「チェコでフルボッコ」

世界一周421日目(8/23)

 

寒っっ!!!!

やべぇ、マジで寒い。
こりゃエマージェンシーだ。

 

 

シャレにならないほど寒かった。

こういう時のために
エマージェンシー・シート(スペース・ブランケット)は
バックパックのふたの部分にたたんでいれてある。

人間は体温が低下すると体力が奪われてしまうらしい。

災害時にそうした状況から身を守るために、
そして、持ち運びが便利なように
このシートは開発された。

銀紙のようにシャクシャクする
シートを体に巻くと、熱を逃さない。

一度広げると畳むのが
少しめんどくさいのが玉にキズだが。

 

 

僕はこの旅の中でこのシートを何度か使って来た。

最後に使ったのはグルジア、
ウシュグリで外でキャンプしてたら雨に打たれて、
復讐の塔(そういう塔があるのだ)の中に
避難した時だったけな笑。

 

 

 

ええっとエマージェンシートっとぉ…。

バックパックからシートを取り出そうと、
寝袋に入ったまま状態をひねるとー

 

 

 

 

 

バックパックがない

 

 

え????

 

 

え~~~~っと…

まてまてまてまてまて待て待て待て待てMATEMATEMATEMATE……

 

 

ってギターもない!

雑貨の入った
TESCOのバッグもない!!!!

 

 

ってウソぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお~~~~~~~~っっっ!!!!

 

 

寒さなんてそっちのけで、
寝袋からガバっと飛び出し、
自分の寝ていた場所を見た。

 

 

自分の寝ていたベンチ。
マット代わりに敷いた段ボール。
さっきまで使っていた寝袋。
枕代わりのサブバッグ。

足下には使い込んで
ボロッボロのKEENのサンダルが
申し訳程度に置いていあるだけだった。

 

 

 

バックパックとギターと雑貨が消えた。

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「いや!マジ!うそっしょ~~~!!!!」

とか言いながら、
しっかりと自分の寝床を写真に撮っておく。
事情を説明するためだ。

 

 

ってかいつ盗られたんだ???

ここで寝たのは昨日の24時。今4時。

何度か人の気配を感じて
「起きてるぞ!」とアピールするために
わざとモゾモゾ寝返りを打ったりした。
でも、寝袋から顔を出してはいない。

23kgもある重いバックパックだ。
持って行こうと動かせばその時に気づく。

 

 

ってか
おれが寝落ちしてる時だ

辺りを見渡したが、誰もいない。

 

 

『と、とりあえず警察!』

ポケットからiPhoneを取り出し
マップアプリで「police」と検索したが、
どこにも出て来ない!クッソ!

とりあえず町の中心地へ戻る途中に、
こんな夜中にも女のコたちは歩いているもんだ。

英語で事情を説明して、
警察署の場所を訊いたら
超怪訝な顔で「すぐそこよ」と言った。

「あ、ありがと!」とそっちに走っていっても、
どこにあるのさ警察署?

 

 

もう藁にもすがる思いで
深夜営業のファストフード店に駆け込んだ。

警察を呼んで欲しいと言うと、
たぶんチェコ人じゃないお店のお兄さんは
僕のお願いをきいてくれた。

持ち物はサブバッグと寝袋と段ボール。間抜け過ぎる…。

20分で警察がやって来て、
僕を警察署まで連れて行ってくれた。

パスポートで身元を確認する。

 

 

 

すーはー、すーはー。

だ、大丈夫だ。

落ち着け。

このために保険も入ったんじゃないか。

とりあえずポリスレポートを
作成してくれるようにお願いする。

超絶めんどくさそうにする警察官たち。

おいおい…。大丈夫なのかよ???

 

 

 

英語の分からない警察たちは、
30分くらいでポリスレポートを仕上げた。

何がなくなったのか?
とか詳しい質問もなしだ。

 

 

そして出来上がった
ポリスレポートを僕に渡して警察は言う。

「もうさっさと帰んな」

えっ???
はっ???
これでおしまい??!!

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だって盗まれてからまだ
5時間しか経ってないだよ?!
もしかしたら見つかるかもしれないじゃないか!

困った顔の警察は、
英語の喋れる別の警察を電話口に呼び出し、
そこで会話させられた。

僕は荷物が見つかったらすぐに連絡して欲しいと
メールアドレスを書き残して、
警察署から出て行くしか他無かった。

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もしかしたら
荷物が捨てられている
かもしれない。

早朝のチェスキー・ブジョヴィツェの町を
早歩きでさっきの公園まで戻る。

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路面バスはすでに動き出していた。

もしバックパックを持って乗られたらおしまいだ。

公園へと続く手前の建物の裏道。

見つけたのは、
相棒のまおからもらった
デッドベアのレックスくんだけだった。

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最近はずっとギターケースの中に入れていた。

犯人がここを通って
ギターケースの中身を確認したんだろう。

運良く落ちたかー、いらないから捨てたか。

 

 

それくらいしか
僕の手元に戻って来たものはなかった。

うなだれてマクドナルドへ行く。

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パスポートや現金は盗られていない。

枕狩りにしていたサブバッグの中には
貴重品が入っていたからだ。

パソコンや一眼レフも無事だ。
でもそれらを充電するケーブルや充電器がない。

 

 

バックパックに何があったのかを思い出す。

衣類、電子機器、写真のバックアップをしていたHD。
漫画の道具、原稿用紙、完成した漫画、洗面用具、
そしてトルコ以降に仕入れた雑貨ー。

あー、バックパックの中に
200ドル隠しておいたんだったぁ…。

 

 

てかギターもTESCOのバッグに入れてた
雑貨ももってくなんて、
どんだけまるっと持ってくんだよ!!!

そしてなんでおれは気づかなかったんだよ???

 

 

変換プラグとUSBコードはあったので、
iPhoneを充電することはできた。

一応、近況報告をFacebookに投稿する。

誰かに励まして欲しかった。

ただただ、今自分が置かれた状況が
ギャグ過ぎて信じられなかった。

もう完全ホームレスじゃんかよ…。

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散々バックパックがクソ重いってぶーたれてた。

だって、漫画の原稿用紙200枚も
持って旅してるヤツなんていないし、
それに雑貨も仕入れながた旅してたんだもの。

だけど、そんな自分がどこか誇らしかった。

『他の旅人にこんな重たい
バックパックは背負えまい』

そう自負していた。

そりゃ世の中には60kgもする
バックパック背負って旅する人もいる。
上には上がいるのは分かってるけど、
この重さが、僕の旅の実感だった。

そして今手元にあるものー

 

 

・サブバッグ

(貴重品/ノート/筆記用具)

・寝袋

・段ボール

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ってギャグか!!!

 

 

 

 

歯ブラシと歯磨き粉と石けんは買っておいた。

今持っている段ボールもよりも
大きいものを見つけたので持って来た。

ホームレスの気持ちが痛いほど分かった。

 

 

保険は精神的なセーフティネットでもあった。

お金がいくらか戻って来る。

それだけでどん底まで堕ちることはなかった。

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今のおれに何ができるだろうか?

漫画を描く道具も失ってしまった。

だけど、誰かが言った

「紙とペンさえあれば漫画が書ける」

と。

 

 

 

落ち込む反面、
どこか前向きになれる自分もいた。

 

 

『これは新しいスタートなんじゃないか?』

 

 

 

 

旅はー…

続けられる。

 

 

パスポートとiPhoneはある。

バイト時代に読んだ
「神林一馬の世界一周」のカンバヤシくんは
ロストバゲッジ後、サブバッグ、
ビニール袋で旅をしてきた。

最終的にはクレジットカードと
iPhoneしかもたずに帰国したんだっけ。

 

 

これは終わりじゃない。

そうしてマクドナルドの店内の
隅っこにあるテーブルで
僕はトルコで買った手帳に0.2ミリのペンで
絵を描き始めた。少し自虐的な絵を。

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15時頃にもう一度警察署へと行ってみた。

『もしかしたらバックパックが
見つかるかもしれない』

警察は「んなもんね~よ。さっさと帰んな」と
ヤル気ゼロだった。

 

 

僕は悟った。

もうバックパックは戻って来ないんだって。

もし、万が一にバックパックが見つかった場合、
日本大使館に送り、それを日本の清水家に
送ってくれるらしいが、そんなことは起こりっこない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうー、
プラハに行こう。

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ここにいたってなにも変わらないし、
ここでももう一晩野宿するなんて絶対嫌だ。

駅で169コロナ(831yen)の切符を買って、
僕はプラハ行きの電車へと乗り込んだー、

 

 

つもりだったが、
行き先を確認して乗り込んだ列車が
プラハ行きではなく、途中駅でバスに乗り換え、
次の駅でプラハ駅に乗るっていうー…

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もう!なんだんだよ!チェコ!

駅周辺で気づいたのは、
周りがバックパッカーだらけ
だってことだった。

この夏のヨーロッパでは、
そこらじゅうバックパックを背負った連中が
うじゃうじゃしている。
それがまるで僕への当てつけの様に。

誰かが85リットルのドイターの
バックパックを背負っていたところで
なんら不自然ではない。

 

 

 

 

プラハの駅は
首都と言うことだけあって、
綺麗で大きかった。

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駅の外のベンチで
道行くバックパッカーたちを見ながら
最後の巻きたばこを巻いた。

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どこへ行くかもー、何をするかも分からない。

ホームレスの気持ちがよく分かった。
だって今のおれがホームレスなんだ。

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自分をちょっとでも元気づけようと、
売店でスニッカーズを買い、
別のファストフード店で
3ドルちょっとするケバブを食べた。

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もうどうしたらいいのさ?

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とりあえず今のままじゃ
あまりにも物が無さ過ぎる。

着ている物はpatagoniaのパンツにアウター、
中にトルコでもらったLC WAIKIKIのTシャツ。

そして足下は余命幾ばくのKEENのサンダル。

アー…nudie jeans…。

 

 

 

僕はあてもなくプラハの町をぶらついた。

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この町にはバスカーが多いことがわかったが、
今の僕には全く関係のないところだ。

いつもは写真を撮る時にコインを入れるが、
今はそんな気さえ起こらなかった。

適当に写真を撮り、他人事のようにスルーした。

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バスケの試合なんてやっているんだぜ?

 

 

 

一応、プラハにはpatagoniaが
あることは知っていたので、
場所を確認しておいた。

閉店後でスタッフさんが帰るところだった。

「明日もやってるからおいで!」と
ウェルカムだったのに、少しだけ元気をもらった。

 

でもまた少し歩き出すと
不安な気持ちが込み上がってきた。
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中心地から少し2kmくらい離れた
マクドナルドで今日も作業した。

パソコンの充電ができないので、日記も書けなかった。

できるのはイラストを描いてFacebookに投稿したり、
ブログを読んだり、情報収集したり。

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一応iPhoneがあれば、
ほとんどのことはできるんだな。
バッテリーがかなり気になるところだけど。

 

 

 

 

23時になると、僕はマクドナルドを後にした。

今日は人気を避けて、中心地から
川を渡ったところにある山の上にあるような公園だ。

電灯の灯りが届かないベンチを見つけ、
そこにいつものように寝床を作った。

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