、
観察しているとそうではないらしい。

駐車場に車をとめた他の客に
「なぁどうだい?この車カッコイイだろう?電気で動くんだ!」
と名刺のようなものを配りセールスをしていた。
お金持ちの住むエリアならではの光景なのだろうか?

電気自動車のオープンカーで、少し変わったデザインをしていた。

2時間くらいそこで作業をしていたのだが、
電気自動車の彼は特に手応えを感じなかったようで
「商売上がったりだぜ」とばかりにしょげて引き上げて行った。
車を売るのは難しいね。

 

 

 

14時を過ぎると僕はビーチへ戻ってみることにした。

シカゴから続くルート66がここで終るらしい。
観光地として形だけのサインをそこに見ることができた。

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僕はビーチを見下ろせるベンチに腰をかけると、
バナナを食べながらギターをポロポロとひいた。

軽く歌ってみたが、路上演奏者だとアピールをしていないので、
通行人たちも僕のことなんかなんら気にせず通り過ぎて行く。

周りには浮浪者と簡単なピクニックを楽しむ人たちが
同じように地面に座っていた。人が沢山来る場所であれば
とことんピースフルな場所だ。

 

しばらくベンチで時間をつぶしていると
ようやく空が晴れて来た。

そろそろ僕も行くとしよう。

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路上演奏

で稼げやしないか?という欲望が
むくむくとかま首をもたげた。

遊園地と化しているサンタモニカ桟橋に行ってはみたものの、
そこはバスキングなんてやれそうな雰囲気でないことが
一発で分かった。

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サンタモニカビーチの端の方で僕はギターを構えたが、
レスポンスがかなり薄かったため僕は別の場所を探すことにした。

『どこがいい場所はなんだろうか?』とビーチ沿いを歩いたのだが、
海岸沿いの道はベニスビーチに着くまで
どこまでも同じ様なアスファルトの道だった。

インラインスケートや自転車が
びゅんびゅんと専用道路を走って行く。

とっくに顔を出している太陽の下、
2kmの距離を汗をかきながら歩いた。

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ベニスビーチに着くと僕は端っこの方でギターを構えたが
レスポンスは悲しくなるほど薄かった。

少し進むと分かったのだが、
そこでパフォーマーたちがしのぎを削っていたのだ。

もはやギャグとしか言いようがなかった。

誰もがみな熟練者で僕なんかよりもずっと上手いのにもかかわらず、
ケースの中にはほとんどお金が入っていない。

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路上演奏で世界一周を成し遂げた金丸さんのブログを
ここへ来る前に読み返した。

金丸さんはここでバスキングをしてコンスタントに稼ぐばかりではなく、
素晴らしい出会いにも恵まれていた。

彼のブログで読んだ時、僕はここが路上演奏者にとっての天国かと
思ったのだが、そんなのは僕の幻想に過ぎなかった。

ほんとうに歯が立たなかった。

プロでもミュージシャン志望でもない僕がこういう場所で演奏をする時、
金丸さんの「凄さ」を改めて実感することができる。

アンプリファーを使って大きな音を出すヤツらの中で
ギターとハーモニカでレスポンスを勝ち得るすごさ。

それがバスカーの世界で勝負するってことなんだろう。

よーく分かった。

 

 

マジ金丸さんすげぇ..。

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結局

僕が向かった先はスターバックスだった。

コンセントのある席が確保できたので、
そこで立ちながらカウンター席で閉店まで作業をした。

 

 

22時になり店が閉まると、外は賑わっていた。

ブルースを演奏するバーから生音が聞こえてくる。
店の前に荷物を下ろすと煙草を吹かしながら
そこでしばらく演奏を聴いていた。

バーの中にはビリヤード台が数台置いてあり、
客たちは酒を飲みながら楽しそうにしている。

 

 

さっきまでしょげていた僕だったが、
外で見ているだけでどこか元気になれた。

演奏しているのは老年のバンドだったが音には味があった。

ああそうか。
音楽ができるとこんな生き方もあるんだなと僕は思った。

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酒屋で2ドルの特売のドリトスを買い、
他のライブバーの演奏を外で聴きながら時間を過ごした。

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どこからともなく浮浪者がやって来て
「寒いんだ。ジャケットくれない?」と言ってきたが、
「ごめんおれも野宿組なんだよ」と返した。
代わりに煙草を勧めたが彼はぷいっとどこかへ行ってしまった。

 

 

まぁ、そんな日もあるさ。

 

 

「歯が立たなかった」

 

 

それだけだ。

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2 件のコメント

  • シミくんも金丸君見たいに、図書館でWIFI探したりブログや漫画を画く
    スペースを、探して見たら如何ですか。
    アメリカの都市ならば図書館は、何処にでも有ると思うのですが。

    • >JOSANさん

      もちろんお金のかからない場所で作業するのも
      もちろんありなのですが、

      図書館などのあ公共スペースは場所が少ないのと
      開いている時間が短い、
      何よりコーヒーが飲めないのがネックなんです。

      コーヒーを飲みながら気楽に作業するのが好きなんですね。
      うん。コーヒーがないと僕はダメだ。

      コメントの返信をしている今も
      カフェでコーヒー飲んでます笑。

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