世界一周357日目(6/20)
僕を起こしたのは
太陽じゃない。
バスターミナルの職員さんだった。
「そろそろ起きなさい」とでも言うように
7時かっきしに体を揺すられた。それも優しく。
ここはトルコ、カイセリという街のバスターミナル。
どうやらここで寝ても問題はなかったようだ。
僕の他にも何人かベンチで寝ていた人がいたから。
とりあえず寝ていたベンチに座り直し、
ターミナルのフリーのWi-Fiをいじる。
寝袋は使っていない。寝た格好は足下からKEENのサンダル。
左ひざに穴の空いたヌーディー・ジーンズ、
上はTシャツ、パタゴニアのアウター。
少し寒かったけど、どちらかと言えばよく寝られた方だ。
いつものようにFacebookをのぞく。
これは僕にとっての暇つぶしみたいなもんだ。
日本語で書かれた読み物的な物を求めてしまう。
別に友達がどうしているかなんて、
心の底から知りたいというわけでもない(気になる時はあるけど)。
時に興味のあるニュースを誰かがシェアしたり、
面白いページを発見する時だってある。
旅先で見るFacebookは僕にとっての
新聞の4コマのようなものなんだと思う。
まぁ、日本人問わず世界中で利用されてるSNSだ。
時にはコミュニケーションに役立つときもある。
さてー、どうしようか?
昨日の予定だったら、手前の町に滞在して、
今日アヴァノスを目指すつもりだった。
運良く最後の最後で駆け込みのヒッチハイクをさせてもらい、
ここまで来たわけだけれど、
このままカイセリを素通りしてもいいのだろうか?
昨日この街を見ただけでもけっこう大きな街
だということが分かった。
遠くの方に遊園地らしきものも見えたくらいだ。
もしかして稼げるんじゃね??!!
捕らぬ狸の皮算用。
トラブゾンで稼いだお金が尽きてしまったんだ。
ここから観光地のカッパドキアに入るわけだし、
ちょっとお金があったら嬉しい!
よーし!行ってみよう!見てみよう!
ダメだったらヒッチハイクでアヴァノスへ行こう!
ここまでの決断をするのに目覚めてから1時間が経過した。
その間ベンチでずっとウダウダしていたわけだ…。
マップアプリで街の全貌を確認する。
とりあえず中心地に行ってみよう。
そしてカイセリの街にはトラムが走っていることが分かった。
バスターミナル付近の駅から一直線に街の中心地まで続いている。
トラムって路面電車のことだろう?
なんだかワクワクするじゃないか!
フル装備で最寄りのトラム乗り場を目指した。
意外に遠い…。
朝から良い運動だ。うっすらと汗をかく。
改札で係員のお兄さんにチケットは
どこで買うんですかとた尋ねた。
みたところ券売機のようなものはない。
「ここではチケットは買えないよ。
マーケットで買ってきてくれ」
はっ???
トラム乗り場で買えないってどういうことだよ?
なんでマーケットでチケット買わなくちゃいけないんだ??!!
乗り場に来る前にバスで中心地を目指そうと思った。
その時バス停にいたおっちゃんが、
トラムのカードの買い方を教えてくれたのだがー…
地元の人は磁気カードにチャージしているので
日本の駅の改札みたいに「ピッ」とゲートを
やすやす通り抜けている。
そこで立ち尽くすバックパッカー。
てかマーケットって何よ??
あ~、なんか街の中心行くのめんどくさくなってきたな…。
もうバスターミナル帰ろうかな???
トラムに乗車拒否されたように感じた僕は
心が折れる寸前だった。
これで「カードなんてありません」って言われたら
今日はもうアヴァノスへ行ってしまおう。
そう決めて小さな売店へと足を運んだ。
トルコでおなじみの小さな売店。
「あの~、トラム、チケット?」
ジェスチャーを交えておっちゃんい訊く。
「ああ、あるよ2リラだ」
トルコにしては高いんだなぁ?
これって往復券?
そう尋ねるとおっちゃんは「そうだ」と頷いた。
手に入れたのは紙でできた磁気カードだった。
いずれにせよ!これでトラムに乗れんぞ!
なんかRPGみたいだな!これで次に進める!
たかだかトラムのチケットにテンションが上がる。
マップアプリを確認しながら街の中心地を目指した。
トラムは駅名も書いてなければ車内アナウンスもなかった。
みんなどこで降りるのか分かっているんだろう。
中心地と思われる駅で僕は降りた。
朝の時間ということもあって人通りはそこまでない。
果たしてここに残るという選択が正しかったのか不安になる。
近くのスーパーでとりあえずトイレを借りた。
用を足した後、誰もいない男子トイレで
ささっとTシャツを脱ぎすすいた。
入って来たおっちゃんが僕の姿を見て
「ごめっ!間違えたっっっ!」
と顔に手をやってトイレの外に出て行ったがすぐに
「あれ?ここ男子トイレで間違ってないよな?」
みたいな顔をして戻って来た。
僕も「いやぁ~…最近暑いっすね~」
みたいな空気感を演出する。
そこから笑いに変えていけるか
高度な演技力が求められるシチュエーションだった。
僕の髪は長い。
今は後ろで二つ折りみたいにして束ねている。
きっとおっちゃんは一瞬ここが
女子トイレだと勘違いしたのだろう。
てか、女性トイレで女の人が
裸になることなんてあるのだろうか?
すすいで絞って、濡れたままのTシャツをそのまま着る。
なんだかんだ着たままで過ごせば
2~3時間もすれば乾いてしまう。
キャンプ生活の知恵だ。
テントが3千円くらいで売ってた。
買おうか本気で迷ったよ。
そのまま僕は近くのファスト・フード店で
トーストサンドみたいなものと
チャイを注文してテーブルについた。
コンセントの差し込み口はあったのだが、
電気は通っていなかった。
テーブルの上にパソコンを広げて日記を書く。
Wi-Fiはここには飛んでいなかった。
窓の外に見える風景。
出歩く人の数はさっきよりも多くなってはいたが、
まばらでバスキングなんてできそうになかった。
時間はどんどん過ぎて行く。
ここからアヴァノスへはもう行きたくない。
だが、ここに滞在することを決めてしまったことが
どこか間違った選択のように感じた。
いいバスキングの場所を探すために14時にはお店を出た。
最初に目をつけてのは
地下道だった。
その入り口には人がいい感じで流れていた。
チューニングをしてEを鳴らした瞬間
登場するセキュリティ。
笑顔で頷く。僕もそれに習う。
オーケー、オーケー。次々!
まずは水分補給だ。
地下通路を抜け、地上に出た僕は心が踊った。
そこはバザールの入り口だったのだ。
そこはまさに路上パフォーマンスをするのに
うってつけの環境だった。
近くの水飲み場でペットボトル日本に水を補給した後、
ニヤニヤしながらギターを構える。
この時間帯だと、うるさいと苦情がくることは
なんとなく予想できる。
こういう時にキャラバンさんの曲はありがたい。
自作の曲は声を張り上げるものがほとんどだから。
開始数分でパラパラと入るコイン。
来たよ!来た来た!ここは稼げるまちー、
出現する警察。
笑顔でここでの演奏はやめてねと言う。
「ですよねー!」と照れ笑いして
そそくさと片付ける僕。
僕がバックパックを背負うまで
ずっと見張っているのはー、けっこうプレッシャーです。
そんなすぐに去りますってば!
バザールの入り口がダメなら!
とやってきたのはいい感じのアーケド。
日本の商店街みたいだ。
だけどこっちの方が断然活気がある。
ウズウズしながらケースを構える僕。
開始数分で再びストップがかかる。
ってどこなら唄っていいんすか!
「私のところへ来なさいよ」
声をかけてくれたジュエリーショップのおばちゃんは
僕を店内で唄わせてくれた。
狭い室内。声の大きさが重要だ。
うるさくなく。それでいて聴かせるような唄を唄わないと!
5人も人がいれば窮屈に感じる狭いスペースで
「上を向いて歩こう」を唄うとおばちゃんはレスポンスをくれた。
ここで調子に乗って立て続けに唄えば
『えっ??!!まだコイツ唄うん?』
と思われてしまうことは請け合いだ!
空気を読んで「あざっした~♪」とギターをケースにしまう。
するとおばちゃんは僕を別のお店へと連れて行ってくれた。
だが、次に連れて行ってもらった
ジュエリー屋のおっちゃんはどうも突然の来客を
心よくおもっていなかったようだ。
僕もその感じがすぐに分かった。
「いやいや!聴いてみなさんな!」
と僕を買ってくれているおばちゃん。
おっちゃんは最初だけ聴いていたが、
すぐに僕を追い出す様な仕草で手振った。
「いきなしお邪魔してすんませんっした~♪」と
笑顔で退散する。自分でも感心するくらいの去り方だった。
こういう場の空気を読む能力が日本人には備わっている。
お店を出ると僕に英語で声をかけてきた男の人がいた。
名をブラック。たぶんあだ名だろう。
僕が漫画家であることを話すと、
「知り合いがペインターなんだ。作品を見に来ないか?」
とお誘いを受けた。
「トキョー、オオサカ、チバ、
私ニホンニスンデタ。ミチコサン、トモダチ」
時々、そんな日本語のワードが出て来る。
バザールを抜け案内されたのがー、
カーペット屋だった。
え!!??ペインターは?
「まぁまぁ座りなさんなって」と言われ
アップルティーをごちそうになる。
お店のガキちょたちはやってきたアジア人を
たいそう面白がっていた。
うーん、まぁ、カーペっト屋に
これただけでもよしとしよう。
一応値段も訊いてみたのだが、
僕には手の出せないものばかりだった。
「じゃあいくらなら買うんだ?」
「いくらって言われても、
お金持ってないですよ。
僕がどこに泊まっているか知ってます?
バスターミナルですよ?
そのくらいお金ないんです」
ここぞとばかりキャンプの写真を見せつける僕。
効果はてきめんだ。
ブラックさんも
僕がお金がないことを理解したようだ。
「よし!じゃあもっと
安いキリムが売っているところに
連れて行ってあげるよ。
別に買う必要はないんだよ?」
僕もヒマだし、涼しい時間になるまでの
時間消化としてついていってみることに。
その後2軒キリムを扱うお店を案内してもらった。
ブラックさんは卸売りのキリム屋さんにもつれていってくれた。
買う買わない、値段が適正か
マージンが含まれるかは度外視で
純粋ににキリムを扱うお店で
商品を見させてもらい、ウキウキする。
ブラックさんは「どうだ?これは安いぞ!」
と勧めてくるものの、そこまでしつこくはなかった。
いくつか欲しくなる様なキリムもあった。
だがすぐに手を出さないことが
雑貨の買い付けでは重要だ。
相棒のまおくんに写真を送って相談することにしよう。
その後は
何回か場所を代えて唄った。
やはり警察からストップがかかるのだが、
レスポンスもそれなりだった。
ショッピング通りは割と大きく、
いくつも路地があるので、
注意されて移動するの繰り返しで
何度も唄えそうだった。
聴いてくれたスマートフォンの
アクセサリーショップのお兄さんは
僕にコーラとケバブをごちそうしてもったり、
別のカーペット屋のおっちゃんにお店まで招待されたり。
(また「これはいいぞ!」と勧められたのも含めて)
他にも近くのブティック店のオーナーと仲良くなった。
オーナーと彼女の似顔絵を描くと、
彼女さんはお返しに僕の似顔絵を描いてプレゼントしてくれた。
これが僕らしい…
そして僕はトルコのバスカーに出会った。
彼らはギターとバイオリンという
面白い組み合わせだった。
生のバイオリンの音に思わず顔がニヤけてしまう。
そのくらい綺麗な音色だった。
「いつも夕方過ぎにここで演奏するんだよ」
とブティック店のオーナーは僕にそう教えてくれた。
僕が小銭を彼らのギターに入れると、
バスカー2人組は僕にセッションしようよと誘った。
Stand by meが夕暮れの街に響く。
たまたま立ち寄ったカイセリという街。
予想もしていなかった素敵な出会いがここにはあった。
僕は漫画家だけど、ギターから得る出会いの方が断然多い。
そうだよな。そうだよ。だから僕は路上で唄うんだ。
植え込みに敷いてあるグリーンのマットが今日の寝床。
明日はアヴァノスへ行こう。
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帰りのトラムに乗っていると、
お兄さんが(どこの国かはしらないけど)
僕に英語で時間を尋ねました。
「え?20:50分だよ」
「あぁ、そうか…」
ちょっとソワソワした感じのお兄さん。
僕と同じ駅で降りるそうで、イズミルへ向かうらしい。
「なんで時計持ってないの?」
「ここにトルコに来たばかりで時差を調整してなかったんだよ」
「スマートフォンは?」
「電池が切れちゃってね」
「え?バスの時間って何時なの?」
「21:00」
「あ、ゴメン、僕の時計5分遅れてたわ…」
「バスに荷物預けちゃったんだよね…」
「だ、大丈夫だよ。フットボールにもロスタイムがあるから」
お兄さんがバスに乗れたかどうかは分かりません。
ただ、ターミナルお泊まり組にお兄さんの姿は見えなかったので、
きっとバスに乗れたのでしょう。
そんな一日の終わりでした。
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