世界一周358日目(6/21)
目覚めたのは
植え込みにあるグリーンのマットの上。
7時にはバスターミナルの職員さんに
モーニング・コールをしてもらった。

いや、二度寝したら起こされたんだけどね。
ターミナルの職員のお兄さんたちが、
ここに寝泊まりしてるアジア人を見てフレンドリーに絡んで来た。
「ジャッキー・チェン??」
「ホワタァ~!」
「それなんだ???(→ギターね)」
目覚めてから15分も経っていない。
頭が全然回転しないのが分かる。
それでもエンターテイナナー性を発揮して、
お兄さんたちの好奇心を満たしてやった。
「どこに行くんだ?」
「アヴァノスだよ」
「アヴァノスか。15リラで行けるぞ」
なに?思っていたより安いじゃないか!700円くらい。
ここまでヒッチハイクできたから、
今日も同じようにして行こうかなと考えていたけど、
バスにしちまおう。僕はそのまますぐにチケット買った。

次の目的地はやっとこさカッパドキアだ。
や、その一歩手前かな?
トルコにある誰でも知っている観光地。
エリアの名前だなんて旅に出てから知った。
カッパドキアとは観光名所の名前でもなければ
町の名前でもないようだ。
僕はてっきり、あの変な形をした
岩の名前かなんかだと思ってたよ。
バスが出発するまで1時間半あったので
僕は1リラ(48yen)のチャイにたっぷりと角砂糖を入れて飲んだ。
血糖値が上がって脳が正常に働くのが分かった。

ああ!なんでったって自撮りの最中に入って来るんだようっ!
バスの中ではthe HIATUSの
「Keeper Of The Flame」を聴いた。
結成当時から聴いているけど、
今回のアルバムはどこか水々しさがある。
それがバスの外のトルコの景色とあった。
そうだ。僕は世界を旅しているんだ…。
当たり前なんだけど、そんなことをしみじみ思った。
たかだか7ドル。
一時間半程度の距離の移動だったが、
バスのおもてなしっぷりには驚いた。
最初にお菓子と水が配られ、
コーヒーまでももらえたのだから!
「ここがアヴァノスだよ」
と添乗員のお兄さんに教えてもらう。
降りた場所は観光地というよりかは
のどかなトルコの風景だった。



てかアヒルおるっ!!!
アヴァノスは
陶器で有名。

雑貨の情報収集をしていたらそんな記事を目にした。
相棒のまおと企画している「旅する雑貨屋”Drift”」。
これはビジネスじゃないし、遊びの域の企画だ。
日本の誰かにプレゼントをするように
世界の雑貨を届けたい。
そりゃ僕だって日本でフリーターやって
稼いだお金を使って仕入れるわけだから、
ちょっとはレスポンスが欲しいけどね。
それにお金を出して買った方が大事にするでしょ?
何に対してお金を払うかは
その人の雑貨に対する向き合い方だからね。
ビジネスじゃないけど、値段をつけて売るつもりだ。
旅にテーマがあることはいいことだと思う。
行動にメリハリができる。
ドリフトがなかったらアヴァノスに
足を運ぶことなんてなかっただろうな。
マップアプリを頼りに町の中心地へと向かう。
アヴァノスはそこまで大きくない。
それでいてマクドナルドの看板が見えた時には
ちょっと驚いた。こんなところにも出店しているのかって。
陶器を扱う雑貨屋さんはすぐに見つかった。

中で荷物を置き、
どんな物が売られているのか見させてもらう。
小さな小物入れから、しっかりと塗装されたもの、
ヒッタイト柄と呼ばれるデザインの描かれたお皿まで。
値段の書かれたスールが品物の裏に貼ってあったが、
お店のおじちゃんは「ハーフプライス」と言った。
そこまで売れてないのかもしれないな…。
確かに割れ物だもんね。
僕も仕入れるとしたら小さいのしか買えないな。

一件目のお店は何も買わずにあとにした。
何軒か総合して値段なんかも比較しないとね。
同じ品質のものでもお店によって値段が違うことだってある。
僕の買える範囲の雑貨で、
それでいて品質のいいものを仕入れたい。
二軒目は町外れにあった。
さっき入ったお店の比べると、品揃えのは少ない。

「ヘ~…」とか「フ~ン…」と感心した様子で
店内を見ているとお店の人は
僕に焼き終わった陶器を置く「蔵」のような場所へ
案内してくれた。
お店の少し奥に入っただけなのに、空気がひんやりとした。
蔵の雰囲気はどこか僕の冒険心を揺さぶった。
いいサービスだ。

お店の中に置かれた小さな小皿に目を留めた。
底には邪視や災いから守ってくれる
「青い目」が書かれている。
ガラス製のナザール・ボンジュはしょっちゅう見かけるけどね。
小皿の裏には手描きで作った人の署名がしてあった。
「Hand made M.D」と書かれている。

「あなたがM.Dさん?」
ちょっと照れたように頷くお兄さん。
いいお店だな。よし。ここで仕入れよう。
僕はピンク・レッド・ブルーのポップな色の三色の小皿を仕入れた。
ひとつひとつは安かったが、
冗談混じりに「3つ買うんだからディスカウントしてよ」
と言ったが、すぐに冗談だよとお金を払った。

M.Dさんと少し立ち話をする。
そこまで英語を話さないMDさんは
お店のパソコンでGoogle翻訳をかけて
僕とコミュニケーションをとった。
どういう流れだったかは覚えていないがお礼の気持ち、
良い物を売ってくれてありがとうの
意味もあったんだと思う。僕は店内でギターを弾いた。
最近よく唄っているのはグルジアで作った曲だ。
徐々に歌詞が決まってきた。

唄い終わるとMDさんは
「おれと一緒にお客さんを呼び込もう!」
みたいな翻訳をつけて僕に見せた。
へへへ♪なんだかそういうのっていい。
お店には、たぶんお手伝いの子供なんだろうか?
7歳くらの男の子がいた。
さっき僕が冗談混じりに言った
ディスカウントのお釣りを差し出す。
いや、いいって。MDさんは大丈夫だよと言う風に
コインを僕に渡してくれた。
MDさんは僕に「ろくろ」を見せてくれた。
実際に粘度で形を作るところを見せてくれるのだろうか?
「それじゃここに座って」
「え?僕がやるの?」
な、なにそのサービス!
サービス?心遣い?おもてなし???
さっきの地下倉庫といい、ろくろ体験といい、
MDさんのお店に僕はすっかりやられてしまった。
てかムズイ!
テレビで見ていると、
『あんなんちょろいっしょー!』と簡単に見てたが、
すぐに形がくずれてしまう。
実際にろくろを回して粘度の形を作ってみると
その難しさがよくわかった。
これでお皿を作るのは相当な練習量が必要だろう。
そして手の繊細な動きが求められる。
リアルな体験が僕に色々なことを教えてくれた。

無理っしょー…!!!
MDさんはお店の外でレモネードをごちそうしてくれた。
いやはや、なんでたってそこまで
もてなしてくれるんだろう?
これじゃもうけ出てないんじゃないか?
と思わずにいられない。
レモネードを飲みながらギターを弾く。
そうこうしていると
トルコ人の家族連れがお店にやってきた。
待ってましたとばかりに接客するMDさん。

売れるといいな。
お店の外から様子をうかがっていると、
男の子がろくろに挑戦してた。
あ~、あれねけっこうムズいんだよ。
ほんの少しのアドバイスで
みるみる形になっていく粘土。なんで!!!??

「できた〜♪」
「トルコの人間は誰だってできるのさ!」
とお父さんが自慢げに言う。や、やるなっ!
MDさんのお店が好きになった僕は
チップボックスにさっき渡されたコインをいれた。
「いいサービスだったよ!」
と電球をつまむようなトルコのグッド・サインを作る。
MDさんは僕を名残惜しんで見送ってくれた。
そのまま近くのモスクへトイレを借りに行く。
それにしてもいい天気だ。


トイレには足を洗う場所もあり、
そこでジーンズの洗濯もしておいた。
モスクの屋上でジーンズを干した。
木陰でまどろんでいると近所の子供たちがやって来た。
最初は二人だったのが、四人になり
いつの間にかたくさんのガキんちょたちが
モスクではしゃぎまわっている。



「シミシミ~!」と教えてやった名前を
口にするトルコの子供たち。
僕の長男パワーがここでも炸裂するなんて笑。
ジーンズがある程度乾くと、僕はモスクをあとにした。
子供たちはモスクに礼拝にきていたおじいちゃんに
「騒ぐな!」と怒られてどこかへ散って行った。
外に出ると胡散臭そうなお兄さんが、
さっきのMDさんのとこで弾いていた
ギターを聴いていたみたいで
「おれの店に来ないか?アップルティーも出すぞ?」
と誘ってくれた。
まぁ、行ってもいいよ?とお兄さんについていく。
お兄さんの名前はスレマンさんと言った。
ってなんだここ?

案内されたのはとてもお洒落な隠れがのようなスペース。
そこでアップルティーをいただき、静かに一曲唄い上げる。
あまりの居心地のよさにそこで昼寝をする。
ここは一体なんなんだ?ゲストハウスかなぁ?
時折ツーリストが前を横切って行くのが見えた。
昼寝から目覚めるとスレマンさんは
僕をお店へと案内してくれた。
ここは陶器を扱うお店だった。


そこはまさに雑貨の宝庫。
しっかりとした品質の物が綺麗に
ディスプレイされている。ほ、欲しいっっ!!!
「いつもならこのプライスだが、今回は特別だよ?」
とお決まりの「特別」攻撃で
僕を落としにかかるスレマン。
値段はけっして安くはない。
でも良い物だということは僕にも分かる。
「に、二個ならいくら?」
「ふ~む。しょうがないな。特別だよ?
この価格だ。他の人には言わないでくれよな?」
ボられる危険性などが頭をよぎったが、
カウンターに貼られたTripAdviserのマークと
お店にやってくる客層から判断して、
僕は購買へと踏み切った。
仕入れたのはトルコに起源のあるチューリップが
描かれた赤と青のお皿。
しっかりバブル・シート(プチプチくん)で包装してくれる。
いい、仕入れができたぞ!
バックパックで割れやしないか心配だけど。

あっ、ニコラス・ケイジだ。


さっきの女のコだ。
ストーリーを感じずにはいられないな笑。
「今日はどこに泊まるんだ?」

お店の外でスレマンが訊いてきた。
「え?ここでキャンプしようかなって。
だってのどかだし」
「川沿いは夜に鳴ると酔っぱらったヤツらが出るから、
ギョレメに行った方がいい。
キャンプする場所もあるし、フリーシャワーだぞ」
そこでしばらくどうしたもんかと考えていた。
だってアヴァノスの町をもう去ってしまうのは
もったいない気がするからだ。
スレマンたちにはギョレメに行くよと言って別れた。
だが、ギョレメまでの道の直前で僕は思いなおした。
やっぱり一日滞在してみようと。

腹ごしらえを済ませた。
ここで一番美味いケバブを食べた。


おっちゃんのキャラが最高だ。
アヴァノスを流れる川。夕日を反射して綺麗だった。

トルコ人の観光客もここには集まるようだ。
川沿いのベンチはにぎわっていた。
こ、これは…!!!
橋の上でギターを構えた。
シチュエーションはばっちしだったけど、

場所が悪かった。
端はひっきりなしにユラユラ揺れて、
僕はただの邪魔者でしかない。
一曲唄っただけで僕はここを去ることに決めた。
ギョレメまではヒッチハイクで向かった。
お兄さんに乗せてもらい、中心地で降ろしてもらう。
観光客はギョレメを起点に2~3日かけて周辺をまわるらしい。
僕はついにカッパドキアにやってきたのだ。

ギョレメの町の中にいくつも
タケノコのような尖った岩が生えており、
中にはその内部に泊まれるようなホテルもあった。
その観光地っぷりに僕は驚いた。
ここまで観光地らしい場所は久しぶりなだ。

閉店までカフェでWi-Fiにありつき、
1リラの公衆トイレで髪を洗って歯磨きをした。
人気の無い岩の上によじのぼる。
ブルーシートを広げて寝袋を敷いた。
カッパドキアは寒かった。
薄手の寝袋の表面が冷えきってしまっている。
ブルーシートで体を包むようにして僕は眠りに就いた。
空にはライトの光の線が三本、
打ち寄せる波のように動いていた。

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★世界一周ブログランキングに参戦しております。
僕がアヴァノスで買った雑貨は次は誰が手にするんだろう?
そう考えるとワクワクします。
「story drift to you.」そんなテーマで企画してます。
旅する雑貨屋ドリフト。
今日も僕は世界をドリフト。雑貨たちは作った人、
お店の人、旅する僕、日本にいる相棒、
そしていつの日かその雑貨を手にとってくれる人へドリフトしていきます。
雑貨にこめられたストーリー。
僕はそれも語りたいのです。
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