「旅先で出会った大学生とカルパッチョの話」

世界一周568日目(1/17)

 

 

朝の

コーヒーだけいただいてチェックアウトした。

 

 

宿のヒッピーの奥さんは
朝以外の時間帯に頼んだコーヒーが二杯で
8ポンドだったのに対して、5ポンドにまけてくれた。

「さぁ行った!行った!」

とわざとらしく追い払うような仕草に好感が持てた。

まぁ、ここに5泊もするような
僕がいなくなって嬉しかったってのもあるかもしれない。

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「ひえっひえっひえ!またの起こしを〜〜〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来る

ときとは逆の道順で駅まで向かった。

駅で「アスワンに行きたいんですけど」
と駅員に尋ねると、
「それならもうホームに来ているぞ!急げ!」
と荷物検査の機械もろくすっぽ通さずに僕を通してくれた。

 

 

 

ここはエジプト
今から僕は電車に乗ってアスワンまで向かう。

 

 

 

 

電車に乗り込むと、
中の席はあらかた埋まっており、
僕は仕方なしに連結部に荷物を下ろすことにした。

この行き場のない感じが
インドのジェネラルコーチを思い出させた。

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連結部には車椅子に乗った男性がおり、
「おうおう。どこから来たんだい?」とフレンドリーだった。

英語が少し分かる人だったので、
お喋りをしているうちに手に持っていた袋から
駄菓子を取り出して僕にくれた。

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電車が走りだすと、
車掌がチケットを確認しにやって来た。

チケットは車内で買えることを知っていたので、
乗車賃分、31ポンドを車掌に支払った。

 

 

駅ごとに人の乗り降りがあった。

途中の駅で乗って来た大学生の男の子たちと仲良くなった。

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なんだかこういう何気ない一コマでも、
僕に旅をしているという気分にさせてくれる。

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一時間ほどそんな風に連結部で
立ち乗りしている人たちと過ごしていると、
ようやく席が空いた。

 

 

僕を隣りに座らせてくれたおばちゃんは、
僕のことを女のコだと思ってたみたいだ。

なぜだか知らないけど、
隣りに座るとエジプトの駄菓子をくれた。
うちの親父が好きそうな
日本の和菓子に似た、砂糖を押し固めたよう菓子で
一口食べただけで口の中が
べちゃぁ〜〜っと甘ったるくなった。

僕は無理矢理に笑顔を作って
「シュクラン!」とおばちゃんにお礼を言った。

甘い菓子

せめてチョコ味がよかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電車

がアスワンに着いたのは
出発から4時間経った11時だった。

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駅のすぐ横にはツーリスト・インフォメーションがあり、
そこで大体の宿のある方角を訊いておいた。

だが、宿を自分の力で探す必要はなかった。

すぐに客引きがツアーだのホテルだの勧誘してくるからだ。

 

 

とりあえず客引きのおっちゃんが持ちかけて来た40ポンド、
朝食込み、Wi-Fiありのホテルへ僕は行ってみることにした。

ホテルの名前はヌルハンだかヌルハーンだか、
よく分からない名前で、

その隣りに比較的日本人バックパッカーに有名な
ヤスィーン・ホテルがある。
看板には韓国の国旗が取込まれていた。
ここは韓国人にも人気なのかもしれない。

 

 

それを横目に僕はこのヌルハン・ホテルの
部屋を見てみることにいした。

レセプション前でWi-Fiの速度を確認したのだが、
そこまで悪くはなかった。

まぁ、調べものをするくらなら
なんとかってレベルだけど。

僕は他の宿を探すのもめんどくさくなってしまったので、
ここにチェックインすることにした。

 

 

 

案内された部屋は二階にある
シングルルームということだったが、
ベッドはふたつあった。

部屋の外に出てレセプションまで降りると
スーツケースを持った日本人が来ていた。

英語がペラペラだったので
留学経験があるのだろうと僕は検討をつけた。

彼とスタッフの話を聞いていると、
成り行きで僕に彼が部屋をシェアするのであれば
25ポンドまでディスカウントしてくれることになった。

僕としてはありがたい申し出だ。

 

 

「僕としてはありがたいんですけど、
お兄さんはどうですか?」

「いえいえ。
特にこちらもルームシェアする分には大丈夫ですよ」

 

 

物腰が柔らかく、明るい口調から
フレッシュな社会人の感じがした。

 

 

 

そんなタカヒロくんは
僕より一コ下の大学生
だった。

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「休学してバックパッカーをしていたんです」

という彼は生粋の旅人で、大学1年のころから
休みをまるまる利用して色々な国を旅をしてきたそうだ。

今年から富山で働くことも決まっており、
これが最後の旅のつもりで来たのだと言う。

 

 

 

話も盛り上がってきて、
僕たちは外に一緒にご飯に行くことにした。

タカヒロくんは史学科生で、
日本の歴史と経済史などを勉強してきたそうだ。

旅の資金はウェンズデイというバーガー屋さん
バイトをして貯めて来たらしい。

今はもう日本のウェンズデイはつぶれてしまったらしいが、
つぶれる前の最後の月の給料は31万だったとか…。

 

 

「休憩時間に「授業行ってきます」って抜けて、
講義が終るとまたバイトしましたね。
おれ何個ワッパー作ったかなぁ…?」

 

 

そう想い出話を語ってくれたタカヒロくんの姿を見て、
僕は『大学時代に旅をしていたヤツらは
こうやってお金を貯めていたのか』と理解できた。

おれは何やってたかな?
週3~4くらいで働いてた気になってたよ。

 

 

タカヒロくんの初めてバックパック旅行の行き先は
トルコとレバノンとシリアだったと言う。

 

十代の始めのほうに
4年間だかトルコに住んでいたこともあるらしい。

 

 

「えっ?シリア??!!危なくなかったの?」

「今はダメですけどね。
昔は全然大丈夫だったんですよ」

 

 

こういう話を聞いているのが、面白かった。

大学生がバックパッカーやるのって言ったら
東南アジアから始める人間が多いような気がする。

そのこと言うとタカヒロくんは
「他の人とは別の場所に行きたかったんですよね」
と言った。

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宿の近くでサンドイッチとコシャリを食べた後は、
シーシャを吸いながら話をした。

毎回思うのだけど、やっぱり旅の面白いところは
こういう「予期せぬ出会い」があるということだ。

 

 

僕はいつものように、
自分が漫画家だということや、
チェコで荷物がまるっと盗まれてしまったことなど、
おなじみの話をするが、聞き手は毎回違う。

タカヒロくんは面白がってくれたり、
真面目に僕の夢に耳を傾けてくれたりした。

熱心な聞き手には僕も余計に喋ってしまう。

 

 

 

「今、彼女とヨリを戻しそうなんですよ」

スマートフォンを見ながら
タカヒロくんは嬉しそうに言った。

 

 

「一途なんですよね。幼馴染みで。
ずっと好きなんですよ。
それで彼女も就職先が決まったんですよね。
金沢なんです!
これってもう結ばれるしかなくないですか?」

 

 

僕もロマンチストなので、タカヒロくんの気持にすごく共感できた。

てか「幼馴染み」って響きいいな…。

 

 

 

 

タカヒロくんとその彼女は大学時代一度だけ
「つき合った」ことがあるらしいのだが、

当時を振り返ると
「全然楽しくなかった」
とタカヒロくんは言った。

 

 

「お互い何していいのか分からなかったんですよね。
始めてのデートはそこそこのレストランに
外食しに行ったんですけど、
「何か食べられないものある?」って訊いたら
「生魚とエビがダメ」って言うんですよ。
それで彼女が選んだのが”カルパッチョ”だったんですね。
その時あまりのことで、僕うまくツッコめなくて…。
「あ…、うん」って」

 

 

その話を聞いて思わず笑ってしまった。

そのメニューでいいのか?魚だよ?と念を押すと、
「ウシ(タカヒロくんのあだ名だ)が食べて」
と返されたらしい。

 

 

「だから僕一人でそれ全部食べましたよ!」

 

 

タカヒロくんはそんな想いを寄せる(天然の)彼女に
旅先からポストカードを送っているらしい。

訪れた旅先から届く、
ほんわかあたたかい、想いを隠した手紙。

あ~、手紙が届いたら嬉しいだろうな。

彼女さんの両親が厳しい人みたいで、
タカヒロくんは攻めあぐねているみたいだけど、
頑張ってね!応援してるから。

 

 

 

 

 

 

 

タカヒロくん

と話していると、
あっという間に時間は過ぎていた。

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一旦宿に戻り、僕はギターを練習して時間を過ごした。

タカヒロくんは明日、”アブシンベル”というここから
車で三時間離れた遺跡にツアーででかけるらしい。

なぜだか、そのツアーというのが、
朝3時半にホテルのレセプション集合
ということらしい。

いくらなんでも早過ぎじゃないか??!!

 

 

 

タカヒロくんのツアーに合わせて
22時には部屋の電気を消した。

 

 

 

さっきまでタカヒロくんが彼女とLINEをしていて、
ニヤけっぱなしだったのがおかしかった♪

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出会った人。話したこと。

僕の日記ってのはこういうことを
書き記しておくべきなんだと思います。

もしかしたらこの場限りの出会いだったとしても、
ここに書き留めておくことで忘れずいれるから。

幸せになって欲しい人っすね。

やっぱり世界はLove and peace!

 

 

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