「この国は世界で一番ヒッチハイカーに優しい」

世界一周464日目(10/5)

 

 

アイルランド最後の目的地は
ベルファストという町だ。

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だが、今いる
ゴールウェイの町からは少し距離がある。

だから今日の目的地は
Sligo(スライゴ)という町に行くことにした。

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僕がアイルランドに立ち寄ったのは
イギリスに行きたかったから

「行きたかったから」と言っても
明確な理由はないんだけど。
まぁいいやそれはあとで書こう。

 

 

 

でも、僕はそのついでで寄ったような
アイルランドを旅できてよかったと思う。心から。

最初、ダブリンのゴチャゴチャした町並みと
深夜まで酔って騒ぐ若者たちにたじろいたけど、
それ以降はとてもいい旅ができた。

この国のどこを走っても辺りは自然に囲まれている。

何人ものドライバーさんたちが
アジア人の僕なんかを気軽に車に乗せてくれた。

アイルランドのヒッチハイクで
1時間以上待ったことはなかったかもしれない。

 

 

 

町から町へ、まるで吹き抜ける風のように僕は旅をした。

いくつもカフェあり、
町には観光客向けのお土産を売ったお店が一軒はあった。
あれはアイルランドの人は買わないだろうなってやつが。

安く食糧が買えるスーパーがあり、
ヒマそうに仕事をするおっちゃんがいて、
通りには地元の人々が歩いている。

どの町でもバーがあった。
夜になるとにぎわった。

ギネスビールを飲んで
気持ちよく酔っぱらってバーを出たあと、
寂れた町の人気のない路地を歩くのが好きだった。

 

 

 

どこの国でもそうだが、
ここでも人々がささやかな暮らしを営んでいた。

「豊かさ」
とは一体なんだろと、
今一度意識し始めたのも
この国に来てからかもしれない。

一見、アイルランドは何もない。
日本のように物質的には。

 

 

だけど、ここで暮らす人たちがいるのだ。

みんながそれぞれの人生を生きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

テントをたたんで、スーパーに向かうと
菓子パンとコーヒーを買った。

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スーパーにはWi-Fiが流れており、
そこで相棒とLINEをやったりして
まったり時間を過ごした。

11時になって、
だんだんと温かくなってきたので、
僕はヒッチハイクを開始することにした。

 

 

スライゴまでのハウィエイが続く道へと歩いて行く。

いつもヒッチハイクしている
ラウンドバウトが見当たらなかったので、
その先にまで歩いて行き、
車が止まれそうなスペースを見つけて親指を立てた。

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通り過ぎる車のほとんどが
なんらかのレスポンスをくれた。

 

 

ヒッチハイクをしだして20分。
メガネをかけたおっちゃんが止まってくれた。

「こんなところじゃ止まらないだろ?」

そう言ってくれた。

 

 

みんな同じ様な優しさを持っている。

それが嬉しかった。

おっちゃんは隣り村までしか
行かないとのことだったので、
次の街の小さなガソリンスタンドで
僕は降ろしてもらった。

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向こうからやって来る車に笑顔で手を振る。

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中指を立てたと思われる人も中にはいたが、
車の中でヘラヘラしながらの
ハンドサインだったので、
そこまでこたえなかった。

まぁ、笑がとれてよかったよ。そんな感じ。

 

 

 

 

そしてすぐに車が止まってくれた。

車からおりてきたのはドレッドヘアーのお兄さん

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後ろには犬が乗っていた。
早口な英語にが上手く聞き取れない。

 

 

「スライゴの途中までだったら
乗せて行ってあげるよ。
さぁさぁ!乗って!」

ありがとう。ちょっとお邪魔するね。

 

 

「おれの名前はウィル。
こっちは愛犬のハーヴェイ。
よろしくな♪」

「なんで”ハーヴェイ”って
名前にしたの?」

「その名前が好きだったからさ!」

「はっはっは!」

 

 

ウィルはばこを一本巻いて吸い終わると、
窓ガラスの隙間から「シュ」と外に捨てた。

何か外から吸い込まれるようにして、
巻きたばこのフィルターは飛んで行った。

 

 

「おれもオーストラリアを
4ヶ月旅してたんだよ。
”WWOOF”って知ってる?」

「あ、ワーキングホリデー
みたいなやつだよね」

「ん?まぁそんな感じ」

「町から町へ働きながら移動したよ。
寝る時はほとんど外でね。
大自然の中で寝るのは最高だったなぁ」

「いいね~、それ♪」

「こうさ、おれも他の旅人から
旅の話を聞くのが好きなんだよ」

ヒッチハイクの輪は続く。

 

 

ウィルとは1時間にも
満たないドライブだったが、
会話が途切れることはなかった。

 

 

「じゃあな!楽しかったよ!
旅を楽しんで!」

「ありがとう。
僕もウェルと話せて楽しかった。
ハヴァグッデイ!」

 

 

ウィルの車が見えなくなるまで
大きく手を振って見送った。

お見送りは最後まで。
僕が働いていた串焼き屋の教えだ。

 

 

 

 

すれ違いに向こうから
やって来た車が止まった。

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あー、たぶん、
自分に手を振ってるって思ったのかもなぁ。

それにしてもめちゃくちゃ手振ってたもん。

 

 

 

 

 

「おー、乗せてあげるよ?」

 

ヒッチハイクする前から車が止まるって…、

分かった。

 

ここは間違いなく
世界で一番ヒッチハイカーに
フレンドリーな国だ♪

 

 

 

 

「私も南米やチリ、カナダやアメリカを
旅したことがあるんだよ。
私の場合は一カ所に
長く滞在することがほとんどだね」

 

 

僕を車に乗せてくれた
ミーヒャル(ミカエル)さんは今度、
フランスに3ヶ月ほど滞在する予定らしい。

この国で元旅人さんと会う確率、けっこう高いなぁ。

バックパカー全盛期(っていつだろう?)には
ヒッチハイカーだらけだったんじゃないか?

そしてここに住む人たちもアイルランドを離れて、
ヨーロッパや他の国々を旅したんだろう。

 

 

「コーヒー飲むかい?」

「え?どうやって?」

「ふふ♪」

 

 

後ろから魔法瓶を取り出すミャーハルさん。
中からはアツアツのコーヒーが出てきた。

 

 

「うちの母親が作ってくれたサンドイッチ食べるかい?」

そう言って、ミヤーハルさんは僕に言って、
後ろから銀紙に包まれたサンドイッチをくれた。

お母さんが作ってくれただけあって、
しっかりしたサンドイッチだった。

中にはキュウリとトマト、レタスにチーズ。

かぶりつくとマーガリンが
中に塗ってあることが分かった。
サブウェイより美味しい手作りサンドイッチだ。

 

 

 

 

 

 

ミーヒャルさんは
僕をスライゴの町の中心地で降ろしてくれた。

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個室トイレを発見したので、
体を拭い、Tシャツを洗濯したあと町を歩いた。

今日が日曜日ということもあり
町には歩いている人の姿はボチボチしかない。

確か4番目か、5番目に
大きな町だったんだよなぁと思いながらも、
歩いてみると小さな町だということが分かった。

 

 

 

ここでバスキングができないかなぁと考えた。

テスコの前ではアコーディオンを
持ったおっちゃんが演奏していた。

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たぶんあそこが一番いいポジションなんだろうな。
別にないならないでいいさ。

アパレル店やカフェの入ったデパートとも呼べない、
建物のベンチでウトウトしてた。

 

 

やべぇ…、なんもないかも。この町…。

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眠っ…。

 

 

 

 

 

「ねえ、これギター?弾かないの?」

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目を開けると、自転車に乗った
ガキンチョ三人組の姿が。

 

 

「あぁ、だって、場所ないだろ?」

「私たちについて来て!
そこでギター弾いてよ!」

 

 

まさか、地元のガキンチョに
リクエストされるとはなぁ。
よしよしやってやんよ♪

 

 

「じゃあ、ここで!」

案内されたのはテスコの前。

 

 

「だって、ここおっちゃんいるじゃん…」

おっちゃんがバスキングを
やめてここから離れていくことはなさそうだった。
路上で生きる者には毎日の稼ぎは大事だろう。

でも、ガキンチョたちも
僕のバスキングを見たがっているようだしなぁ。

しかたがないので、
テスコの反対側でギターを構えた。

 

 

「それじゃ!
お兄ちゃんがんばってね!」

「え!見てかないの!」

 

 

まさかの場所探しのみ!

 

 

 

 

おいおい、なんかしまらねえな。

3曲くらい唄って、切り上げた。
それでもコインが入ると嬉しいね♪

もてあました時間で小さな町をプラプラし、
それでも手持ち無沙汰になってしまい、
お決まりのサブウェイ。

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「またかよ…」

 

 

 

 

 

 

閉店時間にはお店を追い出された。

外はフリースだけでは
しのげないほど寒くなっていた。

 

 

「うぅ~~…」

 

 

顔をこわばらせながらスライゴの夜道を歩く。

 

 

 

 

一見のライブバーを見つけた。

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窓ガラスから温かそうな店内を覗き込む。

すぐそこに日本人らしき女性二人が座っていた。

どうしようかな?
でも、最近金遣い荒いしなぁ….

 

 

どうしようか考えていると、
中から眼鏡をかけたコメディアンみたいな
おっちゃんが熱心に手招きをしている。
僕に手招きしてるのだろうか?

でも、これも何かの縁かもしれないな。
寒さから逃れるようにしてバーの中に入った。

 

 

 

 

「あー、どうもぉ♪」

 

 

バーにいたのはアイルランド人の
ご主人がいる方と、そのお友達だった。

 

 

「せっかくだから
私が一杯ごちそうしてあげるわ!」

「え、えへぇぁ!本当ですか!」

 

 

 

 

中ではアイルランド音楽が流れている。

しかも温かい。
そしてタダでビール!

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「あ、ありがとうございます!」

「いいのよ。
これ、私からじゃなくて
そこにいる眼鏡のおじさんからだからね♪」

 

 

お二人は演奏が終わると、すぐに帰って行った。

そして入れ替わりになるように、
さっきお店の中から僕に手招きしてくれた
眼鏡のおっちゃんが僕のところにやって来た。

 

 

「ビールありがとうございます!」

「君は日本人なのか。
日本は最高だ。ナンバーワンだ!
そしてアイルランドは
君たちのことを歓迎している!」

 

 

なんだかとってもご機嫌なおっちゃん。

ミスター・ビーンやチャップリンなんか
コメディーが好きらしいマークルさん。
身振り手振りがけっこう大げさだった。

IMG_6765写真に写るのは嫌いな方だったのさ。

 

 

 

 

そこうこうしているうちに
次のバンドが演奏の準備を始めてた。

マークルさんは僕が
いいと言っているのにも関わらずに、
次のギネスビールもごちそうしてくれた。

 

 

店内に大音量でバンドの音楽が響く。

そこでギネスを飲む。

何もないと思ったこの町で
最後にこれかよ…。

最高だ!!!

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これでベッドがあったらね。

 

 

 

 

 

 

バーから出たのは
深夜一時過ぎ。

これから寝床を探さなければいけなかった。

雨の中で。

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もう寒いし、テントなんて張れる場所
どこにあるんだ??!!

 

 

屋根のある通路を発見してテントを張った。

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だが、近くにクラブがあるらしく、
時々若者が通路を横切る。

最初は無視してくれていたのだが、
クラブ閉店とともに、酔っぱらったヤツらが
「マリファナあるか~!」とか悪ノリでからんでくる。

最初は
「いやぁ~参っちゃったよ。雨が降り出してさ~」
なんて笑顔で対応していたのだが、
いつまでもテントの脇でダベっているのには
もう耐えられなかった。

 

 

テントをたたんで、すぐに退散した。

この頃には雨は上がっており、空には月が見えた。

 

 

 

 

あ、そう言えば、深夜3時まで営業している
フィッシュ&チップス屋さんがあったよなぁ。

思い出してお店に向かってみると
まさかの
オーダーの受付終了。

 

 

ガックし肩を落としてトイレだけ借りた。

 

 

 

 

 

「これもってきな」

 

 

 

手渡されたのは箱に入ったフィッシュだった

 

 

「あ、ありがとうございます!
えっと、いくらですか?」

「金はいらないよ」

 

 

アツアツの白身魚のフライを
バックパックも下ろさずに夜道で食べた。

フィッシュアンドチップスの
フィッシュってこんなんだったんだ。

うめえぇ!

夜中に食べる不健康なファストフードが
こんなに美味いのはなんでなんだ!!??

 

 

 

雨が上がったのは幸いだった。

適当な芝生を見つけてテントを張った。

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書いてるわけじゃありませぬ。今は3日のラグがあるかな。

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常々、読んでくださってる方には
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