▷12月19日/ニュージーランド、オークランド
iPad mini2を買ってしまった。ついにiPhoneのWi-Fi機能が壊れてしまったからだ。
これでiPhoneなしで旅するのはある意味では面白いかもしれない。5年くらい前のバックパッカーはiPhoneなんて持っていなかったわけだしね。
それでもこのあとオーストラリアに行くのにESTAみたいなのを登録しなくちゃならないし、ジェットスターのオンラインチェックインもある。日本に帰る航空券も買わなくちゃならないし、ブログも更新できないし、そもそもマップがないとやっぱり不便だ。
現代の旅人、少なくとも僕にはスマートフォンが必要だった。
このノートみたいな薄くて画面の大きいタブレットが僕の生活をどうワクワクさせてくれるのかは今の所分からない。
買ったあとから言うのはなんだけど、やっぱりバックパッカーは荷物の重さを少しでも軽くしなくちゃいけないし、コンパクトで持ち運びしやすいものの方がいいに決まってる。地味に便利だったLEDライトがiPadにはついていなかった。バッテリーの持ちは4年使ったiPhone4Sよりいいけどさ。
8時過に目をさますとそのままダウンタウンへは行かずに、公園にある市民プールに行くことにした。土曜日は営業時間が9時からだったため、20分ほど時間があった。
外のテーブルの上にiPadを横向きに置くと僕は日記を書き始めた。しょっちゅう打ち間違いをする。ワイヤレスキーボードが必要なのだろうか?
ちょっと前に「小林イクゾー」くんというブロガーがいた。
バスカーのパイオニア金丸文武氏の影響を受け、所持金わずか2千円でオーストラリアに乗り込んだのだ。彼は音楽なんてほとんどやったことなかったから、お金が全然稼げずに漫画のような極貧生活を強いられていた。ああ、あのブログは面白かったな。
そんなイクゾーくんが旅で使っていたのがiPadだったのだ。彼も長いブログを描いていた。画面のサイズは僕のより大きいだろうけど、彼は一体どうやってブログを書いていいたのだろう?彼の影響を受けてiPadに手を伸ばしてしまったってのもある。決して彼のせいにしているわけじゃないよ。
9時になると僕はシャワーを浴びた。連日の野宿生活でもしかしたら体臭がかわってしまったんじゃないか気になるところだ。自分の臭いは自分じゃわからない。
体を洗ってさっぱりすると、僕はダウンタウンへと向かった。
昨日もお世話になったインド人の多い電気屋に行くと、僕のiPhone4SはOS9.2にバージョンアップされていた。こうしないと中のデータをiPadに移せないのだ。僕はパソコンも失ってしまったので店に頼むしかなかった。
その手の作業に詳しそうな白人系のスタッフは、めんどくさそうに写真だかアプリだかの移行をしてくれた。
なんでこういう専門知識のあるヤツって、特にデジタル系で、偉そうにしてるんだろう?仮にも僕は客だぜ?
コイツときたら、「データを移すパソコンは私の私物なのに…」みたいなことをブツブツ言ってた。いやいや、店で使うパソコンだろ?
それにしても店のスタッフの半数以上がiPhone6Sを使っているのには驚いたな。社員割引みたいなのがあるのかもしれない。
昨日も会った若いスタッフたちは僕がデータを移してもらってるとこへやって来てはぺちゃくちゃとお喋りしてボスに怒られてた。中に一人インド系のヤツがいたんだけど、来年だかに日本を二週間旅行するそうだ
。彼は東京、大阪、京都、広島に行くのだと言っていた。二週間だったら相当タイトにスケジュールを組まなければ回れないだろう。
データの移行作業は一時間半くらいで終わった。iPhoneとiPadのOSのアップグレードにも別途お金がかかって、合計69NZドル(¥5,623)の出費だった。もう金がかかり過ぎてお金を使っているのだという感覚が鈍ってしまった。
ここまでやってようやく僕はiPhoneの問題にケリをつけたのだ。
店を出る前に店員の女の子が「今日はバスキングするの?」と僕に尋ねた。僕はモゴモゴと呟いていると「クリスマスが近いから人も多いわよ?」と彼女は付け加えた。
確かに連日の稼ぎのよさはクリスマスが影響していることは間違いないだろう。
二時間くらい描いて今日は作業の時間に当てようと、軽い気持ちで僕は路上に出ることにした。
いつも僕が漫画を描いているヘンテコな銅像の前には先客がいた。ドクロのマリオネットを曲に合わせて踊らせているおじいさんのバスカーだった。シュールな雰囲気が漂っていたと思う。
そのため僕は別の場所で漫画を描くことにした。別に僕はこれといって場所にこだわりなんてなかった。雨をしのげる屋根がついていればクイーンストリートのどこでだってバスキングをすることができた。
今回僕が選んだのはTOPMANの前。
以前ここでバイオリニストのバスカーが演奏していたのを見かけたことがあった。ここだったら特に店側の人間から何も言われることなくパフォーマンスをするこができるだろう。
即興漫画を描き始めてすぐに似顔絵のオーダーが入った。僕より年齢の若そうなヤツだったが、目尻にできシワが大人の雰囲気を醸し出していた。
僕は彼から得たインスピレーションで似顔絵に勝手にサーフボードをもたせてみた。似顔絵をわした後に実際にサーフィンをするのか尋ねところ、彼は実際にやるのだと言った。おおっ!自分でも驚きだ。
そしてすぐに即興漫画も売れてた。
買ってくれたヤツはバックパックを背負ったツーリストだったが、こういうストリートアートに興味を持っているらしい。僕が描いたイラストを5NZドルでお買い上げ。ありゃりゃーっす♪
だが、それっきり客足は途絶えてしまった。時刻もいつもよりか早かったし、もう僕のことなんて飽きられちゃったんじゃないかと思った。
『今描いている漫画を完成させたら引き上げるとしよう』
僕がそう考えていると、似顔絵のオーダーがふと入った。僕が絵を描き始めると次々に歩行者が足を止め僕の前に人が集まる。もう次にオーダーが来そうな人の発する気配がわかる。
一組目の似顔絵が描き終わるとあとはノンストップだった。今日は中華系や韓国人のお客さんが多かった気がする。
そして今日のアガリは160NZドル(¥13,040)。やっぱりクリスマスの影響はデカい‼︎
いつも使っているカフェは閉まっていたので、僕は別の場所で作業することにした。
足を運んだのは韓国人経営のカフェだった。
そこで何気なくiPhoneを手にしてた。
アップグレードが終わり、OSが9.2になって戻ってきており、設定言語が英語に変更されている。英語でも使い勝手はほとんど変わらない。設定でWi-Fiを確かめた。
『あれ…………???』
Wi-Fiが入る。
っていうか繋がる。
自分でも運がいいのか悪いのか分からなくて思わず苦笑した。まぁ、ツイてないわけじゃないだろうけどね。
よりによってなんでiPad買った後に直るんだよ⁇
カフェが閉まったとは、カフェの外でしばらくネットに繋いでいた。どいういうわけだか、今日はWi-Fiの速度が速い。
深夜遅くまでウェンディーズで作業すると、いつもの同じ寝床にテントを張った。
ま、いっか。
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