「プエルトモン」

▷11月20日/チリ、プエルトモン

 

 

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「プエルトモンって、デジモンかなんかっすか?」

そう僕はマサトさんに尋ねた。

正確には”Puerto Montt”とスペルを書く僕はその場所へと向かっていた。

 

 

バスの窓側は驚くくらいに寒かった。乗客に毛布が支給されなかったら寝ることすら叶わなかっただろう。

外の景色は今まで見てきたチリのものとはまるで違っていた。平地に杉のような木が生え、さらには外にパラパラと雨が降っていると、なんだかヨーロッパへ来たような気持ちになる。つい先日まで砂漠を突っ切って移動してきたのが嘘みたいだ。

 

 

 

プエルトモンに着くまでに、バスは途中の町にあるターミナルへと寄って行き、プエルトモンに着く頃には乗客は数名しか残らなかった。

プエルトモンに到着すらと、僕はすぐにフェリー乗り場へと向かった。マサトさんの話では翌朝の7時から、次の目的地である”Chaiten”(チャイテン)までの便が出ているそうだ。早いうちにチケットを買っておいてもいいだろう。

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フェリー乗り場はバスターミナルから歩いて五分もかからない場所に位置していた。

運良く僕は今晩23時に出発する便のチケットを買うことができた。これで宿代も浮く♪

ターミナルのスタッフの話によると、フェリーにはシャワーもついているらしい。僕は今日で四日も体を洗っていなかったので、救われた気分になった。

 

 

プエルトモンのフェリーターミナルには、ツーリストの姿を見かけた。トレッキングが好きそうな一人旅のヤツから年配の団体までだ。

ターミナルの設備もしっかりしてる印象を受けた。荷物の預かりが無料だったのには助けられた。

iPhoneを充電しながら、ターミナルのWi-Fiを使ってブログの更新をした。

外には雨が降りしきっており、バラバラと風に乗った雨が天井を打つ音が聞こえた。

 

 

 

 

雨が弱まったタイミングで僕は外を歩いてみることにした。

港町のプエルトモンはほんとうにヨーロッパの田舎町のようだ。

年季の入った建物が観光客向けの土産物屋やレストランになっている他、この町ではチーズが売られているのが目に留まった。店によっては量り売りしてくれるようで、500ペソ(¥88)でチーズの切れ端を買うと、僕はそれをつまみながら町歩きをした。

町のメインストリートを歩いていると、この町には歩行者天国がないことが分かった。通りの真ん中には車道が伸びていた。

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また、建物の下にちょっとしたら屋根が伸びており、それを利用して小雨の中でマリアッチ三人組が演奏しているのが見えた。この町でのバスキングはそんな風にやるらしい。

雨という天気もあり、僕は早めにバスキングをやってみることにした。適当な屋根の下でギターを構えた。

 

 

レスポンスたチリの中でも薄い方だった。こんな雨の中じゃ財布の紐も固くなるのは自然の流れのように思える。

ギターの音も雨のせいで全くといっていいほど響かない。

30分ほど歌うと、話かけてきてくれる人がチラホラ現れ始めた。僕が似顔絵を描いていることを知ると、「それじゃあ一枚描いてもらおうかしら」という具合になる。

 

 

雨の日に外で絵を描くのは、あまり気乗りがしない。鉛筆の線は消えにくいし、紙は湿気るし、雨粒が紙落ち、インクが伸びてしまったりする。雨の日に外で描くメリットはない気がする。

それでも僕が似顔絵を描き始めると、あっとあっという間に僕の周りを人が取り囲んだ。

一枚描き終わると、誰かが一枚オーダーをくれる。似顔絵がウケるのはこの町でも同じだった。

それに、金額を相手が決めていいのも気軽さの要因のひとつだと僕は考える。他の町では2000ペソが相場だったが、この町では1000ペソが相場みたいだ。

別にそれでも僕は構わなかった。ガンガン描いて、コミュニケーションの回数が増えればそれでいい。描く機会を与えてくれるのも僕にとっては有難い。

今日は八組のお客さんの似顔絵を描いた。

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似顔絵は調子が良かったのだがギターの演奏の方はぜんぜんだった。16時にはバスキングを切り上げることにした。

ちょうど向かいの通りに文房具屋を僕は見つけた。なんの気なしに中に入ってみると、そこで見つけたのは僕のお気に入りのドイツ製のメーカー「STEADTLET(ステッドラー)」だった。

漫画を描くのに使っているピグメントは日本以外の国でどこも300円から400円はした。なんで日本だけあんなに安いのか僕は不思議でしょうがなかったが、

ついに日本よりも安くステッドラーを手に入れる国を僕は見つけたのだ。

なんとチリでは1000ペソ。約180円で一本買うことができる!日本だと210円だから30円もチリの方が安いのだ!

似顔絵用のペンも合わせて画材の出費は11000ペソ。

先ほどのバスキングで稼いだ紙幣が全てなくなった。

こうして経済が回っていくのですね…。あぁ、できることなら、もっと買っておきたかったけどーー、まぁ、もう旅も終わりだからね。

 

 

画材を仕入れた僕はそのままマクドナルドへ行き、コーヒーだけ注文するとあとは漫画を描いて過ごした。

 

 

 

 

相変わらずiPhoneがWi-Fiを捕まえるのに時間がかかる。何度もWi-Fiをオン/オフにしたり、機内モードに切り替えたり、一度電源を切ったりして、ようやくWi-Fiがはいるのだ。

アップデート一回でここまで劣化するとは思わなかった。日本に帰ったら中古でもいいからiPhone5S以上を手に入れたいと思う。

19時まで作業をして僕はマクドナルドを後にした。

 

 

 

 

フェリーターミナルまでの帰り道で立ち寄ったのは、フライドポテト屋だ。

値段によって紙袋の大きさが分かれており、揚げたてのポテトを食べることができるのだ。

フライドポテトで思い出すのは、ベルギーのブリュッセルのフリッツ(二度揚げしているのでカリカリホクホクなのだ)、そして特に有名というわけじゃないがアイルランド。

まさか、チリでとフライドポテトが食べられるだなんて。しかも安い!

1000ペソも出せば大盛りのポテトが食べられる。カウンターにはケチャップ、マヨネーズ、マスタードが置いてあり、それぞれ好みでかけることができるのだが、紙袋の下の方まではまず届かない。

マクドナルドのフライドポテトなんかじゃ比べものにならない。不健康なものだと分かっていても毎日食べたくなるような中毒性を兼ね備えている。

一袋空けてしまうと、僕は幸福感に包まれた。

 

 

 

 

 

 

フェリーターミナルまで戻ると、あとは充電をしながらブログをアップし、21:30にシャトルバスに乗ってフェリーへと向かった。

23時に過ぎにフェリーはプエルトモンの港を離れた。

 

 

 

フェリーが出港すると、船内の物販カウンターは人で賑わった。どういうわけだか、人は普段とは違うちょっと特別な乗り物に乗ったり、特別な場所へ行くと食が進んでしまうらしい。

 

 

僕はちゃんと四日ぶりにシャワーを浴びることができた♪

なぜだかゴワゴワになった髪の毛が、四日目にしてサラサラになった。

これは一体どういう現象なんだろうか?


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