「LikeからLoveに変わる瞬間」

世界一周635日目(3/26)

 

 

「マサトさん、

今日の旅心は何ですか?」

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11時頃になってようやく外の天気はよくなっていた。

朝の段階ではまるで
テーブルクロス」と呼ばれるテーブルマウンテンにかかる雲が
雪山のようになっていた。

僕はテーブルマウンテンに登るのをためらったが、
天気も回復してきたので結局はトライすることにした。

 

 

マユさんも一緒に登ってくれるということで、
ルートは前回とは違うらしい。

「前回」というのはマサトさんとマユさんは既に
テーブルマウンテンに登っているからだ。

だから、今回はマユさんが登ったことのないルートから
テーブルマウンテンの頂上を目指すことになる。

僕としては、とりあえず
「登った」という達成感みたいなのが味わえれば
どこから登ったって構いはしなかった。

 

 

 

マサトさんの表情からは

『できることなら行きたくない』

という気持が読み取れた。

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マサトさんのブログの冒頭にいつも、
旅で思ったことを綴る「旅心」というのがある。

僕は冗談でこの日の旅心をマサトさんに訊ねてみた。

 

 

 

 

 

「体が心配…」

 

 

 

いつもピュアなことばかりが書かれているが、
現実問題はシリアスだった。

マサトさんは今、腹部に何カ所も虫さされがあり、
はれぼったくなって一重になった目も
徐々に治りかけている最中だったからだ。

 

 

「ドMチャレンジャーはどこに行ったんですか?」

「いやぁ~、体は資本だからさぁ…」

 

 

僕はマサトさんが
押しに弱い
ことを知っている。

僕とマユさんで半ば強引に誘い、結局マサトさんも一緒に
テーブルマウンテンに登ることになった。

僕なら一回で十分だけどなぁ。

 

 

 

 

朝ご飯にセブイン・イレブン(という名前のスーパーだ)で
シナモンパンとバナナを買ってブランチをとった。

 

 

マユさんの携帯にイギリスから物資が届いたという連絡が入ったので、
一旦家に戻って届いた荷物を受け取った。

話は逸れるが、
南アフリカの郵便事情はあまりよくないらしい。

届くのに時間はかかることはもちろんのこと、
紛失することもあるそうだ。

その話を聞くと僕はマラウィから日本に送った雑貨が
無事に届くのか再び心配になってきた。今は信じるしかあるまい。

 

 

マユさんが受け取ったのは自転車旅の物資だった。

モンベルから協賛を受けており、
指定した自転車に取り付けるサブバッグなどが
大きなボストンバッグの中に詰まっていた。

それをイギリスの知り合いの家に送ってもらい、
そこから知り合いが南アフリカに来たのと一緒に
持って来たもらったというのだ。

なんせ出発は4月1日。もう一週間もない。

 

 

 

 

 

 

 

そうして

僕たちはテーブルマウンテンに登ることになった。

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「マサトくん!」

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「げ、元気出して…」

 

 

 

僕の中では「今日の旅心は?」と訊くいて
マサトさんをおちょくるのが気に入ってしまい、
何回も同じことを訊いてみたのだが、
マサトさんの旅心が変わることはなかった。

 

 

 

前回ライオンズ・ヘッドに登った時と
途中までは同じ道のりだった。

テーブルマウンテン方面へ坂道を上り、
ロープウェイのある場所まで行くのに30分以上もかかった。

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そしてここからが本番だった。

トレイルはロープウェイのロープの下を伸びていた。

道もかなり狭く、

『果たしてこれが
テーブルマウンテンの頂上へ続いているのか?』

と心配になるほどのデコボコ道だった。

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僕たちの他に、ドイツ人らしき欧米人の団体が
僕たちより前に固まっていたので、最初は彼らのペースに合わせて
山を登っていたのだが、

マユさんは「抜くよ!」と一頃言い、
サクサクと彼らを抜かして言った。

 

 

急な斜面を登る時に、かけた足で全体中を支えて
体を持ち上げるわけだから、体重があるヤツは
けっこうカロリー消費量が多いんじゃないかと思う。

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テーブルマウンテンにはこうした山登り用の道(トレイル)が
いくつか存在するみたいだった。

トレイルひとつひとつに名前がついており、
ゲームで言う「やりこみ要素」が高いように思えた。

中にはトレーニングとして
毎朝テーブルマウンテンに登る人もいるらしい。

その話をマユさんから聞いた時は信じられなかった。

すっころんで前歯折ったりしないのだろうか?

 

 

 

 

トレイルは途中から手をかけないと登れないような箇所が増えて来た。

不思議とアドレナリンは出ないのだが、連日の運動で足に力が入らない。

もし足を滑らせたら下まで一気に転がり落ちてしまうだろう。

小学生のころはこういう場所を探検すると頭の血管がバクバク言い、
脳内麻薬がドバっと分泌されたのを覚えている。

それが今は感じられない。ただただ、黙々と次の箇所、
次のスペースに足をかけ、体を上へ上へと運んで行くだけ。

あの感覚はどうしてこんなにも薄れてしまったのだろう?

 

 

テーブルマウンテン二回目のマサトさんは、
最初は僕たちの一番後ろを少しスペースを開けてついてきたのだが、
途中から急にエンジンがかかりペースも一気に上がった。

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この余裕っぷりです。

 

 

 

僕はこういう時に慎重になる。

飛ばして前歯は降りたくないからね。

 

 

なぜだか、こういう足場の悪い場所を歩いていると

「前歯を折る」

というイメージが頭のなかにつきまとう。

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トレイルはどんどん険しくなっていった。

「ここからは自己責任で登ってください」

と書かれた標識まで立っていたくらいだった。

 

 

 

『これが本当に観光客に開かれたルートなのか???』

というくらい。

後ろに抜かしたツーリストたちの中には
中年のおばちゃんも混ざっていた。
彼女たちはこんな場所を登ることができるのだろうか?

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頂上までのルートは道を誤らないように
黄色いペンキで足跡のマークが書かれるようになってきた。

僕たちはそれを辿り黙々と上へ上へと進んで行った。

雲が下の方に流れるのが見え、
岩の合間にはトゲトゲのついたトカゲを見るようになった。

 

 

気温も少し下がったような気がする。

山登りに関わらず、長距離を移動する場合、
キツく感じるのは最初の1~2時間ではないだろうか?

一定のペースで山を登ることに徐々に体が慣れてきて、
呼吸も安定してきた。

振り返るとそこには険しい山道と、
小さなケープタウンの中心地が見えた。

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まさにこれは冒険だった。

 

 

「手軽にできる冒険」

それが山登りなのかもしれない。

流行っているのか、いたのか分からないが、
一時期「山ガール」という言葉を耳にした。

それは単なるフェス好きや、
アウトドア好きの女のコというわけではなく、
本当に山を登るのが好きな女の子が増えているんだよね。
とマサトさんが言っていた。

まったく、男なんかよりも
よっぽどアクティヴだと思う。尊敬しちゃうね。

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二時間

ほどでテーブルマウンテンの頂上に
到着することができた。

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頂上には観光客向けに飲食店などもあり、
僕たちはそこでフルーツジュースを買った。

トイレの水はびっくりキンキンに冷えており、飲むこともできた。
僕は持って来た500mlのペットボトルに水を補充しておいた。

 

 

山の頂上は「テーブル」というほど平らではなかった。

どちらかと言えばゴツゴツしている。

風が強く日陰にいるとあっという間に体が冷えてしまうので、
日向で休憩を挟んだ。

 

 

 

「マユさんは国際結婚する時どうでした?
英語とか大変じゃなかったですか?」

 

 

なんの前触れもなく、マサトさんが会話を振った。

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「最初はうちも今より全然英語が分からなかったから、
エリオットが何て言っているのか
全然分からなかったんだよね?」

過去を振り返るマユさんの口調には
大阪弁が混じるようになった。

 

 

エリオットと出会ったのはイギリスのクラブだったそうだ。

その当時はお互いやんちゃで、
マユさんが初めてエリオットを見た時は

『うわぁ、この人
大分キマっちゃっているな』

だったそう。

 

 

 

だが、お互いがキッチンデザインの仕事を
していることをきっかけに、よく遊ぶようになったのだとか。

 

 

「会話の中で「歳下の男ってどう?」って
言ってた時があったらしいんだけど、
その時は分かってなくて
「やー、興味ないかな」とか言っちゃってて。

それでこっちから「また今度遊ぼー!」って言っているんだから、
向こうからしてみたら「どっち??!!」ってなってたよね。

だんだんエリオットも
『あぁ、自分の喋っていることが理解できていないんだな』
って分かるようになってきたみたいでさ」

 

 

マユさんのイギリスでの就労ビザが切れるタイミングと
エリオットが中国とロシアに旅に出るタイミングが
重なったみた時期があり、その時は離ればなれだったらしい。

 

 

「「つき合って!」とは言われたことはないんだけど、
スカイプで話している時に
「I love you」って初めて言われたんだよね。普段は”Like”なのに。
それから私に対する扱いも変わって来たかな?」

 

 

「イギリス人ってプライドが高いんですね」

そうマサトさんが言った。

 

 

 

僕はこの”Like”から”Love”に変わる瞬間に、

とてもトキめいていた。

なんか、なんかいいなぁ~~~…

 

 

 

『この写真をネタに揺さぶれる!』

と思ったゲスな僕のほっぺたをはたいてくれる女のコ、
絶賛募集中です♪

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なんかダッシーだとか言う動きのノロいネズミみたいなのがおる。

 

 

 

 

 

 

 

別の場所

から、僕たちは山を下りることにした。

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帰りのルートは、観光客にとってポピュラーなルートだった。

頂上から下までずっと単調な石段が続いている。

下っている最中に何組もの欧米人とすれ違ったが、
その大半は軽装で、テーブルマウンテンがこんなにも
険しいものだとは全く知らなかったであろうことが伺えた。

中にはスニーカーにお洒落な格好をし、水さえもっていない者もいた。

彼らは「頂上まであとどれくらい?」と訊いたが
「あと一時間くらいかな?」とマユさんが返すと
それが信じられないような顔をしてまた石段を登り始めた。

テーブルマウンテン。
普段山登りなんてしない人が登る分には
服装と水分には気をつけなくちゃいけないと思う。

 

 

 

 

「そう言えばマサトさん、
暮らすなら横浜か鎌倉って言ってましたよね?
なんでですか?」

高級住宅地が立ち並ぶ区画を歩いていいる最中に、
僕はマサトさんにそんな質問を投げかけてみた。

 

 

「いや、別に住むのはどこでもいいんだけど、
みんなが遊びにこれる場所がいいよね♪
おれ、けっこう寂しがりやだから、
みんなとすぐに会える場所ならどこでもいいかなぁ」

「お風呂はヒノキでしょ?」

とマユさんが言う。

 

 

「ああ、そうですね♪」

「私たちもいつかは日本で暮らすと思うから、
またその時は日本で会おう?」

 

 

そんな会話を訊いていて、
この出会いをもたらしてくれたブログっていうのは、
実はすごいものなんじゃないかと思う。

 

 

そうなんだよ。

ブログに関わらず、旅先で出会った人たちの間に
絆みたいなのがあることを僕は感じるのだ。

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なんか具材買いに行ったらライオンズヘッドがすごいことになってた!

 

 

 

 

 

夕飯は白菜がたっぷり入った中華風のあんかけごはんだった。

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今回も野菜のカットは僕とマサトさんが担当し、料理を楽しんだ。

一日の最後に栄養満点のしっかりとしたご飯が食べられる♪
マユさん、いつもありがとうございます♪

 

 

エリオットがご飯を食べ終わったのを見て、
僕はマサトさんにこう持ちかけた。

 

 

「じゃんけんで負けた方が皿洗いしましょうよ?」

「え?いいよ」

「マサトくん、じゃんけん強いよね。
この前もね、川に遊びに行った時、
帰る直前にじゃんけんで負けた人がもう一度川に入ってくる
ってのをやったんだけど、
その時も一番最初にじゃんけん抜けてたもんね」

「あぁ、シミくんも知ってると思うけど、
ダハブとかで10人以上でじゃんけんした時も
二回勝ってますから!」

「じゃ、「最初はグー」でいきましょう。
最初はグッ…」

 

 

 

 

 

結果は僕の惨敗だった。

 

 

じゃんけんの一回勝負だったのに、あいこにすらならなかった。

 

 

この人はじゃんけんに強い。

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「串焼き屋のホールの意地を見せてやりますよっ!」

と負け犬の遠吠えをして洗い物を片付けた。

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