「微妙な宿」

世界一周797日目(9/4)

 

 

パッキング

の途中で部屋を出ると、
外のカウンターで暇そうにしている宿のお姉さんの一人に
僕は片言のスペイン語とジェスチャーを使って尋ねた。

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「荷物って預かってもらてるのかな?」

「ノーーー.。」

 

 

彼女は困ったように眉を下げつつも即答だった。

三日間泊まったのだから
荷物くらい預かってくれてもいいではないか。

そう僕は思ったが、諦めてパッキングを済ませた。

ここはグアテマラ、アンティグア。

 

 

 

 

明日にはチチカステナンゴという町に移動するつもりだ。

目的は雑貨が売られるサンデーマーケットだが、
選挙で道が混雑することも想定して前乗りしようという算段だ。
月曜日にはアンティグアに戻ってくるので
雑貨やテントは宿に置いて行きたい。

 

 

いざ宿を出るタイミングになって、
宿のスタッフが荷物を預かってもいいと申し出てくれた。

それでも別の宿に移動することによって
気持ちもフレッシュになるだろう。

「ごめんね」そう言って僕は宿を出た。

 

 

 

歩き出してすぐにしんどさを覚えた。

移動を繰り返すごとに雑貨を入れた手提げが
子泣きじじいのように重くなっているような気がする。

メキシコで買った「トイ・ストーリー」の手提げバッグは
肩からかけられるように取っ手が長くなっている。

腕を伸ばした状態で持つと、地面にズリズリと磨れるのだ。
だから少しだけ持ち上げるように手首の角度を変えたり、
力を入れなくてはならない。

雑貨を持ち運ぶことも楽じゃない。
この苦労が日本にいる相棒や仲間たちに
1ミリだって伝わらないのがやるせない。

 

 

 

僕はどこの宿に移るかは目星をつけていた

そう。この町にも日本人宿があるのだ。

そこでなら荷物を預かってくれるに違いない。

 

 

ペンション田代」は事前に調べていなければ
見つけられないような場所に隠れ家のようにあった。
看板も標識もなにも出ていないので、
地元の人間に尋ねてみたが場所は特定できなかった。

格子の間から誰かが顔をのぞかせたのが分かった。
ドアが空いてこの家の男の子が僕を中へ入れてくれた。

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最初僕はそこが「ペンション田代」だということが分からなかった。
室内は日本にもありそうな広めの一軒家という感じだった。

記帳を済ませると宿の奥さんに案内されて
二階にあるドミトリーへ向かった。

中へ入った瞬間「ムッ」とする臭いが鼻をついた

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…。

 

 

狭い部屋に二段ベッドが二台置かれ、
その手前に簡素なベッド(というかマット)が置かれていた。
その脇に勉強机が一台だけ置いてあった。
誰かがスペイン語の勉強をしているのだろう。
机の上には辞書やら煙草やスナック菓子が置いてあった。

奥さんの話によると空いているのは二段ベッドの上段だけらしい。
ベッドとベッドの間はバックパックひとつ置けば
埋まってしまうようなスペースしかなく、

僕は上段に登ることを諦めて、
入り口を入ってすぐのところにある
簡易ベッドを使わせてもらうことにした。

 

 

『一番最後じゃないと寝られないだろうな』

と僕は思った。

 

 

 

 

「ペンション・田代」は三階建てで、
トイレとシャワーの数(だけ)は整っていた。

三階にはキッチンがあり、
奥さんはそれらの施設を案内してくれた。
共有スペースとキッチンのある場所には
長机がそれぞれ一台づつ置かれていた。

 

 

キッチンのテーブルで
ライトピンクのパーカーを着た日本人のお兄さん
が座っていた。

「こんにちわー」と挨拶をした時、

その人の顔に見覚えがあるような気がした。

 

 

まさか…。え!!!いや、マジでっっっ…??!!!

 

 

 

「あ、あの、スンマセン、
人違いだったら申し訳ないんですけど、あの…、

タビジュンさんですか?」

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「は、はぁ..」

「あ!やっぱり!
あっ!僕シミって言います。
漫画描いているんですけど..

 

 

その時の僕と言ったらアイドルか
芸能人にでも会うようなソワソワっぷりだった。

反対にタビジュンさんは風邪気味でここに療養しに来たらしく、
どちらかと言えば無口な印象を受けた。
そりゃ朝からテンション高くねーか。

僕は瞬時に気を遣い
「それではごゆっくりおくつろぎくださいまし」と
旅館の主人のようなセリフを残して、それ以上話しかけるのをやめた。

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気を遣ったので写真もナシッ!でも会ったんだよ!

 

 

 

 

宿は広いと言えども、
宿泊客がどこで時間を過ごすかは限られていた。

シングル/ダブルルームに以外の宿泊客が過ごす場所と言ったら
三階の共有スペースしかない。

屋上(三階)にはパラソルつきの机があったので、
僕はそこで漫画を描いたり、ギターを弾いて時間を過ごした。

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しばらくすると、ここでもまたホソイさんに再会した。
ホソイさんは今日アンティグアに到着したばかりらしい。

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僕よりもサンペドロに滞在してのは意外だった。
泊まった日本人宿がすっかり気に入ってしまったようで、
僕と同じようにまったりとした時間を過ごしてたと言う。

顔なじみの人がいるのは気持ちが楽だ。

お喋りをしながらノートに漫画を描いた。

 

 

 

 

 

 

昼過ぎに

なると僕はホソイさんと一緒に町に出ることにした。

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ちなみにここが宿の入り口です。分かりにくっ!

 

 

 

アンティグアの町では
スキミングの被害に遭った日本人もいるらしい。
だから警備員のいるATMを探しにいくことになったのだ。

実はホソイさんはアメリカでスキミング被害に遭い、
メキシコで架空請求を受けている。
二度あることは三度あるってやつだ。

慎重にセントロ周辺のATMをひとつづつチェックして回っていった。

ホソイさんとはセントロで別れた。

 

 

 

 

僕は今日は場所を替えてバスキングをしようと思っていた。

セントロは昼頃が一番人通りが多いようだ。
中央公園でストップをかけられるのであれば、
別の場所ならうまくいくかもしれない。

この町で中央公園以外でバスキングをするとすれば
「アルコ・デ・サンタ・カトリーナ」くらいしか
場所がないように思われる。

人通りはセントロに比べるとぐっと少なくなるが、
観光客が訪れるスポットだ。

 

 

僕はアーチの下でギターを鳴らした。音がいい感じに反響した。
第一段階「まずは自分が楽しむこと」はクリアだ。

すぐに現地のカップルと目が合った。
二人は通り過ぎてから引き返してきた。

看板を見ていたので「どう?似顔絵描くけど?」と営業をかけると、
「それじゃあ」という風に彼女さんの似顔絵を描くことになったのだ。

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彼らはグアテマラシティに住んでいるそうだ。
ここには観光で訪れているらしい。

似顔絵を描いている最中、
手帳に描いた漫画を見せると興味を示してくれた。

彼氏さんの方は日本を訪れたこともあるらしく、
東京や名古屋、広島などに足を運んでいた。
日本の漫画もいくつか知ってたのでつかみはバッチしだった。

似顔絵は20ケツァールで売れた。あざっす!

 

 

ストリートパフォーマンスにも流れがある。

そのあと別の観光客4人組が僕の向かい側に座って歌を聴いてくれた。

こういう時にベタな曲をやるとウケるのは経験則として分かっている。
「Stand by me」や「Let it be」は鉄板だ。

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なんかいいね。こういうの。

 

 

彼らがレスポンスをくれるのに乗じて
他の人も紙幣をいれてくれる。

そして気持ちよく唄っているタイミングで
ポリシア(警察)がやって来るのだ

彼らは僕が片付け終わるまでその場を動かなかった。
そうして僕が撤収したのを見届けてその場から去って行った。

 

 

 

向かい側に腰を下ろして聴いてくれていたのは
カナダ人のカップルとグアテマラ人の親子だった。

カナダの男性は僕に飲みかけの瓶ビールをくれた。

 

 

「なんだ!あの警察共!
ミュージックが好きじゃねえのか!」

「まぁ、今選挙が近いじゃん?きっとそのせいだよ」

 

 

スペイン語よりは英語の方が喋りやすい。

彼らはたった一日だけだがアンティグアの町を観光しに訪れたそうだ。
それで僕の音楽に足を止めてくれるって、いやはや..。

 

 

「おれさ、カナダでもバスキングしたよ。
まぁ、全然稼げなかったけどね。
おれより上手いヤツはいくらでもいたからさ」

「はっはっは!そうだろ!」

あまりに即答にみんなで笑った。

 

 

またガカナダ人の女のコの方は僕と同じ26歳ということが分かり、
それだけで親近感のような物が湧いた。

みんなで横一列に並びながら話をする。
彼らにも漫画を見せると興味を示してそれを読んでくれた。

なかでも「HIPPI HAPPY(ヒッピー・ハッピー)」と描いたイラストを
気に入ってくれたようだった。
そのフレーズを口にするとみんなで笑った。

ここに来てから警官にストップかけられ続けて
ちっとも面白くなかったけど、
路上パフォーマンスの楽しいところはやはりこういう出会いにある。

 

 

 

 

陽気な4人組と別れた僕は、
そのまま中央公園に行ってみることにした。

煙草を1.5ケツァール(23yen)で買ってベンチに座って吹かした。
近くにいたアクセサリー売りの女のコが物珍しそうに僕を見て、
何か話しかけてきた。
スペイン語なので何を言っているのかはよく分からなかったが、
自己紹介くらいだったらできる。

ベンチに座りながらプロモーションも兼ねて
物売りの女のコたちの似顔絵を描いてあげた。

すぐに人だかりができ、それに混じって警官も現れた。
一応看板を出してので、素早くそれをしまった。

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「何か問題ありますか?
友達に似顔絵を描いてあげてるだけですけど?」

「ここでそのようなパフォーマンスをすることはできない」

 

 

そんな馬鹿なことがあるもんか!
今は個人的に絵を描いてるだけなんだぜ?

アンティグア滞在四日目にしてようやく分かったのは、
パフォーマンスをするにはパーミッションがいるということだった

 

 

「今日はもう役所がしまっているから、取るなら明日だな」
そう警察は教えてくれたが、明日になりゃぁ僕はここを出る。
ふざけやがって、先に言えっつーの!

似顔絵をプレゼントすると、物売りの女のコは
「クワント?(いくら)」と尋ねた。

僕は「プレゼント」と言ってニッコリ笑うと
すぐにその場を去った。

 

 

アンティグアには失望した。
これほどシケた町があっただろうか?

絵を描くのもだめって?
食べ物売るのはオッケーなのかね?ウケるね。

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まぁ、その噴水のデザインは悪くないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一度宿に

戻ったが、居心地の悪さは相変わらずだった。

ここに滞在している人のほとんどは
スペイン語学校に通っている日本人たちだ

宿と学校が提携を結んでいるらしく、
ここに泊まっている人は割引料金で授業を受けられることができる。

ドミトリーは通常一泊55ケツァール(846yen)だが、
一週間以上の滞在で45ケツァール(692yen)で泊まることができきる。

だが、施設の方は値段の割には微妙。
これなら今朝方までいた元の宿の方が居心地がよかった。

共有スペースで日記でも書こうかと思ったが集中なんてできっこなかった。

テーブルは中心に向かって「V」の時を書くように曲がっており、
ノートパソコンも置けなかった。絵も描けやしない。

 

 

いる場所がない。

共有スペースが小さい。

ドミトリーは臭う。

 

 

はっきし言ってしまうと、
ここに長期滞在しないのであればコストパフォーマンスが悪い。
それがこの宿だ。

 

 

これならカフェに行ったほうが集中できる。

そう考えた僕は結局行きつけのカフェに行くことにした。
なんで日本人宿にいるのに作業できねーんだよ?
これが30ケツァールとかだったら我慢出来るのになぁ。

メキシコの日本人宿「カサカサ」でタケシさんが言った
「人間ってがっかりするのが嫌なんですよ」と言った言葉の意味が
よぉく理解できた。

 

 

 

 

17時から20時半までの間、
僕はひたすらにキーボードを叩いた。
久しぶりに日記が書けた気がした。

やっぱり作業をする環境は僕にとって凄く大事だ。
最後まで居座っていた僕に店のスタッフは
最後までいいサービスをしてくれた。
1ケツァール札をチップボックスに入れて宿に帰った。

 

 

 

 

宿に戻ったところで居場所がないのは相変わらずだった。

僕はどうしてもタビジュンさんと話してみたかった。
あの「西アフリカ大冒険」の話が聞きたくてたまらなかった。

だが宿にはもう既に既存のグループが出来上がっており、
僕がそこを無理矢理割って入って個人的な話をするのは
違うような気がした。

屋上の隅っこで迷惑にならないように
ギターを弾くくらいしかやることがない。

 

 

雨が降り出すと、より一層所在無さげになってしまう。

居心地よくないなぁ…。

 

 

 

不思議なもので、今まで散々無気力に苛まれていたのに、
このような選択肢の限られた空間においては作業ができるようだ。

22時を過ぎると一階のリビングには誰もいなくなっていた。
大型液晶テレビの裏にあるコンセントに
延長コードのソケットを差し込み、日記の続きを描いた。

 

 

 

 

深夜2時になって僕はようやくドミトリーに引き上げることにした。

最後の最後でこの宿は僕をがっかりさせてくれた。
簡易ベッドの寝心地に悪さと言ったら最悪もいいとろだった。

いやさ、高い金取るんだったらちゃんとしてくれよ。頼むから。

 

 

タビジュンさんに会えたくらいしか
いいことねーじゃんかよ。

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そのベッド的な何かが僕の寝る場所でした。

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