世界一周372日目(7/5)
リビングに置かれた
ソファ・ベッドが
ふたつ。
隣りを見るとサジュークにお母さんが
覆い被さってほっぺたに
キスをしているのが見えた。寝よう。
次に目を開けると姪っ子が
彼を揺さぶっているのが見えた。寝よう。
ここはトルコイスタンブールの郊外にある
クルド人サジュークの両親が住む家。
僕は昨日彼と一緒にイズミルから
ヒッチハイクでここまでやってきたのだ。
その距離400km以上。かなりの長旅だった。
イズミルで彼のシェアルームに
泊まらせてもらう予定だけだったのに、
「両親の家にも泊まりにおいでよ!」とか
「イスタンブールの友達の家に
泊まらせてあげるよ」とか
節約旅をしている僕にはありがたいお話だったので
お言葉に甘えさせていただくことにしたのだ。
それにしてもすっかり昼夜逆転したような生活だ。
彼と行動を共にするようになって僕の起きる時間も
12過ぎが当たり前になってしまった。
ベッドから起き上がり、顔を洗ったあと、
サジュークママに用意してもらった
ブランチを食べる。
イズミルで一人暮らしをする息子が
久しぶりに帰ってきた。
彼の両親はとても嬉しそうな顔をしている。
僕もおもわず同じテーブルで
ついつい笑顔になってしまう。
温かさを感じる。いい家族だ。
何があった??!!!
サジュークの一家、クルドのみんなは
ムスリム教ではないようだ。
彼ら独自の宗教があるみたいで、ラマザンは関係ない。
トルコは規律のゆるいムスリムで
ラマザンなんてやらない人の方が多いみたいだけど、
近隣の住民の何人かは日の沈むまで
飲み食いしない礼の戒律に従っているらしい。
ここ数日間で一気に時間が変わった。
日本人の僕だったら少し罪悪感を感じてしまう
ゆっくりなスローライフだ。
まぁ、ひさしぶりの帰郷なんだもんな。
せかせかしたとことろで何も変わりはしない。
ブランチを食べた後、
まったりしていると
ご近所のお兄さんがやって来た。
サジュークと同い年の29歳。
僕の伸びた髪の毛とおでこの狭さを見て
お兄さんはうらやましがった。
「だいたい僕たちは
おでこから禿げていくからね」
そんなお兄さんには
美人の奥さんがいた。
ふふふ。謙遜か…。
お隣さんが帰った後は
家の庭になっているイチゴを食べる。
今日もスローな時間が流れる。
「よし。それじゃあ出かけようか」
サジュークママと一緒に少し歩いた所にある、
サジュークのお姉さんの運営する美容室があった。
まだオープンして一ヶ月も経っていないそうだ。
お店の中は仲の良い友達が
足を運ぶ憩いの場のようになっている。
そこにいた彼の姪っ子ニーサを見つけると、
サジュークはキス魔に豹変した。
「ぎゃ~~~~!!!
やめて~~~!!!」
ニーサが嬉しそうに大声で叫ぶ。
「ム~~~~~~ッチュ!!!」
いやぁ…
ほのぼのするよ♪
サジュークのお姉さんは離婚しており、
娘のニーサちゃんと一緒に両親の家で暮らしている。
父親は養育費を払って二人の生活を
サポートしてるらしいけど、
お父さんの存在ってやっぱデカいよなぁ。
ニーサが家族のみんなから
大事にされていることが分かった。
サジュークの家に引き返す帰り道、
近所の子供たちが僕に興味を示した。
こういう時に長男の血が騒いでしまうのが僕なのだ。
彼らの持っていたサッカーボールを奪い、
「メッシ!メッシ!」と叫んで
架空のゴールにシュートをぶち込む。
「ゴォォォォオオオオルッッッ!!!」
「うわぁ~~~~!」
「いぇ~~~~~!」
「ロナウド!ロナウド!」
ふっふっふ。
ガキンチョにはやっぱりサッカーだよな♪
「よしよし。
じゃあお前はメッシな。
君はロナウドだ。チーム分けすんぞ!」
なかなかまとまらない
ガキンチョどもを二つに分けた。
上から苦情を言いたそうに
にらみをきかせているおばちゃんの気配を察知し、
近くのコートに移る。
草サッカーのトルコ国内線の開幕だ!
ちょっと動いただけでジーンズが汗で濡れた。
そしてビーチサンダルで走り回っていたので、
気づいたら足の爪の付け根から血が出た(笑)
「ちょっと待っておれ!着替えて来るから!」
そうガキンチョでもに言い残して
着替えてピッチに戻ると誰もいなかった。
大声で盛り上がっていたのがダメだったらしい。
近所のおっちゃんが耳に手を当てて
「うるさいから辞めろ!」と僕にジェスチャーした。
サジュークの家の前で
またガキンチョが集まるのをしばらく待っていたが、
冷めてしまった遊びの熱は元に戻らなかった。
僕も同じ様なシチュエーションを何度も経験して来たよ。
遊び場はあってないようなものなのかなぁ。
元気いっぱいかけまわるのも子供だと思うけどね。
いつまでたっても童心を忘れない25歳の無職だ。
家に帰ると
さっきのお隣のお兄さんと奥さんがいた。
「これ、シミにプレゼントだよ」
渡されたのは
「LC WAIKIKI」と書かれた青いビニール袋。
中にはTシャツが二枚入っていた。
サーファーたちのプリントがされた赤いTシャツと
文字でバイクの形が描かれたネイビーのTシャツ。
サイズはL。
「冗談でしょ?
これ、本当にくれるの?」
「冗談なんかじゃないさ。
もし感謝しているのならハグしてくれって」
「ありがとう」と言ってお兄さんとハグをする。
たまたまここに着た僕は他人でしかないはずなのに。
この優しさはどこから来るんだろう?
色々な国々でいろんな人たちから優しくしてもらった。
その度に僕は同じことを考えた。
そして自分に何ができるのかを今もまだ問い続けている。
荷物はこれ以上増やしたくなかったので、
日本から着て来た無印良品のVネックを
ここに置いていくことにした。
すっかり色あせヨレヨレになったTシャツ。
おへその横くらいに小さな穴が空いており、
バックパックを背負った際に擦れたために
左肩にも穴が空いていた。
このボロボロ具合を気に入っていたのもあるけど、
これからヨーロッパに入るんだ。
ここでコイツとはお別れしよう。
一年間僕の旅につき合ってくれてありがとう。
夕食をサジュークの家族とお隣さんと
彼のいとことその彼女で食べた。
相変わらずご飯の量は多い。
僕が太っていることは間違いないだろう。
日記を書く時間なんてない。
それでも別に構わない。
だってこれは僕の旅なのだから。
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そして後日、一気に数日分の日記を書き上げるのでした。
ほら?これでも一年間続けて来たわけでしょ?
続けることが大事なんだよぉ~~~…。
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