「アグリさんプロポーズするってよ…」

世界一周544日目(12/24)

 

 

クリスマス・イヴが
クリスマス・イヴらしく感じるのは、
ここが日本人宿だからだろう。

 

 

宿のみんなは今日のご飯の話をしている。

ありがたいことに
僕もソイツにありつくことができる。

 

 

作業療法士と栄養士の
ダイキさん、ノリコさん夫婦

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イギリス、オーストリアで
コックとして三年働いた経験を持つ
「イッチー」ことイチノヘ・トシくん

イッチー

 

 

彼ら三人がディープ・ブルーの胃袋を司っている。

今日はどんなご飯が食べられるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

よし、今日も出勤♪出勤♪

ここ数日自分の漫画を描いてきたわけだけど、
ようやくコラボレーションを
持ちかけてきてくだすったマサトさんから
ゴーサイン
が出た。

マサトさんの依頼のために
鈍った腕を取り戻す数日間だったと言えよう。

 

 

 

 

後からやって来たマサトさんと
軽く打ち合わせをして絵を描いていく。

漫画的なタッチよりも、
見る人が受け入れやすいポップな感じで
絵を描いていくことが決まり、
指定されたシーンを下描きしていったのだが、
なかなか想い通りの絵が描けない。

 

 

何度も下描きをマサトさんに見せて
「どうですか?」と尋ねるが、
訊いている自分が見ても
ノれていないことはすぐに分かった。

 

 

あれ?
こんなおれって絵が下手だったっけ?

いや、下手なんだけどさ、
いくらなんでもこれはあんまりじゃない?

 

 

そんな感じだ。

カフェ

 

 
やっぱ自分の思い通りに絵を描くのは難しい。

コラボレーションの内容は、
マサトさんの口から言ってもらったほうがいいだろう。

僕が言えるのはマサトさんの
絵を描いているということだけ。

 

 

 

カット数は10点

たったそれだけなのに、
描けば描くほどイメージから
遠のいていくような気がした。

もらった写真を写してしまえば、
物足りないものができてしまうし、
どこまで漫画っぽく落としこんでいいかも
掴み切れていない。

 

 

何か参考になるものはないかと、
ネットで探していきついたのだが

「ムーミン」

だった。

トーベ・ヤンソンの挿絵は
アニメと違ってどこかダークな雰囲気もあるけど、
一枚の絵としてまとまっているし、
見ていてワクワクする。

どうやって構図を取るのかとても参考になった。

本の挿絵ってそんな感じなのね。

 

 

 

 

 

僕は絵の勉強というものをしたことがない。

 

 

漫画の教科書的なものさえも読んだことすらない。

尊敬する友達が

「”我流”って好きなんだよね。
なんかオリジナリティがある感じがいいじゃん」

という言葉を真に受けて、我流を磨き続けた。

 

 

この”我流”っていうのは
「オリジナリティ」ということだと思う。

そして、漫画を描いていく上で大事なのが、
そのオリジナリティなのだ。

絵の下手な僕はいかに自分が
オリジナルを生みだすかが勝負だと思う。

 

 

そりゃ完璧、唯一無二のオリジナルだなんて
この世には存在しない。

ONE PIECEやNARUTOだって
鳥山明や大友克之の影響を受け、
その巨匠たちも手塚治虫やジャン・ジローの
影響を受けている。

彼らも最初っからオリジナルだったわけではない。

 

 

僕ができるのは、できるだけ
リアルで感じたことからオリジナルを作ることだ。

って今、ムーミンの話してるんですけど。

 

 

現在の流行なんかの絵から何かを学ぶよりかは、
自分のアンテナに引っかかったものから学んでいきたい。

 

 

 

 

 

 

ずっと

カフェにいた割にはちっとも作業は進まなかった。
そんな僕にマサトさんはつき合ってくれた。

 

 

今日はクリスマスイヴの料理のために
ウサギの肉を買いに行くことになっいた。

作業を今日は切り上げて
みんなについていいくことにした。

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「ウサギが捌かれるとこ見ようよ♪」

というイッチーの提案で、
生きたままのウサギが売られているお店へ
僕たちは足を運んだ。

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ちょ、趣味悪いよ〜…。

 

 

 

宿のある場所から歩いて20分の場所に
ローカルの肉屋さんがある。

ウサギの肉がまるごと一羽分欲しいのだと
お店のおばちゃんに伝えると、
おばちゃんウサギのいる籠に手をつっこんだ。

イスラム教徒のおばちゃんは髪をスカーフで隠しており、
何人かがカメラを向けると

「私は撮らないで」と注意した。

 

 

ウサギは金網の中でバタバタと暴れていたが、
耳を捕まられると、途端に大人しくなった。

それはどこか
「もう抵抗したって助かりっこない」
という諦めのようぬも思えた。

おばちゃんがウサギを計りに乗せても、
ウサギはおとなしいままでいた。

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ウサギが殺されるまでは一瞬だった。

血で床が汚れないように
デカいごみ箱のような容器の中で
おばちゃんがウサギの首を割いた。

赤い血が勢いよく流れ、

今まで生きていた物が、
そこにあった「生」のエネルギーが
一瞬にして消えた。

 

 

おばちゃんは小学生くらいの息子を呼んで
一緒にウサギの皮を剥いだ。

皮はまるでテープのようにペロリとはがれた。

イッチーは持って帰りたいから捨てないでくれ
と言って、ウサギの毛皮を回収した。

 

 

ウサギの生命はこの場から消し去られてしまったが、
その入れ物だった体はピクピクと痙攣を起こしていた。

おばちゃんは勢いよく包丁を叩き付け、
ウサギの肉を分解して、調理しやすいように
余分な内蔵は取り除いてくれた。

取り出された心臓はピクピクと動き、
指で触れてみると、少し温かかった。

 

 

 

 

 

主義が異なる一部の人たちと違い
僕たちは肉を食べる。

今目の前にしてきた出来事は
自分が見れていないだけで、
日常的に行われていることだった。

 

ベジタリアンの気持が理解できたし、
食べるためにその命を奪うことが
どういうことなのかが身にしみた。

だから僕たちは

「いただきます」

と言うのだろう。

 

 

 

 

食卓にならんだ豪勢な料理をみんなが取り囲む。

ウサギの肉はかなり弾力があり、
柔らかくして飲み込むのに時間がかかった。

『美味しいなぁ』と思いながら
一口一口をあの白ウサギを思い出しながら食べた。

 

 

イッチーの今回の提案では
僕はかなり勉強になった。

サンキュー。

食べるってそういうことだよね。

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「今日、アグリさん
プロポースするらしいよ」

「へ、ほあっっっ?!!」

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テーマは”ホラー”です。

 

 

 

アグリさんはセブン・ヘヴンに
長期で滞在している元美容師のお兄さんだ。

先日僕とマサトさんは髪を切ってもらった。

 

 

その話を耳にしたのは、
さっきカフェで作業してた時だ。

19時に橋の上でプロポーズをするという情報は
ディープ・ブルーのみんなの耳に入っていた。

映画化されたどこかの桐島くんが
部活止めるみたいな状況だった。

 

 

「それじゃそろそろ観に行こうか?」

「それじゃおれ、フルーツの
ファースト・バイトにこのイチゴ持ってくわ!」

 

 

みんな何かのイベントを観に行くような感じで
7時前に談話スペースから腰を上げた。

 

 

 

 

 

橋に近づくと、
ディープ・ブルーの宿泊客たちの姿があった。

思っていたよりも人数がいる。

そして主役のアグリさんと
プロポーズのお相手はまだ姿を見せていなかった。

 

 

プロポーズ大作戦の補佐官曰く、
今二人は外食に行っているとのこと。

これからアグリさんが
お相手を目隠ししてやってくるらしい。

そこでサプライズの告白。

聖なる夜とビーチの町。
波の音が素敵な雰囲気を演出する。

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マサンタも準備万端!
手に持っているのがファースト・バイトのイチゴです。

 

 

 

 

 

二人の姿が見えて橋の上は静まり返った。

 

 

「それじゃ、目を開けてください」

「え?えぇ?なにこれ??!!」

 

 

回りの何人かは
スマートフォンのLEDライトをつけて、
照明係をしている。

僕もそれに習ってiPhoneのトーチをつけた。

 

 

 

波の音でアグリさんが
何を言っているかはよく聞き取れなかった。

「これを読んでください」

そう言って手紙がお相手に手渡されるのが見えた。

相手のお姉さんはライトで照らされた手紙を驚きながら読む。
困惑した感じは表情からは読み取れななかった。

ただ、アグリさんのこの一言は聞き取れた。

 

 

 

 

「僕と結婚してください」

 

 

 

 

 

 

 

「…はい」

 

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「うぉぉおおお~~~~~~!!!!」

「ヒューーーーーーッッッ!!!」

「おめでとーーーーー!!!」

 

 

みんなが一斉にはやし立てた。

指笛が高く響き、どこからともなく
シャンパンのしぶきが飛んで来た。

 

 

「マジか…、マジで成功した。すげーよ!」

いつも下ネタばっかり言っているイッチーが
ひときわ驚いていた(笑)。

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僕たちは一枚づつ手渡された紙を手に
順番通に並んだ。お祝いの言葉が橋に浮かんだ。

 

 

 

このあとのことなんか誰にも分からない。

だけど、間違いなく、
今ここは世界の幸せの中心だろうなと僕は思った。

 

 

漫画家の僕は二人がいつの日か
今日のことを思い出す日を想像した。

「あの時、私はエジプトのダハブで
プロポーズされたんだよね」

24日のクリスマス・イヴは
二人にとっての記念日になる。

僕はこの場にいれたことだけで、
とても優しい気持になることができた。

 

 

 

 

「それじゃあブーケ投げるよ~!」

お姉さんが近くのレストランの
おっちゃんからもらった花束を後ろ向きに投げた。

花は3輪くらいの小さなものだったので、
風に乗って斜め30°に突っ切って行った。

その場にいた女のコたちは
キャッチできなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

「あ、ネスカフェ…」

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まさかのブーケをキャッチしたのは
ディープ・ブルー界隈に出没する人懐っこい

雌犬だった。

 

 

呑気に橋の真ん中でお腹を出しており、
自分のところに飛んで来た花に
少々驚いているように見えた。

ははは。きっといいオス犬が見つかるよ。

ハッピー・メリークリスマス♪

 

 

 

ほっこりした気分で
僕たちは宿に戻った。

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———————————————–
世界一周ブログランキングに参戦しております。

婚約おめでとうございます!
お二人の幸せが日本に戻っても続くことを願ってます。

僕たちも幸せな気持にさせてもらうことができました。

ありがとうございました♪

 

 

あ~~~…おれも結婚したなぁ。
彼女いないけど(ボソッ)

 

 

 

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