▷11月13日、ボリビア〜チリ、カラマ
ここが「宝石の道」とチャリダーの間で言われている場所かは分からなかったが、バスは荒野を走っていた。ポツポツと山に緑の草が生えている。
僕の後ろには日本人の男性が座っていた。三週間でニューヨーク、ペルー、ボリビア、チリを旅行する強行軍だった
歳はよくわからない。僕より上だと思えばそう思えるし、年下だと思えばそう見えなくもない。日本人はおとなになってからしばらく外見の変わらない、どこかの戦闘民族のようにも思える。
その男性は、僕が二年五ヶ月旅をしているの(とパスポートなんかを盗まれたこと)を知ると「よく日本帰りたくないですねぇ」と感心した。
国境の手間になり、バスの中で出入国カードが乗客に配布された。乗客はカードが手元に渡ると、みな一生懸命に記入し始めた。
カードの記入欄は小さいし、バスはガタガタ揺れるしで、僕はカードに記入欄するのに手こずった。みみずがのたうちまわったような字がカードの記入欄を埋めていた。
『これじゃなんて書いてあるか分からないだろうな』と僕は思った。
以前から疑問に思っていたんだけど、記入カードってほとんど見られてない気がする。
先進国だとかで滞在先を聞かれたりすることはあるけど、そういう時は飛行機の中だとかでほとんど揺れない場所だし、入国審査の前にはちゃんとカードを記入する机がある。バスの中でカードをなんて配られることはない。それに今はパソコンでパスポートを記録するし。
バスは国境のゲートの前には止まった。僕たちの前には既に一台のバスが止まっていた。ゲートは閉まっている。どういうことだろうか?
乗客はポツポツとバスを降り始めた、僕もバスを降りることにした。
ちょうど同じバスに80カ国を旅したというファニーなオースオラリア人が乗っていた。喋るときの表情や仕草がまるで映画に出てくるコメディ俳優のようだった。オースラ人がみな彼のようなら旅するのが楽しいだろうな。僕はそう思った。
彼の話によるとボリビアのイミグレーションが空くのは8:30だという。後ろの席のお兄さんは「ここで待つんだったら出発の時間を一時間半ずらしてもいいな!4:00に出発する必要絶対なかったよ」と小さくツッコミをいれた。確かに。
国境の前では、これに合わせてか三つほど屋台が出ていた。7:00前のひんやりする空気の中、ホクホクと鍋から湯気を出して僕たちを待ち構えている。需要と供給。
僕はなぜだか朝から屁が止まらなかったので、スナック菓子とマテ茶を飲むのにとどまっていた。
乗客たちは一斉に食事を取り始めた。とりわけボリビア人は朝から肉の入った朝食を食べ出すことには驚いた。彼らは胃もたれなんか気にしないのだろうか?その食べっぷりはまるで越境が何か重大な決戦のようなものであるかの食べっぷりだった。
僕はボリビアのお金を可能な限り使おうとあり金全てを菓子に替えてしまった。
8:00前にはイミグレーションオフィスの前に列ができはじてた。まず僕たちよりも先に来ていたバスの乗客たちの列ができ、その後に僕たちのバスの列ができた。
8:30にイミグレーションが開いた。陽気な警察官がバス内で書かれた書類のひとつをチェックしてまわった。彼は乗客がどこの国出身か分かるようで前のヨーロピアンにはその国の挨拶で、僕には「コンニチワ!」と挨拶をした。
入国スタンプが押され始めた中で、出国に20ボリビアーノ必要だということが分かった。僕はそんな話聞いてなかったのでピンチだ。そう思った後で、むぁ、米ドルで支払いもできるだろうと楽に構えた。
先に並んでいたオーストラリア人がスタンプを押されて帰ってきた。「あれは絶対彼らの懐に入るよ!」と言った。
現地人に対してはどうだか分からないが(というか僕は前の方に並んでいた)僕の前には並んでいた人間はみな、その”出国税”とやらを支払った。僕も同様だった。
先ほどカードをチェックしてまわった警察が他の管理官と一緒にいる。彼はニヤニヤ卑しい笑いを口に浮かべて「ほら、サー!20ボリだ!」と僕を急かした。
出国を終えバスの中でオーストラリア人が「あれは交渉で払わずに済むよ」と口にした。さすが累計80カ国を旅しただけはある。だが彼は「時間がもったいないから僕は払ったけどね」と言った。なんだよ。払ったんじゃん。
そうしてバスは緩衝地帯を抜け、チリの国境へと乗客を運んだ。
チリ側のイミグレーションで乗客たちの荷物はバスの荷室から全て出された。チリの入国審査は厳しそうだ。
だが、入国審査は簡単なものだった。先ほど書いた解読困難なカードなんかイミグレーション・オフィサーはちっとも見ていなかった。ほらね。
パスポートに61カ国目のスタンプを押されて僕が外に出ると、ゴールデンラブラドールが荷物の匂いを嗅いでいる最中だった。
管理官が手慣れた感じで乗客たち荷物の間を行ったり来たりさせ、犬はサクサクとその間を縫った。
そして仕事が終わり、飼い主から「よし」のサインが出ると一目散にオフィスの中へと駆けていった。
この犬にとって危険物の嗅ぎ分け作業は一刻も早く終わらせてしまいたい仕事らしい。それが人間じみていてすこしおかしかった。
乗客たちはバスに乗る前に荷物の中身をチェックされて入国審査は無事に終わった。「厳しいようで、全然見ていない」。それがチリの入国審査に抱いた
印象だった。
国境を抜けると辺りの景色はずっと荒野が続くようになった。ウユニの町からさらに大地が乾燥してしまったようでカラカラな大地だった。
ウトウトしているうちにバスは同じような景色の中を走り、14:00にはチリの最初の町、カラマに到着したのだった。
バスターミナルのすぐ脇にホステルがあったので僕は値段を訪ねてみた。なんと¥1700円もするような宿だった。ヨーロッパより高いってどういうことだろう?
僕は事前に目星をつけていたホステルにも当たってみることにした。歩き出してすぐに雑貨を持った手にしんどさを覚えた。今日は金曜日だ。今日中に雑貨を日本に送ってしまいたい。
その思いで、背中に汗をかき、次なるホステルの前にたどり着いた。すぐにインターホンを押したがなかなか人が出てこない。諦めかけたその時にドアが開き、中から不機嫌そうなボリビア人寄りの顔をした女のコが出てきた。
対応もよくはなく、ムスッとした顔で僕の対応をした。僕は部屋を見せてもらったが、ひとつの部屋にベットが二台が並べられた小さい部屋だった。シャワーと薄型テレビがついて10,000ペソ(¥1700)くらいだ。
僕は仕方なしにこの宿にチェックインすることにした。
ひとまずシャワーを浴び、ベトベトの体をサッパリさせると僕は財布だけ持って外に出かけた。
こういう南米国で郵便物を送る場合はダンボールが必要だ。国によっては郵送用のダンボールを客側が用意する場合がほとんどだ。
僕は近くの商店に大きなダンボールがもらえないか?とつたないスペイン語と辞書アプリを駆使して声をかけてまわった。
だが、どういうわけか、なかなか理解してくれる人間がいない。英語なんてまるで喋れないし、簡単なスペイン語の単語を組み合わせてもちっとも理解してくれないのだ。これだけ連想ワードを与えているのにこの想像力の欠如はいったいどういうわけだろつ?もっと考えてくれ!
5人目くらいに尋ねたアーミーは英語を理解しなかったが「スーパーに行けばあるよ」と僕には教えてくれた。こういう時は行き先が簡単でもちゃんと場所を訊いておくことが大事だ。なんだかんだ現地人じゃないと分からないが場所や体裁であることがあるからだ。
スーパーまでの道すがら、大きなダンボールを見つけると、そのつど同じ内容の質問を繰り返したが、やはり商店の人間たちは理解力と想像力の足りない人間ばかりだった。
大型スーパーでダンボールを入手するのはとても簡単だった。そこら辺で品出しの途中だったトイレットペーパーを箱から全て出して持って帰ればいいだけだった。ダンボールの持ち帰りに関して特に金を払えだなんてことは言われなかった。
宿に戻ると早速僕は仕入れた雑貨を箱の中に詰めた。詰め込みを終えるとそこまで重くないことがわかった。そりゃバックパクと手提げで持ち運ぶ量にも限界があるしね。それに仕入れに必要な資金にも。今の僕には持ち運びができるのはこれが限界だろう。
ダンボールに雑貨を詰め込むと時刻は16:00を回っていた。なぜだかこの町の店銀行だとかゆうびんきょくは昼の休憩時間をとっているのだ。僕がこの町に到着した時には閉まっていた。
ダンボールを抱えて郵便局へと向かった。”Chile express”と書かれた郵便気の窓口のカウンターは大きく透明なガラス壁で遮られていた。こじんまりとした窓口は『ここで郵送なんてできるのだろうか?』と思わせるほどにこじんまりとしたものだった。
16:00の営業再開を待っていたように、店内には10にんくらいの人間が列を作っていた。それには僕は並ばずに従業員の一人に「船便を使って荷物を郵送したいのだが、と尋ねた。
メガネをかけた50代くらいの女性従業員が眉をしかめる?「あんた何言ってるの?」とでも言うように。
「だから、あれですよ!シップ!えっと船ってスペイン語でー、ブケ!ブケ!」
「はぁ?船?意味わからないわ」
そう言って辞書アプリを見せ、ジェスチャーまで交えて尋ねるも女性従業員はてんで理解力しない。
後ろにいた客の一人がボートを漕ぐ真似をして僕をからかった。マジなんなんだよ。
ここの人間を見切りをつけた僕は別の郵便局にも言ってみたが、なぜだかそこも”Chile experess”だった。
その店でも客たちが列を作り、小さな窓口に向かって何かをわめいていた。
僕は先ほどと同じように列には並ばず、直接従業員に向かって船便はあるかと尋ねた。
こちらの従業員はまだ理解力があるほうだった。そして僕が得た情報は「船便なんてない。この町からは送れない」ということだった。オイオイまじかよ⁈
彼女が言うには「アンティファガスタ」という町からなら送れるということだった。一刻も早く送ってしまいたかった雑貨が次の町まで一緒だということになってしまった。
僕は肩を落としてダンボールを抱えて宿に戻った。
宿に戻ると見たこともない他のスタッフが眉を吊り上げて僕に迫った。
英語は喋れなかったが、僕が部屋の外に洗濯物を干していたことに対して目くじらをたてているらしい。言いたいことをひとしきり言い切ると「マネー!」と二回繰り返した。ったくガメツイヤツは嫌いだよ!
僕はさっさと洗濯物を取り込んでガチャンとドアを閉めた。いい天気だったので洗濯物はほとんど乾いていた。
そして僕はギターを持って外に出かけた。
ちょくど宿の近くに歩行者天国があった。そこではアルゼンチンのヒッピーが(僕が南米で外見ヒッピーを見るとアルゼンチン人だと思うことにしている)アクセサリーを売っていたのを見つけたからだ。
僕が歩行者天国に行くと二組ほどのパフォーマーの姿があった。
一人は竹でできた笛の音をマイクで拾ってアンプで拡大して、さらにはパーカッションの入ったバックミュージックを流していた。音量はデカいが、そこまでコインは入っていない。
もう一人はマジックをやるらしいヤツだった。まだ準備中のようだが、彼もまたアンプを使ってパフォーマンスをするようだ。すでにバックミュージックをかけている。
僕は歩行者天国の端の方に行かなければギターの音はならせなかった。果たしてチリのレスポンスはどんなんだろう?物価が高いから、みんなの反応もイマイチかもなぁ…。
自信なさげにギターを弾きだすと、まずは目の前でタバコやらお菓子を箱に入れて売っていたおばちゃんがコインをジャラジャラと数枚入れてくれた。
それを皮切りにいい調子でコインがギターケースに投げ込まれていく。自分でも驚きだった。1000ペソ札も二、三枚入った。
チリのコインの価値を把握しきれていない僕はいくら稼げたなど、気にせずにギターをかき鳴らした。中には写真を一緒に撮ってくれとお願いする人もいた。あぁ、メキシコでよくあったな。
僕はそんなプロみたいな巧さは持っていないし、周りのパスカーのレベルが低いわけじゃない。軽音楽部の高校生よりギターを弾けないだろう。
ここまでレスポンスがいいのは、日本人としての珍しさがかなりプラスに働いているということが分かった。それにチリの人たちのバスキングに対するレスポンスは中南米の中でもかなり良い方だ!
持ち歌全てを歌うワンクールを一時間半で終え、一度休憩時を挟むことにした。コインかなりの量でギターケースにずっしりとした重みを感じる。
タバコを一本買い、場所を変えて僕は再びギターを構えた。周りの店のスピーカーから音がかぶさってくるが、やれないほどじゃない。
今度の場所ではレスポンスは先ほどとよりも少なくなったように感じたが、紙幣は先ほどよりも多かった。
一時間で切り上げたころには、コインは山のようにたまっていた。
バスキングを終えた僕はどこか両替ができないかと、歩行者天国の周りの店に尋ねて回った。両替ができると教えてもらったのはなぜだか肉屋さん。
大量のコインを見て店員たちは爆笑していたが快くコインを紙幣に両替してくれた。アガリは34000ペソ。48ドルだった。
宿代の高さに資金の減り具合を心配していた僕だったが、これならチリの旅を切り抜けられるように思えた。しゃーっ!このやろう!見たか!
どういうわけだか、物価の高い国では食欲をごく自然に抑えることができる。ひとまず、100%のリンゴジュースとウィンナーの入ったパンだけでこの日の夕食を済ますここにした。
明日はヒッチハイクで150km離れたアントファガスタを目指す。
初めまして!
やっとやっとここまで読めました!
最初から仕事の合間にとか夕飯食べてからの楽しみでもあり、睡魔とも戦いながらでも次が気になって気になって今はどこにいるのかな?とかも気になりながらでもちゃんと全部読みたくて、やっと1ヶ月以上はかかりましたがここまで読み切りました!(^o^)
シミさんのブログは本を読んでる感覚でワクワクしたり声を出して笑ったり、ちょっとしんみりしたりととっても素敵なブログですね☺︎
それに似顔絵もとっても上手で素敵ですね!
私も出会ったら絶対書いてもらいたいなぁ〜なんて妄想してしまいます(笑)
本当毎日の楽しみなので、これからも楽しみにして応援してます!
色々大変な事もあるでしょうが、気をつけて沢山楽しんで下さいね!(^o^)
>azuさん
一ヶ月以上もかけてここまで全部読んでくださったなんて感無量です!
旅はあと三ヶ月くらいでおしまいですが、また暇つぶしがてら読んでくださると嬉しいっす♪
iPhone4Sのアップデート後、Wi-Fiがなかなかオンにならない弊害を持つ中、めちゃくそイライラしながら更新しております。
それも感じながら読んでください(笑)
ああっ!もう!またWi-Fiが繋がらねぇっ!