「結局どこがラスタ村だったのだ?」

世界一周584日目(2/2)

 

 

朝も早く

からスピーカーからサウンドが流れ始めた。

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意外とエチオピア人の朝が早いのには驚きだ。
昨日も深夜1時過ぎくらいまで同じように
ドコスカとサウンドが流れてたのに…。

 

 

時刻を確認すると8時半。

なんだよ…、もうちょっと寝かしてくれよぅ…。

 

 

寝返りを打ってもう一度眠ろうと考えたのだが、
音が気になって眠ることができなかった。

素晴らしいモーニングコールをどうもありがとう。

 

 

 

ここはエチオピア、シャシャマネ
ここにはラスタ・ヴィレッジ(村)があるらしい。
僕はそれ目当てでわざわざやって来たのだ。

 

 

 

 

 

歯を磨いて、そのまま近くのWi-Fiの入るカフェに
コーヒーを飲みに行った。

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エチオピアに来てから一気に食欲がなくなった

エジプトではあんなに毎日毎日
安いコシャリを貪っていたっていうのに。

ここまで食事内容が変わったんだ。無理もないだろう。

 

 

どこもかしこも主食はインジェラで、
はっきし言ってあれは食べているとだんだん飽きてくる。

生地部分の”すっぱさ”に、胃袋が
「もういいよ」とうんざりしてくるのだ。

パスタやサンドイッチなどを食べるためには、
少し高めのカフェに行くしかない。

 

 

まぁ、前向きに考えよう。

エジプトで食い過ぎた分、
ここで調整しなおすってのはどうだろう?
うん。なかなか悪くないな。

ここでは粗食で、一日一回くらいはしっかりしたものが食べれて、
おまけにフルーツジュースが飲めれば満足かなって感じだ。

 

 

ブラックコーヒーをちびちび飲みながらiPhoneを操作したが、
相変わらずここのWi-Fiは時間を無駄に消費して
いるんじゃないかって思うくらいに遅かった。

ラスタ・ヴィレッジには昼前に行くことに決めて、
僕はノートを取り出し、それに漫画を描いた。

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このスタイルを始めてからこのノートで二冊目だ。

紙質も向きも違っているため、
思うように絵が描けないと時もあったのだが、
だんだんどのペンが一番この紙に合うのかが
掴めてきたような気がした。

もちろん自分が「ノっている」と感じることもすごく大切。

 

 

気がついたらあっと今に時間は経っていた。

おっと!そろそろラスタ・ヴィレッジ行かなくちゃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流しの

トゥクトゥクを捕まえて
僕はラスタ・ヴィレッジに向かうことにした。

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この町ではトゥクトゥクが他の町よりも
人の生活の中心にあるような気がした。

通りに出れば誰かしたらが道路の脇に立ち、
手を延ばして斜め下に下げてアピールしている。

 

 

ラスタ・ヴィレッジはシャシャマネの中心地から
少し離れた所にあるようだ。

地元の人たちの間では認知度は割と高いようだ。
「ラスタビレッジってどこ?」と訊けば、
「あぁあ、そこね」とにすぐに答えてくれる。

 

 

 

20ブル(117yen)を支払って、
陽気なお兄さんが運転するトゥクトゥクを走らせた。

トゥクトゥクは中心地から伸びる道路をただまっすぐ走った。

車内に風が吹き込んでくるのが気持ちよかった。

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ラスタ・ヴィレッジの近くで、
突然運転手のお兄さんの友達らしき男が二人乗り込んで来た。

「ヘイマーン!ハーワーユー?」と拳と拳をコツンと当てて
ラスタっぽい挨拶に答える。

彼らは目的地が途中まで一緒だと言うので、
僕のトゥクトゥクに相乗りすることになった。

ここまでフランクだと図々しいさも感じない。
こいうローカルな絡みを悪くないなと思った。

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陽気なヤツらだよ。

 

 

 

僕たち三人を乗せたトゥクトゥクは
途中の細い路地へと入っていった。

後からの乗り込んで来た2人組は
「ラスタ村にようこそ~!」と
人懐っこいウェルカムな雰囲気を醸し出している。

ここがラスタ村なのだろうか?

運転手のお兄さんは「もう少し先」と言っていたので、
コイツらが適当なことを言っているだけじゃないか
と疑う気持もあった。

 

 

 

トゥクトゥクはどこかの家の前で停車し、二人を降ろした。

僕はラスタ・ヴィレッジまで行きたかったので、
すぐに引き返してもらいたかったのだが、

二人が「コーヒーでも飲んで行けよ」と誘うので、
「じゃあちょっとだけ…」と僕はその誘いを受けることにした。

 

 

トゥクトゥクを降りる時に10ブルなぜか余計に請求された。

僕はてっきりここで待っていてくれるのかと思ったが、
僕が10ブルを支払うとトゥクトゥクは
さっさとどこかに走り去ってしまった。

なんだったんだあの10ブル?

 

 

 

 

止まった目の前にあった建物のドアを開いて中に入と、
そこには「バナナ・アート・ミュージアム」があった。

どう見たってただの家なのだが、
家の玄関にはバナナ・アートの創始者らしいおっちゃんの写真と
それが紹介された新聞記事の切り抜きのようなものが貼ってあった。

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「はい。それじゃあ入場料15ブルね」

中にいたお姉さんにちゃっかり入場料を徴収された。

なんだよ?コーヒーごちそうしてくれるんじゃないのかよ?

それに地味に安いな15ブル(88yen)って。

 

 

これも話のネタかなと、
僕はこのお気楽なラスタマンたちにつき合ってやることにした。

だって、こんな場所にこれたのも何かの縁じゃないか。

物事も捕らえよう。

たとえ彼らがここの客引きだったとしても、
それはそれで面白いじゃない?

一応「ガイドのつもりなら金は払わないよ?」
と釘を刺しておいた。

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「バナナア〜〜〜ト…!!!」
うん…、微妙。

 

 

 

正直バナナ・アートの方はたいしたことはなかった。

二、三点を除いて他の作品の保存方法が雑で、
無造作に積まれているだけだった。

僕としてはここにいる人懐っこい犬と
遊んでいる方がよっぽど楽しかった。

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僕は5分も滞在せずに外にで出た。

ここまで僕を連れてきた二人は
「よう!ラスタ村を案内するぜ」
と案内役を買って出ようとしてきたが、
僕はだんだんこの二人が胡散臭く思えて来た。

ひとまずメインの通りに出る途中までは
話しかけてくる二人に適当に話を合わせてやった。

 

 

 

ラスタ村(仮)はかなり静かな場所だった。

目の前から小さなガキんちょが二人手をつないでやって来た。

顔のまわりにはハエがたかっており、
目にはどこか生気が感じられなかった。

僕はハロー、と挨拶をしたが、
子供たちは僕のことを警戒していたため、
全くと言っていいほどレスポンスがなかった。

子供たち二人とすれ違ってしばらくして振り返ると、
向こうもこっちを振り返って見ていた。

僕が手を降ると、向こうもはにかみながら手を振り替えした。

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メインの

道路に出ると、
僕は目の前にお土産屋さんがあることに気がついた。

 

 

道路の向かい側にそのお土産屋さんがあり、
僕はついてくる二人を無視してその店に入っていった。

中にはそれほど雑貨は置いてなかったが、
ショーケースの中にはラスタカラーが入ったストールや
やラスタマンたちが好んで被りそうなニットキャップが入っていた。

お店のお姉さんは英語があまり分からなかった。
ついて来たお調子者たちが急に通訳を始めた。

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僕はここでストールとニットキャップを
仕入れていくことにした。

実際に雑貨を手に取ってみると
作りがしっかりしていることが分かった。

 

 

「まさかこれって、
メイド・イン・チャイナじゃないよね?」

「おいおい!そんなわけあるかよ!
ちゃんとしたハンドメイドさ!」

 

 

中には胡散臭いデザインTシャツもあったが、
まさかエチオピアでこんなしっかりした雑貨が
手に入るとはおもわなかった。

これこそまさに、ここでしか手に入らない
「オリジナル雑貨」ではないだろうか?

お店のお姉さん、その旦那さんらしき人と値段交渉して、
ストールとニットキャップをそれぞれ3枚づつ仕入れておいた。

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お店の二人も商品がそこそこ売れたので
気分がよさそうだった。お互いいい商売しようぜ♪

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僕は雑貨を入れた黒いビニール袋を下げて外に出た。

さっきからずぅ~~~っと
調子のいいラスタマンたちがべったり僕についてくる。

ラスタミュージアムだとか言って
連れて行かれた掘建て小屋のような場所は、
明らかに営業なんてしていなかった。

電気は灯っておらず、絵やら楽器やらが無造作に置かれていた。

僕はこんなものをお金を払って見せられたらたまらないと
すぐにその場を逃げ出した。

 

 

 

 

雑貨屋、美術館、そしてその隣りに小さなカフェがあった

こちらはどちらかと言えばローカルな人間用のカフェだった。

中では白髪混じりの歯の抜けたラスタマンのじいさんと、
愛想のないおっちゃんラスタマンが仕込みのようなことをしていた。

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僕はこういう空間が好きだった。

日本だったら意識しなければ作れないカフェを
彼らは自然に作っている。

マンゴージュースがあるかと訊いてみると、
白髪のラスタじいちゃんは冷蔵庫からトロっとした液体を
プラスチックのコップについでくれた。

 

 

値段は10ブル(59yen)。

一見、お腹を壊しそうな色をしてが、
味の方は抜群に美味しかった。

部外者にあまり心を開かなさそうなこのおっちゃんたちと
僕はなんとかしてコミュニケーションがとりたかった。

おっちゃんからノートの切れ端をもらうと、
そこに筆ペンで似顔絵を描き始めた。

カウンターは少し高く、うまく絵が描けなかったが、
それでも、紙に描かれているのが自分の顔だと知ると、
途端にラスタのおっちゃんたちの顔がほころんだ気がした。

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「ほら、ナチュラルタバコだ」

「あ、ども」

 

 

僕は禁煙を始めたが、
もらいタバコは吸っても良いルールにしている。

僕の似顔絵に気をよくしたのか、さっきまでずっと僕について来た
胡散臭いラスタマンたちも少しフレンドリーになったようだ。

 

 

なんとも言えない出来映えの似顔絵をおっちゃん二人に
プレゼントして僕はカフェを後にすることにした。

お店を出ようとするタイミングで
ここまでべっとりついて来たラスタマン共が急に声色を変えた。

 

 

 

「おい!お前!マリファナ吸ったろ?金払えよ?」

「は?さっきのが?知らねーよ?
しかもそっちが勝手に吸わせたんだろ?」

「何言ってんだ?
ラスタ村では吸ったら金を払うだよ!」

「あーーー?
金は払わねえってあんたらと会った時から
ずっと言ってんだろ?」

「払えよ!200ブルだ!」

 

 

一人の男が僕の肩を掴む。

するりとそれを抜けて僕は道路の真ん中に出て、
やってきたトゥクトゥクに乗り込んだ。

トゥクトゥクにはすでに一人乗客が乗っていたが、
運転手は事態を察知して僕を乗せてくれた。

 

 

ふう…、あぶなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこら辺から僕の記憶は一気に曖昧になった。

なんだか記憶力がぶつ切りになる。

 

 

体が甲虫の節のようにいくつも別れてしまったように感じる。

自分というロボットを客観的に操縦している感じだ。

自分が数分前に何をしていたかという実感がなかった。

 

 

まさか…、ほんとうにマリファナだったのかよ?

しかもかなり純度が良かったんじゃないか?

だっておれ、2~3口しか吸ってないぜ…??

 

 

あのままカフェにいたら、フワフッワになって、
身ぐるみをはがされたかもしれない。

トゥクトゥクは僕が変な状態なのに気がついて、
途中で僕を降ろしてどこかへ行ってしまった。

 

 

『後ろからヤツらが
追いかけてくるんじゃないか?』

 

 

そんな不安に駆られながら、
すぐにでも自分のいた宿に戻りたかったが、
別のトゥクトゥクを捕まえるにしても、

なんと言えば自分のホテルに
連れて行ってくれるのかが分からなかった。

 

 

 

 

記憶が…、

実感が….。

 

 

 

 

頼れるのは自分自身だった。

木陰でマップアプリを何度も確認して、
宿の近くのダッシェン・バンクを目指すことした。

幸い地図で見ると宿までの道はほぼほぼ一本道で
木陰で何度も体勢を立て直しながら少しづつ進んで行った。

物がなくなっていないか、
何度もサブバッグの中身をチェックしたが、

何回チェックしても、
自分が進んでいる方向が正しいのか不安になった。

 

 

 

マジでやべえ…。

 

 

 

外は暑いはずなのに、汗を一滴もかいていなかった。

自分がどこを歩いているのか
全然分からなかった。

そんな僕を地元の人たちはニヤニヤしながら見ていた。

その時の僕は外から見てもおかしかったのかもしれない。

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これがその時に撮った写真。
自分がここを通ったことを覚えておこうと
写真を撮った。

 

 

 

 

 

ただ黙々と歩き続けて、見覚えのある建物に入る。

 

 

おっちゃんに鍵をもらって、ベッドに倒れ込む。

 

 

あれ、おれ、いままで何してたんだっけ?

なんだか今さっき、おっちゃんに

「電気がつかないんだけど!」ってキレ気味に
言ったような気がするけど、あれは気のせいか…?

 

 

 

iPhoneで時刻を確認するとここをさっきここら辺で
トゥクトゥクを捕まえてから2時間しか経っていなかった

それでも時間が何倍にも長く感じた。

 

 

 

もう何もできない。

 

 

ベッドに下着一枚という格好で倒れ込み、

ひたすら意識が正常に働くのを待った。

 

 

1時間が過ぎたころにようやく外に出れるようになり、
様子を見るためにもう一時間やり過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方

になると、僕は近くのカフェに行って
昨日と同じ食事をとった。

そしてテーブル席でノートに漫画を描いた。

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宿に戻ってみると、
数時間前に経験したことが嘘のように思えた。

だけど、今、確実に手元には
ストールとニットキャップが入った黒いビニール袋がある。

 

 

あれは夢ではなかったのだ。

命からがら僕はこの雑貨を手にしてここまで無事逃げ帰って来た。

 

 

そこにあるのは確かにラスタ・ヴィレッジの雑貨だったが、
それはまるで海賊の戦利品のように思えた。

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ラスタマンもピンキリだってことでした。

僕がエチオピアから持ち帰った雑貨もいつの日か
日本でお披露目する日がくるかもしれません。

あ~、なんだか今日は冒険でした。

 
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