世界一周255日目(3/10)
寝袋の中から
クリーム色をした東の空を見ていた。
思わずiPhoneの中に入っている
Caravanの「Love & Free World」を再生した。
「東の空を太陽が鮮やかに染上げたら」
という唄いだしだ。
時間に関係なく、
太陽が地平線と擦れてできる
温かい光を見ると、
僕はこの曲をいつも思い出す。
一睡もできなかった
と言っていいほど眠れなかった。
1分か2分そこら意識が遠のいて、
寒さで目が覚める。
そんなふうにして夜を過ごしたが、
不思議と眠たくはなかった。
朝6時になると僕は寝袋から這い出して、
寝袋やブルーシートをたたんで撤収作業をした。
近隣の家からおっちゃん(旦那)が機嫌良く
「グッモーニン!」
と大声で挨拶をしてきた。
昨日ホームステイの可能性を
におわせたおばさん(嫁)は、
僕の前を「どう?眠れた?」と言って
通り過ぎていった。
そして大きな声で
30メートル離れた場所に要る旦那さんと
口論するようにしてわめいていた。
なんだ…。
そういうこれが日常の
ご家庭だったのか。
もしかしたたらホームステイできたかもな…。
昨日は脱出不可能に思われた
この集落だったが、近所の子供に
道を尋ねたりして
なんとか人が歩く道まで出てくることができた。
少し進むと息をのんだ。
「なんだこれ…」
シッキムでよく見かける
仏教の言葉がかかれた
赤、青、黄色や白の長い旗が
低くたちこめた靄の中に何本も立っている。
それが幻想的に見えた。
近くまで行き、そこが昨日山の中から
見たケチャプリ・レイク
だということに気がついた。
それほど大きくない湖だ。
別の時間帯に見たら
ここまでの印象は受けなかっただろう。
湖周辺に生える
クッションのような草を踏み分け、
水面まで近づいた。
山の上からここへ
夕日や朝日が反射するのを見られたら、
格別の味わいだったろうな。
でも、僕の心はもう
別の方向へと向かっていた。
手に入れたツーリスト向けのマップには
ここからヨクサムという町までの
トレッキング・ルートが記されていた。
シッキムにある他のルートに比べると
そこまで長くない距離だ。
出発点だった場所へと戻って来た。
昨日訪れた売店でチャイをすすった。
乾燥ヌードルを袋の中で砕いたあと、
粉末の薬味を入れシェイクしたもの食べた。
10ルピー(16yen)のクッキーを
一袋買ってサブバッグに入れた。
よし!出発だ。
昼前に着ければいい。
気持ちを切り替え、僕は
ヨクサムまで続くトレッキング・ルートへと
入っていった。
今日もこんな感じの山道を登っていく。
「ヨクサム?
下の方へ下っていくんだよ」
開始早々、方向音痴っぷりを発揮!
集落で「ヨクサム?」と方向を確認して、
年配の欧米人のツーリスト2人と
ガイドを追い越した。
ツーリストがいるってことは
方向は間違いないな。
彼らを追い越してしまうと、
『抜かれたくない』
と競争心が燃やされ、
ゴツゴツした地面を飛ばして
山を下っていった。
山の切れ目に滝が流れていた。
橋を渡り、今度は急な山道を登る。
牛やヤギや人とすれ違い、
汗まみれの顔で
「ナマステ!」
と挨拶をかわした。
流れるわき水で顔を洗い、口に含んだ。
「こっちがヨクサムよ」と
窓から顔だけ出した女のコが教えてくれた。
そして分かれ道が3つ。
ケチャプリ・レイクに対して
東にすすめばいいんだからー…。
遠くの方に車道が見えた。
あれに出ればいいのかな?
だが、遠くに見えた車道には
一向に出られる気配がない。
むしろさっきまで開けていた山道が
再び山奥へと続いている。
石畳のように人為的に
石が連なって置かれた地面が、
そこが道であることを示している。
一軒の民家で「ヨクサム?」と
道を訊いた時、返ってきた答えは
「あっち!」
(進行方向と逆を指差して)
トレッキングとは
自ら迷うことと見たり!
僕は宮本武蔵か何かのように悟った。
来た道を引き返し、
途中で山を下る違う道へと入っていった。
『山で遭難?
とりあえず山を下っていけば
麓につくっしょー?』
かつての僕は
山で遭難した人のニュースを見て思っていた。
だが、そうじゃないんだ!あの時の僕よ!
行きたい方向に行けないんだよぅっ!
今日の朝、人に訊いたら
「ヨクサムへは2時間くらいで着くよ」
と言っていたけど、
もう既に2時間が経過した。
迷っていることは間違いない…!!!
どローカルな急斜を下っていき、
自分の下っている道の先に車道が見えた時、
頭に浮かんだ一言は「助かった!!!」だった(笑)。
近くにいた人に
進行方向を確認し、
僕は車道を歩いていった。
こうしてゆっくり歩くと、
今自分のいる場所が
いかに自然に囲まれているかがわかる。
あぁ、なんか、山を歩くって
こういうことなのかなぁ?
ゆるやかに、
そして確実に
道は傾斜へと変わっていった。
ど、どこがヨクサムなんだ?
そして道路脇に
何の前触れもなく現れる
「YUKSOM 9km」
の文字。
1kmがいかに長いかが分かる。
日本の住み慣れた町の1kmと
自分が今どの辺りを歩いているのか
分からない山道(しかも上り坂)の
1kmとでは感じ方は全く異なる。
坂道の先を見ないように視線を落として、
はぁはぁ息をしながら歩いた。
汗はしたたり、目の脇で
長い髪が束になっている。
時々すれ違う人々と
挨拶を交わす顔は苦笑いになっていた。
残り6kmにさしかかった時、
僕の横に車が止まった。
おっちゃんは
僕の心を見透かすかのように一言。
「乗ってくかい?」
そ、その一言を待っていたんだ…!!!!(号泣)
「ゲイジンでも君の姿見たよ」
という心優しいおっちゃんは、
僕に安い宿まで教えてくれた。
宿でチャイを
オーダーし、
湿気を吸った寝袋と
ブルーシートを日光に当てて乾かした。
スタッフが間違えて案内した部屋で
ホットシャワーを浴び
(その後移された安い部屋には
水しか出ない蛇口とトイレだけだった)、
服を洗濯し、日の出ているうちに干した。
その後、ヨクサムの町を散策した。
バケツリレーでが盛んです。
宿に戻り他のツーリストたちと
ギターを通してお喋りをした。
オランダから来たマダムたちは
僕の歌を聴いて「いいわね♪」
と褒めてくれた。
ようやく
僕と一緒に7ヶ月旅をしてきた
「Hotel NewHampshire」を読み終えた。
450ページからなる長編。
ジョン・アーヴィングが書いた小説だ。
iPhoneのアプリ「Today is」に綴っている
行動記録を見ると、去年の8月2日に
この本を中国、平遥(ピンヤオ)の
ユースホステルで埃をかぶっているのを
見つけて持って来たようだ。
そこから毎日読んできたわけじゃない。
ほんの数ページしか読まない時もあれば、
全く読まない期間が続いたこともあった。
それに英語の本だから、
理解できていない箇所も多かった。
ただ、この物語に壮大なドラマを感じた。
登場人物たちが次々に現れては、
舞台が狭くならないよう姿を消していき、
時間は読者を置いていってしまうくらいに
あっという間に流れていった。
このストーリーは家族の物語であり、
主人公の成長を描き、愛を読者に向けて語っている。
そして間違いなくいえることは
作者は「熊」が好きなんだということだ。
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昔の有名な作家が好きです。
「あっ、それなんか聞いたことある!」っていうのと、
なんかカッコよく見えるから笑。
すぐに読み切れる短編が読みたいんだけど(O.ヘンリとかね)
なかなか見つからないんだよね。中古とかではさ。
手頃な大きささ、厚さで、
サブバックなんかに無造作に突っ込めることができて、
読みたい時にすぐに読める。
そんな本がまた欲しいと思っています。
今までありがとう。ホテル・ニューハンプシャー。
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