世界一周625日目(3/16)
深夜2時半
にアラームが鳴った。
前日は日記も書かずに8時過ぎに寝てしまったので
起きるのは辛くはなかった。
パッキングを済ませてテントをたたむ。
忘れ物がないか昨日作業したバーカウンターのある場所に行ってみると、
そこではスタッフが眠っていた。
僕が近寄るとムクりと体を起こしたが、またすぐに眠ってしまった。
そりゃそうだ。
こんな時間に起きているヤツなんてほとんどいない。
宿の門は施錠されてはいなかった。
僕はほんの少しだけ重たい門を開けて外に出た。
宿の外はしんと静まっていた。野良犬すらいない。
僕はそのまま宿のある小高い山の中腹から道路まで出て、
バスターミナルへと歩いて行った。
ここはザンビア、チパタの町。
これから向かうのは首都のルサカだ。
真夜中のチパタの町にはタクシーすら走っていなかった。
バスターミナルは地味に離れた場所にある。
二日前にバスターミナルから宿までの時間を計ったら、
徒歩で30分もかかった。
街灯の数もそこまで多くはない。
『もしかしたら野良犬が潜んでいるのでは??!』
と神経を研ぎすませる。
ここが治安の悪い場所ではなくてほんとうによかったと思う。
バスターミナルまでは何事もなく辿り着くことができた。
乗るはずだったバスは5時発のものだったが、
僕がバスターミナルに到着した時は4時だった。まだ一時間もある。
バックパックを背負ったまま宿からバスターミナルまで歩いたら
もっと時間がかかると思ったのだ。
丁度いいタイミングで4時発のバスが
今まさにルサカに向けて出発するところだった。
僕はスタッフに「一本バスを早めてもいいか?」と訊ねると、
スタッフは「早く乗れ!」と僕をバスに乗せてくれた。
慌ててバックパックをスタッフに預ける。
荷室はバスの乗車口の反対側にあり、
スタッフは僕のバックパックを持って裏側へと回って行った。
汗で火照った体をシートに静める。
汗をすったジーンズがペットリと皮膚にくっつく。
僕はすぐに窓を開けた。
朝イチのバスということで、座席の全ては埋まっていなかった。
中には二つの座席を丸ごと使っている人もいた。
僕の隣り席にも誰も座ることはなかった。
バスはすぐにチパタの町を離れた。
窓から入ってくる夜風が顔を撫でる。ひんやりと涼しく、心地良い。
ふと思ったのが、
「果たして僕のバックパックは
荷室にちゃんとしまわれたのか?」
ということだった。
聞いたところによると、
ナミビアにはトランクに置いた荷物を
客が降りた隙をついてかっさらっていくタクシー強盗があるらしい。
今僕が旅をしているのはザンビアだが、隣りの国だ。
もしかしたら同じ様なことがあるかもしれない。
自分の目の届かないバスの荷室に荷物を置くということは、
まさに「犬がお腹を出して降参してい状態」のように思える。
たとえ荷室が座席から見えていたところで
荷物が盗まれる可能性は十分にあるし、
それを阻止するのは非常に困難なのではないだろうか?
今まで一年八ヶ月旅をしてきて、
そのような犯罪に遭ったことは一度もなかったし、
そんな話を聞いたこともない。今のところ。
だが、バスの荷室に荷物を置くことに対して、
心の底から安心することはできないのだ。
バスは暗い夜道を走った。
チパタの町を離れると街灯はぱったりとなくなってしまい、
バスのヘッドライトだけが道を照らした。
夜明けが近づくにつれ、
道の脇にバイクに乗った地元の人たちが時々見えるくらいで、
あとは草原が道路の脇に広がっているだけだった。
道はコンクリートの舗装道路からすぐに砂利道に変わり、
隆起のあるところではバスはスピードを落とし、慎重にそれを越えた。
ルサカに着くまでの時間はドライバー次第だと言う。
それの意味が分かったような気がした。
このバスのドライバーは安全運転をする人間のようだ。
僕はバスの中で”Of Monsters and men”の
ファーストアルバムを聴きながら旅情に浸った。
辺りが明るくなってくると、ザンビアのハイウェイ沿いが
どんなものかがだんだんと分かって来た。
ハイウェイ沿いというのは得てして人家が少ない。
日本の高速道路沿いだってそうだろう。
ハイウェイはくねくねと曲がりくねった道路よりかは直線的で、
町を通過するよりは山や何もない場所を
突っ切るようにして通っている。
スーダンのハイウェイは砂漠だった。
エチオピアは広大な自然、マラウィは田舎道。
同じような人の手のあまり加えられていない自然が
ハイウェイ沿いには広がっており、国ごとに微妙に印象が違う。
「鬱蒼とした草むら」というのが、
僕がザンビアのハイウェイ沿いに対して抱いたイメージだった。
森ではないのだが、見渡すことができない。
人が入るのには草むらをかき分けていかないと進むことができない。
そんな風景がずっと広がっていた。
ごめん!写真忘れちった〜〜〜!
ルサカ
に着いたのは13時だった。
チパタの町を出発してから、
かれこれ9時間以上バスに乗っていたことになる。
街自体は首都ということもあり、そこそこに発展したいた。
バスの中からいくつもショッピングモールを見た。
ターミナルに到着し、バスから降りるやいなや、
タクシーの運転手たちや客引きに囲まれた。
ここに着たばかりだというのに、
中には「リビングストンに行くか?」なんて訊いてくるヤツもいた。
僕はウンザリしながら、客引きを振り払い、
バックパックを回収し(もちろん今回も盗まれているなんてことはなかった)
マップアプリを頼りに宿に向かうことにした。
この街には「Backpacker’s」という単語が入った宿がいくつもある。
ツーリスト向けということなのだろうけど、
そのほとんどはリーズナブルな値段ではない。
もちろん僕が行くのは安宿だ。
ウサギのマークが描かれた
「KALULU Backpacker’s」という宿にチェックインをした。
テント泊が可能で一泊30クワチャ(464yen)。チパタの宿よりも安い。
さっそくテントを張り、キッチンでパスタを作った。
髪の長いポニーテールの日本人の方が
この宿に活字を求めて遊びに来ていた。
交換用の本はありませんか?と訊ねられたが、
僕が持っているのは大好きな「ノルウェイの森(上)」だけだ。
ペーパーバックの”On the Road”もあるけど、
どちらも交換するつもりはない。
ポニーテールの方はザンビア在住らしく、
ここで中古車のビジネスを立ち上げている最中だった。
僕が交換する本がないことを伝えると、力なく去って行った。
キンドルの電子書籍がオススメですよと僕はアドバイスしておいた。
食事を済ませテントに戻ってみるとポールがポッキリと折れていた。
半年前にチェコで買ったテントだ。
もうガタが来ているというよりかは寿命なのかもしれない..。
三本あったポールのうち、入り口用の一本は使わなくなり、
他のポールが折れた際のスペアとして使用していたが、
それももうほとんど残っていない。
創意工夫で乗り切れるのも、もうおしまいかもしれない。
スペアのポールが買えればいいのだが。
残り少ないスペアのポールを
折れたものと取り替えてテントを立てた。
なんとなくギターの練習をしようと思ったのだが、
1弦のペグが壊れているのが分かった。
マラウィに到着した時点でペグを留めるネジが一本折れてしまっていたので、
瞬間接着剤で修理したのだが、それも外れてしまっていた。
このまま使えば悪化することは分かっていた。
僕は宿のお姉さんに「楽器屋はないか?」と訊ねてみると、
お姉さんは近くのショッピングモールを教えてくれた。
でかでかと”LEVY“と書かれたショッピングモールに入ってみると、
中には冷房が効いていた。
思っていたほどテナントは入っていなかったが、
二階にはYAMAHAの楽器屋があった。
僕は店員にギターを見せて「修理できないか?」と訊くと、
なんでもないように「できる」と言った。
まぁ、そうだ。たかだかペグの修理ぐらいだったら、
場所によっては無料でやってくれたりする。
「それで、いくらかかりますか?」
「あー?50クワチャだよ(774yen)」
宿代以上にお金がかかるが、ここは仕方ない。
僕の旅にはギターは欠かせない。
コミュニケーション・ツールだったり、メシ代を稼ぐ道具だったり。
潔く財布を抜き50クワチャを支払った。
15分程度で終るとのことだったので、
僕はお店のクラシックギターを試奏しながら修理が終るのを待った。
スタッフの1人はアルペジオのスケールを教えてくれたりした。
この人ドラムが専門なんだってさ。
修理は折れたペグと接着剤を落とすところから始まり、
ペグが取り外された場所にはポッカリと穴が空いていた。
次に新しいネジでペグを再び固定するわけなのだが、
大人二人掛かりでグイグイと何かを埋め込んでいる。
あまりに熱心に作業するので
気になって覗いてみたのだが、
明らかに
ネジのサイズが
合っていない。
3倍くらい大きなバカでかいネジを無理矢理に
ネックに埋め込んでいる。
ギターが壊れてしまうんじゃないか
心配になるくらいにねじり込んでいる。
「ほら、これでもう大丈夫だ。
ペグが外れることはないぜ!」
自信満万でスタッフは僕に言う。
バカデカいネジはネックに最後まで埋まることはなかったが、
作業を見ればいかにこのネジが力強く押し込まれたかが分かった。
これも旅かな…。
そう思うことで自分を納得させた。
念のため、他のネジも閉めてもらった。
これから機会があればネジだけは締めてもらおうと思う..。
宿に戻る前に
ショッピングモール内のスーパーに立ち寄った。
僕がスパイスのコーナーで塩を探していると、
僕にお金をせびってくるお兄さんがいた。
手に持った紙幣だか小銭を見せて
「あと6クワチャ必要」だと言う。
今日は機嫌が良かったので、
2クワチャくらいならと財布の中を見たが、
そこには100クワチャ札と1クワチャ以下のコインしかなかった。
「ゴメン。これしかないわ」とコインを数枚渡すと
お兄さんは
「ゴッド・ブレス・ユー…」
と眉を下げながらお礼を言った。
宿に戻った僕はシャワーを浴び、飽きもせずにパスタを作り、
日記を書いてこの日を締めくくった。
宿には小さなプールがあり、ポンプによって水が循環させられ、
目を閉じると水の流れる音が絶え間なく聞こえた。
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そう言えば、ルサカではけっこう日本人の姿を見ましたね。
ツーリストというよりかはここに済んでいるような感じ。
スーパーで日本語が聞こえるのはなんだか不思議な感じでした。
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