世界一周691日目(5/21)
6時半起床。
7時前に華麗にチェックアウト。
あ、こちらは他の宿泊客の方々です♪
そのまま7時開店のフレッド・マイヤーで
ドーナッツを三個買い、三階の個室トイレに籠る。
温水は出るのだが水量が少ないので、洗濯に地味に時間がかかる。
個室トイレをノックされると
プレッシャーがかかる。
いや、ちょっと、待って下さいよ!
だけど、トイレから出ると、誰もそこにはいない。
毎朝ここには来るけど、
僕がトイレから出てくるところを目撃されたことはない。
かなり穴場だと思うのは僕だけだろうか?
ここはアメリカ、ポートランド。滞在7日目。
こんなに長く一カ所の町に留まったことはアメリカで始めてだ。
身支度を済ませると僕は
ゆうこにオススメされたMisissipi Aveに行ってみることにした。
もちろん徒歩でだ。
くっ…橋が渡れねえ..。
朝方の時間は比較的涼しいのだが、
さすがにアップタウンから4kmも離れた場所に行くのは
かなりの運動量になる。
もちろんバックパックを背負って僕は歩き回っているのだ。
荷物を預けたいのだが、都市型キャンパーに
ポートランドはそこまで甘くないってことだ。
ちなみに上の写真の橋が向こうに見えるヤツね。
だからさ、歩くんだよ。僕は。
ミシシッピ・アベニューに到着する頃には
背中とバックパックの間には熱がこもっていた。
聞いていた通り、ここでもユニークな店をチラホラ見かけた。
あの人の服装好き♪なんか作ってそう。
看板の裏はステッカーだらけ。
中にはポートランド発のアウトドアギアを売る店などあったのだが、
常時金欠の僕はショーウィンドウを眺めるだけだった。
金欠だと店に入るのさえ億劫になってしまう。
入れば楽しいのに。もったいないないことをしているな。
ゆうこから教えてもらったカフェに行ってみることにした。
彼女が「True Portland」(ガイドブック)に絶賛しているように、
僕はゆうこの情報を絶対的に信頼しているのだ。
ガイドブックを読む手間が省ける。
足を運んだのは”Albina cafe“。
ここもオリジナルの臭いをプンプン感じる。
僕は自分のことをコーヒー好きと公言していても、
味の違いが分かるわけではない。
いつもマクドナルドの1ドルコーヒー飲んでいるし、
良くてスターバックスの一番安いコーヒーだ。
正直に言ってしまうと味の違いなんて分からない。
『ん?ちょっと酸っぱい?』とかそんな感じ。
こういうオリジナルのお店で出されるコーヒーは
こだわりがある場合が多い。
個人経営のカフェに足を運ぶことによって
美味しいコーヒーを飲むこともできるのだ♪
注文するのはもちろん一番安いコーヒーだけどね。
1.75ドルのドリップド・コーヒーを注文して、
僕はコンセントに近い窓際の席に着いた。
昼前の店内のテーブル席はあらかた埋まっており、
Macのノートパソコンを広げている客が何人もいた。
僕は日記を書くでもなく、
いつも漫画を描いている手帳をサブバッグから取り出す。
もう数ページ描けばやっと二冊目が終るのだ。
僕はこのノートをアイルランドの小さな雑貨屋さんで買った。
帯に「Traveling Journey」と書かれていて、
「旅」という言葉に弱い僕はすぐにこの手帳をレジに持って行った。
確か7~8ユーロくらいだったと思う。
厚みはあるが表面がスケッチブックのようにザラついており、
細い線のペンを使う際にはインクが吸いとられ、
かすんでしまうことがあった。
新しいノートに自分の絵を描くのには色々なペンを試した。
このノートと自分のイメージする線が引けるペンとの相性を
理解していった。
一番最初のページには
「カエルダッシュ(世界一周ブログ)」のアイコンに使われた
カエルの絵が描いてある。
その2ページ先にこのノートに
漫画を描き始めた日付とイラストが書かれている。
2015年1月13日。
漫画を描き始めた場所はエジプトのルクソールだ。
いつもノートに漫画を描いていたわけではないが、
およそ5ヶ月に及んでこのノートに漫画を描きこんでいった。
このノートが旅した国はエジプトから
東アフリカ、そしてカナダ、アメリカだ。
この
「Daypack’s Stories(サブバッグ・ストーリー)」
と題打った漫画企画。
スタートはチェコで荷物をすっかり盗まれてしまった時に
持っていたノートに絵を描き始めたのがきっかけだった。
一冊目は既に日本の相棒の家に送った。
二冊目は南米の雑貨と共に送られることだろう。
最後の話は相棒のまおがメキシコに向かう話を描いて
二冊目のノートのページは全て埋まった。
僕の旅の記録が中には詰まっている。
そろそろFacebookページやサイトにアップしなくちゃな。
気がつけば
時刻は17時を過ぎていた。
えっと、「デブさんの楽園?」
自慢にもならないが、
僕はコーヒー一杯でここまで粘れるのだ。
カフェの店員さんたちからしてみたらかなりやっかいな客だろう。
追い出さない寛容さに頭が下がる。
もし自分がカフェをやるとしたら、
自分のような長居する客にどう対処していけばいいのだろうと
考える時がある。
カフェを出ると僕はミシシッピ・アベニューから
ガイドブックに載っていた店へ行ってみることにした。
「ZINE」
という個人冊子がポートランドの書店には売られている。
名前の由来は「Magazine」の「ZINE(ジン)」だろう。
値段はまちまちだが、
20ページにも満たないもので、2~3ドルする。
学園祭で作った案内所や、
漫画部の作った同人誌みたいなのを想像してくれればいいだろう。
あれ?高校の時に「漫画部」ってなかった?
僕はハンドボール部だったけどね。
あー、タワーレコードのフリーペーパーの
個人版みたいなものって言っても想像しやすいかも。
内容は本当に個人の発行する物だけあって、ほんとうに個人的だ。
ほとんどが文字で埋まっており、趣味から人付き合い、
下ネタ系、もちろん漫画だってある。
この日僕が訪れたのは”Micro Cosmics“という本屋だった。
これは自転車の雑誌で「ZINE」ではないよ。
ガイドブックにはこの店で
沢山のZINEが取り扱われていると書かれていた。
店内はかなり狭く、店員は僕に挨拶もしないで何かの作業に没頭していた。
僕は店の一角を占めるZINEを適当に見てまわった。
まず最初に頭に浮かんだのは
『どうしてネットが普及した現代において、
こんな利益を度外視した雑誌を作ってしまうのだろうか?』
という疑問だった。
完全な自己満足の世界じゃないか。
こうして書店に並んでいるわけだが、一体誰が買うというのだろう?
表紙も中身も、全く面白みを感じない。
どこかに面白いZINEがあるはずだ!
と気になった表紙のものを手に取ってパラパラとページを
めくってみたのだが、
一体これのどこが面白いのか全く理解できなかった。
閉店間際だということもあり、
店員は僕に一言も声をかけなかった。
ダウタウン
への帰り道。
橋を渡っている途中に思ったことは
「ポートランドはヒッピーっぽい」
ということだった。
僕が言っているのはベタなヤツじゃない。
あくまでも「ぽい」。
なんでも自分たちで作ってしまうDIY精神や、
それを受け入れる土壌。
オーガニックや衣食住にもここでは関心が高い。
そしてそんなポートランドからはユニークなカルチャーが生まれている。
まず相棒はこの町が好きになることは間違いないだろうなと思った。
ヤツはヒッピーカルチャーが好きなのだ。
さっきのZINEもそうだ。
利益なんて考えない。まずは面白そうなことにトライしてみる。
いや、ZINEなんてのは最終的な形に過ぎないんだ。きっと。
あの小冊子を作るまでの過程が
大事なんじゃないかと僕は気がついた。
本を作るまでに辿る行程。
コンテンツ作り・編集・印刷・流通。
自分のZINEを作ることによって多くのことが経験できるに違いない。
それが利益を出すことを目的としたものであれば、
もっとクオリティの高いものができるのだろう。
だが、出版者たちはそんなことは考えていないな。きっと。
彼らはZINEを作るという行為自体を楽しんでいたに違いない。
ZINEだけじゃないのだここは。
飲食店も最初はケータリングのキャンピングカーからスタートし、
軌道に乗れば店舗を構えることができる。
ここにしかない雑貨屋もいくつもある。
ポートランドにはそれらのチャレンジを受け入れる土壌があるのだ。
そしてチャレンジすることのハードルが低い。
日本だとそうは行かないだろう。
場合によっては物件やチャレンジの内容に応じて金がかかり、
失敗した場合のリスクが大きくチャレンジがしにくい。
なかなか新しい物が生まれない。それが日本なんじゃないだろうか?
滞在一週間目にして分かったのはそういうことだった。
自分がどんどんポートランドが好きになっていくのが分かった。
ゆうこはいい町を選んだな♪
僕はそう思う。
色んな国や町を訪れたけど、ここは特別だと思うんだ。
そしていなくなったレックスくんが
この町を選んだような気がした。
そうだよ。
アイツは自分の意志で戻って来て、
そしてここを気に入ったんだろう。
そっか…。
そうだよな。
昨日と同じ場所でバスキングをしようと思ったら、
そこはアンプを使ったディジュリドゥ吹きと
スネアドラムのコンビがいた。
まぁ、そういうもんだ。
マクドナルドで閉店まで作業し、
23時になるとワシントンパークへと引き上げた。
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