▷11月26日/パタゴニア、トルテル〜ヴィラ・オヒンギンズ
僕たちを車に乗せてくれるカップルとは10:30に待ち合わせをしている。
余裕のある朝の出発はいい。僕たちは8時頃にそれぞれ朝の散歩をすることにした。
外はあいにくの曇り空に小雨がまじった空模様だったが、雨に濡れた桟橋というのもまた、赴きのあるものだった
僕はここでも三匹の野良犬を手なづけることに成功した。
『僕の前世はもしかしたら犬使いなのでは?』と思うほどチリの犬とは相性がいい。
というか彼らは人々の生活に溶け込んでいるので人懐っこいヤツが多いのだ。パンをひとかけらでも放ってやれば誰でもチリの野良犬と仲良くなれるのではないかと思うほどだ。
僕は三匹の野良犬を連れて桟橋を散歩した。
湖の村の野良犬は寒さに耐えられるようにモサモサした毛並みで、そのうちの毛束は固まり、ドレッドか鱗のように硬くなっていた。
人懐っこく、飛びかかってくるのはいいとして、雨に濡れた野良犬はちょっと対応に困る。撫でてやることもできないし、息が臭かったりすると、スキンシップも躊躇われる。犬も口臭が大事なのだ。彼らはそんなことこれっぽちも気にしないが。
10:00には待ち合わせ場所へと向かっ
た。
そこには昨日僕たちと一緒のミニバンでここへやって来たフランス人姉妹の姿はなかった。
彼女たちはヒッチハイクてヴィラ・オヒンギンズへ向かうと言っていたが、どうやらすぐに車を捕まえることができたようだ。それを知って僕は少し安心した。
僕たちを乗せてくれることになったのはチリ人のカップルだった。乗っていた車はプジョーのセダンで、男子三人が後部座席にバックパックを膝の上に抱えて座るのはなかなかに窮屈だった。
車は細い砂利身を走った。辺りはずっと国立公園のような景色が続いている。
僕は真ん中に座ったので視界が限られていた。隣に座っているマックやマサトさんの顔越しに窓の外に流れる景色を眺めた。
車は一時間ほど走るとフェリーに乗ることになった。その区間ではフェリーが重要な交通機関の一部らしく、乗船料はかからなかった。
向こう岸まで渡るのは30分ちょっとのクルージングだった。その間に僕たちは船内のテーブルに着いて話をした。
チリのナショナル・フラッグ(国旗とは別のものだろうか?)に描かれているコンドルや鹿をチリ人の90%は見たことがないという話や、
彼氏さんの名前がマッカンジーというスコットランドに起源のある名前だとか、まぁ、そんな類の話だ。
フェリーが向こう岸に着くと僕たちはまた車に乗り込みドライブを再開した。道路は相変わらずの砂利道で速度が時速40kmに制限されていたため、周りの景色を眺める時間が多かった。
これも贅沢な時間だと思う。
16時前にはヴィラ・オヒンギンズの村に着いた。
車を下ろしてもらったガソリンスタンドのすぐ近くに宿があった。一泊9000ペソ(¥1,556)のドミトリーにチェックインすると、すぐに次の目的地へのフェリーチケットを買いに向かった。
それを済ませると僕たちは晩御飯の材料を調達しに村を歩いた。
この村もかなり小さく、宿から5分も歩かずに食べ物を売る店に行くとができた。
今日は僕がマサトさんとマックに夕飯を作ると宣言している。
まぁ、作るものは限られている。野菜スープとかそんなのだ。材料を刻んでコトコトと煮るだけだ。それに塩胡椒を少々振ればおしまい。誰にだって作れる。
材料を買い込むと、マサトさんとマックは近くを散歩に行ったが、僕は残って日記や漫画を描くことにした。
宿は他の宿泊客たちで賑わっており、とてもじゃないがテーブルの上で絵を描けそうではなかった。
服を着込み、ブランケットを持って外のテーブルに行ったが、手がかじかんでちっともペンタッチが戻らなかった。
マサトさんたちが散歩から戻ってくると料理に取り掛かった。
プラスチックのまな板の上でジャガイモやニンジンの皮を剥き、それをザク切りにして水を少し張った鍋にぶちこんだ。他の具材はタマネギとトマトのみ。スパイスは塩胡椒、先ほど買っておいた粉末コンソメを加え、あとは弱火でじっくりと煮込んだ。
マックが買ったワインをちびちびとすすりながら、野菜スープを食べた。パンをつぎってロシア人みたいにスープにひたして食べるとそこそこに腹は満ちた。
今日はずっと移動しっぱなしだったのでそこまで腹は減っていなかったので、スープくらいがちょうどよかった。
外で酔いを覚ましていると、ハンモックに揺られたマックが「Thanks for diner」と言った。
「いやいやお礼を言うのはこっちの方だよ」
そう返したかったが、英語が思い浮かばなかったのでモゴモゴと返しただけだった。
お礼を言われると、作った甲斐があったなと思う。味も美味しかったしね♪
さてと、明日はハイキングだ。20kmだかを歩くみたいだ。そして明後日は歩いて国境を越えるみたいだ。
フィッツロイまでにまだまだ色んな楽しみが残っている。
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