「移動で一日が終る。だけどそれもいい」

世界一周585日目(2/3)

 

 

4時半には

ベッドから抜け出し荷物をまとめた。

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長距離を移動する時にはいつも同じだ。

チェックアウトは5時。
宿のおっちゃんにありがとうとお礼を言って門の外に出た。

 

 

外はしんと静まり返っており、
少し歩くと足の短いコーギーの体系に似た野良犬の群れがあった。

犬の群れは僕の姿を気にもかけずに
そのまま前7メートル先にたむろしていたが、
僕はそのまま回れ右をして、別の道に出た。

 

 

 

ここはエチオピア、シャシャマネ
これから向かう先はジンカという町

 

 

 

ジンカ周辺にはユニークな民族たちが暮らしている。

せっかくエチオピアに来たのだから、
僕もそこに訪れてみようという気になった。

通りでトゥクトゥクを拾った。
僕と同じでバスターミナルまで行くというお兄さんとシェアした。
ターミナルまで10ブル(59yen)だった。

 

 

ここからまずはソドという町を経由しなければ
ジンカには行けないということだった。

案内されたミニバンに乗り込んだ。

ミニバンはすぐに定員で埋まり、
エチオピアにしては珍しくスムーズな発進だった。

 

 

僕は一番乗りでこの車に乗り込んだので、
一番後ろの席の窓側の席だった。

窓側の席は好きだ。旅の風景を見ることができるからだ。

 

 

ただ朝イチの時はすぐに眠ってしまう。

走行中何度か目を覚ますことがあったが、
脳みそは僕に睡眠を要求していた。

脳からの命令通りに目を閉じると、またすぐに眠りについた。

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気がつくと

ソドに到着していた。あったい間の移動だった。

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ソドのバスターミナルからジンカ行きを探した。

ジンカに行くめには、アルバミンチという町を
経由しなければならないということだった。

地図でジンカの場所を確認してみると分かるのだが、
ハイウェイからかなり離れた場所にあった。

まぁ、ユニークな民族たちが町に住んでいるわけないよな。
そういう発展した町があっても面白いだろうけどね。

 

 

 

 

 

アルバミンチ行きのバスは先ほどのミニバンと違い、
通常サイズのバスだった。

僕はバスの上にバックパックを置き、
ギターを持ち込んで一番後ろの座席に着いた。

 

 

こちらのバスも地元の人たちで賑わっていた。

人口密度が上がると、それに伴って車内の温度も上がる。

じんわりと汗をかいた。

 

 

そしてギターを持ってアフリカを旅することは、
なんと大変なことなのだろうと思った。

きっと南米でもバスにすし詰め状態で
移動しなければならないのだろう。

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ギターを持って旅をしていた金丸さんのことを思い出す。

確かにこんなガタガタ揺れるバスにギターを預けたくはない。

荷室に預ければ他の大きな荷物に
ペシャンコにされてしまうかもしれないし、
上にくくりつけるのであれば、悪路を進んだ時の衝撃で
ボディにダメージが蓄積されるような気がする。

そして車内に持ち込むにしても、棚に置ければいいが、
自分で抱えていなければならない場合、
かなりしんどい思いを味わうハメになる。

 

 

 

僕以外の乗客で外国人の姿はなかった。

地元の人たちは相変わらず僕のことを「チャイナ」と呼ぶけど、
それは単なる僕の固有名称でしかなかった。

ああ、中国人が乗ってるよ。という風に。

時々ちらちらと僕の方に視線を送る。
僕は目が合うと、ニヘラと笑う。

もちろん一日に何度もからかってくるヤツには会う。

だけど、「チャイナ!」と声をかけてくる彼らの大半は
「やぁ、中国人!」というようにフレンドリーな場合が多い。

 

 

ここに来たら「チャイナ」というのは
「おう!アジア人!」と考えていいのではないだろうか?

きっとエチオピア人のほとんどは中国人も韓国人も
日本人も一緒くたに「チャイナ」と信じているはずだから。

僕も調子に乗ってブルース・リーの真似なんかしてやると
「あっひゃっひゃ!」と喜んでくれる。

なんだかそれでいいような気がしてきた。

 

 

 

 

最後尾の席の一番真ん中が僕の居場所だった。

なぜならその他の席ではギターが前に抱えられないからだ。

その時の僕の姿はなかなかに様になっていたと思う。

もしカメラマンがいて僕の姿を撮ってくれたのであれば、
いい写真が撮れたのではないだろうかと思う。

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僕の回りにいた人たちも、
また他のバスでの移動と同じくフレンドリーだった。

こんな狭い車内にギターを持ち込んでいる阿呆に対して、
嫌がったりはしない。

というか、エチオピアではバスに
荷物を持ち込むことが当たり前なのだ。

 

 

 

 

あとから僕の横の席にやって来たおっちゃんは
やけにプリプリした性格だった。

バスが一時休憩をするために停車すると、
最後まで乗客が出るのが待てずに、
「どいた!どいた!」と言った具合で僕を押しのけた。
せっかちな性分なのだ。

 

 

バスに揺られている時に分かったのだが、
おっちゃんの首には大きな腫瘍があった。

もしかししたら命に関わる病気かもしれない。僕はそう思った。

そしておっちゃんの左手の薬指には
シンプルな金色の指輪がはめてあった。

 

 

僕はこのプリプリしたおっちゃんの人生を
漫画家なりに想像してしまう。

きっとこのおっちゃんの家はどこの僻地とも知らぬジンカにあり、
おっちゃんは小言の多い奥さんの待つ家に帰る途中なのかもしれない。

 

 

そんなことを想像(妄想)していると、

『おっちゃんも色々大変だよなぁ』

という気持になれるのだ。

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アルバ

ミンチにバスが止まると、回りの客引きたちが一気に群がった。

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頼んでもいないのに僕の荷物を下ろし、ギターに勝手に触る。

ヘラヘラとした表情で
(もちろん他のエチオピア人には
こんな胡散臭いサービススマイルなんて投げかけない。僕にだけだ)

あわよくばチップをふんだくろうとしている。

 

 

それが果たしてまっとうなサービスに見合っただけの
チップなのかは分からないが、
荷おろし(積み)以外の10ブルだって
時には発生しないくらいなのだ。

たかだかひとつのバックパックに大人が3人くらい群がる。

頼んでもないのにギター持ってもらって
それでお金を要求するってどんなだよ。

 

 

僕はヤツらを蹴散らしてターミナルを出た。
まずはここでお金をおろしておきたかった。

 

 

 

 

物腰の柔らかいラスタマンが
バスターミナルの外まで僕について来た。

僕は先日のシャシャマネの件もあったので、
こういう無駄に親切なヤツは信用できなかった。

そもそもアルバミンチのバスターミナルの近くに銀行を見たのだ。

結局は人に聞くことになるのだけど、
僕も助けてもらいたい人とそうでない人がいる。

 

 

この親切を装うラスタマンもそうだった。

「悪いけど、個人情報はバラしたくないんだ」

と言ってラスタマンを退けた。
それでもついて来るようなら警察を呼んでもいいと思っていた。

 

 

 

予定通りに僕はバスターミナル近くの銀行に足を運んだ。

警備のお兄さんに「ここにATMはある?」と訊くと、
シンプルに「ない」と言った。

代わりにATMがある別の銀行を教えてもらい。
お金の問題はケリがついた。

ほらね。
ラスタマンになんてついて来てもらわなくても
なんとかなるものだ。

なんだか夜に一人でトイレに行けない子供みたいだな、僕は。

 

 

それにバスターミナルのヤツにしてもそうだけど、
なんでわざわざ自分の職場を離れて僕につき合おうとするのだろう?

あんたの仕事はそっちだろ!持ち場を離れるなよ。

 

 

ATMのある銀行で1000ブル(5,925yen)をおろした。

銀行の警備の人は大抵の場合親切だ。

アルバミンチの銀行の警備のおっちゃんは
かなりフレンドリーだった。それに英語が喋れた。

「日本人か?」「そうだよ」「どこへ行くんだ?」
「ジンカか」「そうか」「よい一日を!」「そっちもな♪」

そんな感じだ。

 

 

みんなこのおっちゃんみたいだったらいいのに。

思わず僕はそう考えてしまう。

 

 

アルバミンチにはほんの一瞬しか滞在しなかった。

ただ、そこを歩いてみて思ったのは、若者が多く、
エチオピアにしてはいくらか発展しているということだった。

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バス

ターミナルに戻るとジンカ行きのバスを探した。

さっきの親切押し売りのラスタマンが
「もうジンカ行きのバスはないよ」と言った。

僕は他のバスにジンカ行きのバスがあるか訊くと、
即答で「こっちだ」と教えてくれた。

それがラスタマンのささやかな仕返しだった。

 

 

 

乗客でバスが満ちると、バスはジンカに向けて発進した。

出発してすぐに、
ソドからアルバミンチまでのバスで一緒だった家族と
同じバスなことに気がついた。
さっきと座っているポジションも同じだった。

 

 

だが、今回は荷物を椅子の上に置いて、最後の方に乗り込んで来たため、
椅子取りゲームで席にあぶれたような形になってしまっていた。

まわりの男たちは誰一人として、家族に席を譲ろうとしなかった。

どうなるのかと状況を見守っていると、口論のようになり、
押し合いへし合い、もう見ていて見苦しかった。

 

 

 

「あ~、もう!わかった!わかった!」

僕は自ら進んで座席を譲ることを買って出た。

 

 

僕が立ったことにより、
一番後ろの座席に一人分の空きができ、そこに誰かがずれた。

そして、二人の母親と二人の子供は近くに固まって
席が確保できるようになった。

僕がせっかく席を立ったというのに、
誰一人として僕にお礼を言う人間はいなかった。

 

 

僕はとてつもなくむなしい気持になってしまった。

「馬鹿なアジア人が勝手に席から離れた」

そのくらいにしか見えていないのだろうか?

 

 

皮肉っぽく「よかったね!」と後ろに
すし詰めになった男たちに向かって日本語で言った。

母親の顔を視線をずらすと、
お礼の代わりに満面の笑みが返ってきた。

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僕は決して心の綺麗な立派な人間ではない。

なんらかの見返りが欲しかった。

返ってきた物は目には見えないものだったけど、
僕の心を満足させてくれた。

 

 

 

だが、
これから長いドライブが始まると考えると
いくらか気持ちが重かった。

それに道路のコンディションだってよくはないはずだ。

まぁ、きっといい運動になるだろう。
最近食事の量も減ったから、
スリムな体系に戻りつつあるはずだ。気持を前向きに。

 

 

車が走りだして10分も経たないうちに、
後部座席の端のほうに座っていた英語の喋れるおじさんが
僕に席を譲ってくれた。

おじさんの譲りっぷりがあまりにもスマートだったので、
僕はそのまま元のポジションに収まった。

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ジンカへ向かうバスは、山道のカーブに揺られながら走った。

乗車率の高い車内は蒸し暑く、
一番後ろの席で隣りに座った人間と密着して座っていると
じんわりと汗をかいた。

エチオピアのポップソングがBGMとしてかかり、
カーテンの隙間から外の風景が見えた。

 

 

右斜め前に座った女のコが僕に興味を示していた。

僕も子供の気を引くために、おかしな顔を作ったり、
できる範囲のパントマイムなんかやって女のコを楽しませた。

 

 

さっき僕に席を譲ってくれたおじさんは
前の方で誰からも席を譲られることなく立っていた。

申し訳ないような気もしたが、それがどこか格好良くも見えた。

おじさん、ごめん。ほんで、ありがと。

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はーい。休憩でーす。

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休憩で立ち寄ったコンソという町の小さな露店。
ここではチャット(タバコみたいな葉っぱ。ガムみたいに噛む)
も一緒に出してくれるところだった。

IMG_5493みんな同じポーズをしているのは、
うん。”おしょんしょん”してるからです。

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けっこうカワイイ子だったな。腹出てるけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5時間

かけて、バスはジンカに到着した。

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バスに乗る前にバックパックの積み荷代を支払っておいた。

だからここでバックパックを降ろしてもらったところで、
これ以上の追加のチップ(なのか?)は払わなかった。

 

 

 

ジンカの町は他の町に比べるとやけに田舎じみており、
果たしてここに宿があるのか僕は少し不安な気持になった。

とりあえず宿のありそうな建物が立ち並ぶ方向へ僕は歩いて行った。

 

 

すぐに客引きの子供たちが声をかけてきた。

マサと名乗る少年は「コンニチハ、ハジメマシテ」
と日本語の挨拶を少し知っており、僕は感心した。

しかも彼はそれなりに流暢な英語を話した。

 

 

僕が宿泊費の予算を告げると
彼はそれにあった宿を僕に紹介してくれた。

マサと名乗る男の子から紹介された宿は
銀行のすぐ隣りにあった。

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できたばかりの宿ということで
トイレとシャワーが文句なしに綺麗だった。
もちろん部屋も綺麗でベッドバグなんていなさそうな
綺麗なベッドだった。

それでいて100ブル(592yen)。
Wi-Fiはないが文句なしの宿だった。

僕はお礼を言ってマサに40ブル(237yen)のチップを渡した。

チップにしては多過ぎるくらいだが、
「他の仲間とシェアしてね」と言っておいた。

 

 

 

マサはアリ族の出身だと言った。
頼めば個人的に彼の村までを案内してくれるらしい。

ツアーの値段を訊いてみたが、彼は「任せるよ」と言った。

僕は個人的に村に遊びに行ってみようかと考えていたが、
ちょっと考えさせてねと明日の13時に待ち合わせをして、
彼を帰した。

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ジンカの夜はかなり暗かった。

僕は近くで5ブルくらいでマッシュド・ポテトと
豆の混ざったパサパサした主食みたいなものと、
ほんのりと辛い「コーヒー」という名前のスープを飲んだ。

シメにアボガドジュースが飲みたかったので、近くを探したが、
ジンカの町では容易くフルーツジュースを見つけることはできなかった。

 

 

少し高めのカフェに入って、僕はアボガドジュースを注文した。

点灯しているんだかわからない赤い色の電球のぶら下がった
薄暗いカフェで僕はそれを飲み、
渡された「民族ハンドブック」にざっと目を通した。

 

 

ジンカ周辺には沢山のユニークな民族が暮らしているようだった。

だけど、僕にはそれがどうも商業的に思えてしまう。

 

 

 

世界を旅していると、
その土地に住むユニークな民族の住む村を訪れる機会がある。

主にツアーだが、それを

エスノツーリズム」

と言うらしい。

ロルフ・ポッツの「ヴァガボンディング・ガイド」
という本にそのような言葉が出てきた。

民族の持つユニークさというのは徐々にビジネスに染まっていき、
次第にそれは最初の純粋さを失っていくということが
書いてあったような気がする。

 

 

下唇にお皿をはめたムルシ族なんかは、
僕が旅に出る前から商売として自分たちを
売っていると話を聞いていた。

我々ツーリストが、ここでささやかな暮らしを営む
彼らの生活に土足で踏み込むことは、一体どういうことなんだろう?

 

 

僕にはエスノツーリズムは
冷やかしのようなものに思えてしまうのだ。

 

 

自分が果たしてツアーに出かけるか、決断が下せないでいた。

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蚊!蚊!

まぁ、マラリアが怖いですよね。

現在もアフリカですよ。この日記を書いている時点でも。

エチオピアなどは高所(1000m~2000m)の場所にあったので、
あまり蚊がいなかったのです。

問題はここからだ。

あーーー、腕が痒い。

毎日ちゃんとマラリアの薬飲んでるけど、大丈夫かなぁ?

 
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