▷12月25日/ニュージーランド、ポリルア〜ウェリントン
「あっ!見て!ホームレスがいる!」
テントを畳むと駅まで向かった。
電子音のような鳴き声を発する鳥がいた。最初僕は音を真似する鳥かなんかだと思っていたのだが、辺りには同じ鳴き声をする鳥が何羽かいる。ニュージーランドにはヘンテコな鳴き声の鳥がいるのだろう。たぶん。
駅のホームには誰もいなかった。クリスマスの朝はほんとうにひっそりと静まり返っていた。僕は日の当たるベンチで電車を待った。時間5分前くらいに他の乗客もホームに現れた。
時間通りに綺麗な電車がやって来た。黄色のビブスを来た車掌さんに「切符はどこで買えるのか?」と僕は尋ねた。「いいから、とりあえす席にでもつきなさい」と言った。言われた通りに荷物を降ろして席に着くと、車掌は乗客の人数を指で数えて「メリークリスマス!」とどこかへ行ってしまった。なるほど今日は無料で電車に乗れるんだな。
20分ほどでウェリントン駅に到着した。
大きくて綺麗な駅だった。同じように黄色いビブスを来た他のスタッフたちはクリスマスに浮かれた顔をしていた。今日は早く上がって家族といっしょに食事でも行くのかも入れないな。
僕は外に出ると駅のすぐ真向かいにマクドナルドが見えた。マクドナルドはクリスマスでも営業しているみたいだ。今晩はあそこで時間をつぶすことにしよう。
僕はひとまず街の中心地へと行ってみることにした。
街の中心地には多くの店があったが、人は限りなくゼロに近かった。車さえ通っていないのだ。誰もいない大通りを僕はバックパックを背負ったまま歩いた。
見つけたコンビニで2.9ドルもするお気に入りのチョコチップクッキーを食べた「マジで街が静かだね」と僕が言うと、インド人顔の彼は「そりゃだってクリスマスだもん」と言った。こんな人もいない街でコンビニの店員なんてクソヒマだろうな。
ここまでどこも店が空いていないと、時間をつぶす場所を見るつけるのも一苦労だった。サブウェイは5件くらい見つけたが、そのうち営業しているのはわずか1店舗だけだった。中では中華系の若い夫婦が働いていたが、客がいないため暇そうにしていた。
僕はなんとなくブレークファストメニューを頼んで、テーブル席でぼっとしながらそれを食べた。窓から通りの様子を眺めていたが、時々人がポツポツと横切るだけだった。ほんとうにクリスマスは街全体が「休み」なのだ。
僕は日本のクリスマスを思い出す。
日本だったらみんなが浮かれ気分で外は賑わい、それに合わせて飲食店なんかが大忙しになる日だろう。僕は旅の資金を集めるために串焼き屋でバイトしていたが、忙しかったような記憶がある。あれ?どうだったけっかな?うん。ヒマではなかったな!
昼前になるとサブウェイには徐々に客が入るようになってきた。
この店にはコーヒーもなかったし、バケットはとっくに食べてしまっていたので僕は店を出ることにした。
店を出たからといって、これといってどこかへ行く当てなんてなかった。街は相変わらずひっそりしているし、バスキングなんてとてもじゃないけどできない。
このとき僕は「ニュージーランドを旅する期間を一ヶ月も取らなくてよかったかもな」と思った。オークランド以降、連日ヒッチハイクで移動してきたわけだけど、急ぎ必要ななかったのだ。あと17日もニュージーランドにいなければならないのだ。サウスランドを旅するのにそんなに時間が必要だろうか?これで街がバスキングで稼げるんなら話は別だったのに。
そのあと僕は街を歩き回った。
今日はスーパーでさえ営業していなかった。ビーチ付近はちょっと人がいたようにも思えたが、バスキングをする気にもなれなかった。別にお金は足りないわけじゃない。稼ごうという意欲が湧かない。
あまりにヒマなので、ズタボロになったnudie jeansにパッチを当てた。
もう糸がなくなってきているので、修理にも限界がある。思い入れのあるジーンズなだけにちゃんとこのジーンズで旅を終えようという気持ちはあるが、修理してもまた別の箇所に穴が空くのだ!一体何度この旅の中で僕はパッチを当ててきただろうか?この前「八年穿いたデニムです!」っていうInstagramの投稿を見たけど、何本もローテーションするデニムがなきゃあんなん無理に決まってる。
ほーい。nudeiファン必見だぞーーー。
縫い物をしたあとは同じ通りをもういっぺん歩くというようなこともやった。
見つけた別のコンビニで3ドルのコーヒーを見つけた。店内にはカウンター席があり、そこでコーヒーを飲めるようになっていた。
僕はこの時ばかりは、ほんとうに今日くらいは宿でもとろうかという気持ちになった。どこで時間を過ごすか、その場所を探すのでさえここまで苦労するのだ。僕は室内でテーブルがないとダメらしい。公園なんかにある野外のテーブルなんてダメだ。
18時ごろになると僕は駅前のマクドナルドで時間つぶそうと、そこへ向かった。ゴーストタウンと化したメインストリートを一人ぼっちで歩く。
駅前に着くとマクドナルドはさっさと営業を終了した後だった。店内にはかすかにライトがついているだけだ。
僕は肩を落として、近くのベンチに座った。人がいないだけでこんなに時間を過ごすのがキツいなんて。一日中何もしてなホームレスが逆にすごいとさえ思えるよ!
また街をさまよい歩こうかと思った矢先、ホステルのカフェがまだ営業していることがわかった。
僕は吸い込まれるようにして中に入った。簡素なビジネスライクなカウンター。カフェは二階にあり、そこに行ってもスタッフは僕のことなんて目にもくれなかった。まぁ、きっとバックパッカーが泊まるようなホステルなんだろうね。うんと高いんだろうけど。
カフェはとても広く暖房も効いていた。僕は5ドルでコーヒーとマフィンのセットを注文するとコンセントで充電しながら、テーブルで絵を描いた。Wi-Fiは一日1時間の制限付きだったがあるだけマシだろう。
というか、そのカフェの居心地は最高だった。
ホステルの一部として機能しているので夜遅くまでラウンジが解放されているのだ。カフェの横にはビリヤード台やバーがあるお洒落なスペースがあり、時折ビリヤードに夢中雨になっている客たちの声が聞こえた。
23時になると僕はそのカフェを出た。レセプションには人がおらず全くのスルー。もしかしてカフェに泊まれるんじゃないかって思ったくらいだよ。
1.5キロほどを歩いて大きな公園の草むらにテントを張った。
街でどのように時間を過ごすか。
街は自分の部屋なんだ。どこに何があるのかを把握するっていう意味では今日という一日中は有意義だったろうね。
もし君がウェリントンで都市型キャンプをするんなら、僕がとっておきの情報を教えてあげるよ?
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