「フォレスト・ガンプの一言を僕は覚えている」

▷12月21日/ニュージーランド、ハミルトン〜タウランガ

 

 

 

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初めての街の初野宿だとどこか気も張る。

ハミルトンの町にはわんさか公園が、それも野宿に最適なものがあるので、寝る場所には困らない。

治安も悪くなさそうだし、夜中に変なヤツがウロつくようなこともない(僕の見る限りでは)。そのため警察だっているんだかわからない。

まぁ、今がクリスマス休暇中ってんもあるんだろう。

ここまで書いておいて気が張るのは、野宿をしているのが見つかった場合、怒られるのか、はたまた罰金を喰らうのか分からないからだ。

 

 

 

 

7時前に自然に目が覚めてしまった。

今日はヒッチハイクでまた移動するので二度寝はせずにテントを片付けることにした。

昨日の夜に入ったので分からなかったが、僕が野宿をした公園は綺麗すぎるほど綺麗だった。誰もいない公園を僕が独り占めしたような気持ちになる。ニヤニヤしながら公園を後にした。

ちょうど公園から出ようとしている直前に半ズボンにTシャツといったラフな格好王のお兄さんが向こうからやってきた。お兄さんはさわやかに僕に「グッモーニン」と挨拶をした。気持ちのいい朝のスタートだ。

 

 

公園を出て少し行くと、自家用ワゴン車に牽引されたちいさなカフェを見つけた。

思わず中を覗き込むと、白髪の髪を短く刈ったメガネをかけたおじさんが僕に愛想よく声をかけてきた。おじさんに誘われるようにして僕はコーヒーを注文した。

アメリカーノは4NZドル(¥332)でそこそこに高い気がしたが、エスプレッソマシーンで淹れたコクのある美味しいコーヒーだった。

僕が店の前でコーヒーを飲んでいると、二人の男女が同じようにコーヒーを注文した。女性がクレジットカードを取り出してリーダーに挿し込んだ。店主が「二人分?」と尋ねる。女性は「そうだ」と言った。店主は「 You are good lady」だと冗談を言った。男性は「僕が車を運転するんだよ」と言い訳するように言った。

三人のやり取りを見ていると、それは映画のワンシーンのように僕には思えた。コーヒーから始まる朝はいい♪こういう気持ちにしてくれるコーヒーだったら4ドルでも悪くないなと思うのだ。

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店主はロブという名前だった。

英語の教師をしていたそうで聞き取りやすい英語を話した。今も教師をやっているのかは知らないが(いや、もうリタイアしたのだろう)、その牽引カフェの店主が彼の新しい人生のようにも思えた。仕事っていうのはその人のカラーだと思う。今のロブしか僕は知らないが、彼とカフェはしっくり馴染んでいように感じた。

 

 

「それで今日はどこに行くんだい?」

「ええっと…タウランギ?」

「タウランガじゃないかい?」ロブがやさしく訂正する。

「あぁそうだ!タウランガでした!」

「うん。それはいいよ。だって今日はいい天気だからね」

12月はまさにニュージーランドを旅するベストシーズン。今日もいいことが起こりそうだ♪

 

 

 

 

僕はコーヒーすすりなが道路の脇を歩いた。

しばらく行くと路肩に車の止まれそうなスペースが現れた。僕はギターケースの中からこの前使った段ボール片を取り出すと「Tauranga」と行き先を描いた。

時刻は8時ジャスト。ちょうどいい時間帯だ。

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ヒッチハイク開始早々、車がスピードを落として路肩に停車した。わずか5分の出来事だった。今回も超速で車が止まってくれた。

 

 

車の中にいたのは母親のケイーシャと 娘のアラーナ。 そして飼い犬のメス犬、ナチョだった。

ケイーシャはこれからタウランガにタトゥーを掘りに行くらしい。

自己紹介をすると、二人はすぐに僕に興味を持ってくれた。最初のうちは会話も弾んだのだが、僕は飼い犬のナチョと遊ぶのに夢中になってしまった。

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一歳になったばかりのナチョは元気いっぱいで、車の中で動きまわるかフリスビーを齧るかしていた。

僕がナチョを呼ぶと20センチくらいの縄をくわえて僕の方に寄ってくる。ずっとそれで引っ張り合いをやっていたのだが、人間側が疲れて黙るまでずっと縄の引っ張り合いを要求してくるのだ。ケイーシャは「その子を放っておくでもしないとずっとそんな感じよ」と言った。

 

 

「車でどこか行く時はいつもナチョを連れて行くんですか?」僕は訊いてみた。

「そうね。だいたいいつも一緒ね。この子は車が好きなのよ」

「あー、じゃあトラベリング・ドッグだ。うちも犬飼ってるんですけどね、すぐに吐くんですよ。いいなぁお前は色んな景色が楽しめるもんな」

車の窓ガラスが開くとナチョは首を出して外を眺め。ハイウェイを時速100キロで走っているのでナチョの耳がバタバタとなびいた。

 

 

 

 

 

車は10時過ぎにタウランガへと到着した。僕たちはサブウェイでバケットを買うと、そのままカフェでテイクアウトのコーヒーを買いに向かった。

コーヒーを買いに二人が車の外に出ると一気にナチョの様子が変わった。眉が下がり不安そうな表情をしている。僕はこの時、車内で留守番をしていたので、思わずナチョの顔を写真に収めた。

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僕がどんなに気を引こうとしても、ずっと飼い主の去って行った方向を見つめている。あぁ、犬のこういうところが好きなんだよ。やっぱり飼い主が一番だもんな。

二人が戻ってくると、ナチョしっぽが千切れんばかりに振った。

 

 

 

ケイーシャがタトゥーをいれるまでにはまだ時間があったので、僕たちは海沿いでブランチをとることにした。

橋を渡ると、港に何台もクルーザーが見えた。タウランガは造船が盛んな町らしい。

 

 

海沿いはとてものどかな場所だった。

僕たちは草むらに腰を下ろすと、先ほど買ったバケットを食べた。

太陽の光を浴びて水面がキラキラと輝いているのを見ると、僕は幸せな気持ちを感じずにはいられなかった。

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僕はお礼の意味を込めて二人の似顔絵を描くことにした。

似顔絵と言っても最近は全体像を含めて描いている。これを似顔絵と呼ぶんだろうか?

野外で描くのは、室内に比べてやはり勝手が違う。風に吹かれたり、太陽の光が神に反射したり、インクの伸びが心なしか早いとかそんなものだが、やはり屋内で描くのが一番だ。

正直、完成した絵は自分ではあまり満足できなかったが、二人は喜んで受け取ってくれた。

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海岸を後にすると、僕たちは再び町の中心地へと戻り、そこでお別れをした。クリスマス休暇中ということもあり、この町も静かだった。

僕は公衆トイレに入るといつものように体を拭い、ついでに洗濯を済ませた。

 

タウランガはニュージーランドで5番目に大きな町らしいが、それほど中心地が大きいとは思えなかった。30分もあれば歩き回れてしまうような町を想像してもらえればいいだろう。

 

野宿の旅をしていて一番困るのが充電場所だ。たまたま図書館を見つけて中に入ってみたのだが、コンセントの使用は禁じられていた。

僕は仕方がないのでそこら辺の小さなカフェに入って作業をすることにした。だがそのカフェもコンセントの使用を禁止していた。ひとつひとつのコンセントに「これは公衆のコンセントではありません」と注意書きが貼られているのだ。

なぜだか入り口に一番近い席のコンセントにはその注意書きが貼られていなかったので僕はそこの席で作業をすることにした。チャイラテを注文すると、僕は席に着き、電子機器を床に置いてこっそり充電をした。まぁ、たぶん、お店の人は気づいていたとは思うけど、僕は何も言われなかった。

 

 

 

バッグから取り出したのは日訳のついた

「フォレスト・ガンプ」の脚本だ。

左ページには英語、右には日本語訳が書かれている。

僕はこの映画を見たことがない。トム・ハンクス主演の映画でアメリカの歴史を交えながら主人公の半生が語られるという内容だったくらいだ。

ラジオで細美武士さんが、ガンプの一言を紹介していたのを覚えている。

その時はリスナーから質問で「仲の良い友達がわけあって修学旅行に行くことができない。友達にどんな言葉をかければいいのでしょう?」というメッセージだった。

細美さんはそこでフォレスト・ガンプのセリフを引用した。お互い別々の人生を歩んできた幼馴染のジェニーと再会し、彼女が「あなたといっしょにいたかったわ」というセリフに対してガンプが言う。

「君もずっと一緒だったよ」

 

 

僕はこのセリフが忘れられなかった。だからこの本を見た時はどこか嬉しくなった。

主に会話で成り立つ脚本は読んでいるだけでも情景が頭に入ってくるようだった。シーンの変わり目なんかに、カメラの切り替わりがどんな感じでなされるのかも書かれている。

 

 

カフェにいる間はだいたいこの本を読んでいた。どこで手に入れたのかと言うと、ブエノスアイレスの上野山荘で本の交換をして手に入れたのだ。

 

 

 

 

 

連休中ということもあり、カフェは16時にしまってしまった。僕はどこかで時間を潰しさなければならなかった。

人通りのまばらなメインストリートを歩いていて見つけたのは中華系のスーパーだった。

 

そこで見つけたのはなんとキムチ。僕にはそのキムチが栄養価の高い貴重な食料に見えて仕方がなかった。値段は5NZドル(¥407)もしたが二、三日は持つだろう。

ニュージーランド旅の食費だが、安いものを選んでいるつもりでもいつの間にか千円を超えてしまう。これで宿に泊まったり、バスや電車で移動していたらあっという間に持ち金を使い切ってしまうだろう。

 

 

木陰でキムチを少し食べると、僕はギターの弦を取り替えることにした。その時気がついたのが、エンドピンが一本なくなってしまっているということだった。

運良く近くに楽器屋を見つけ、そこで30セントでエンドピンを一本購入した。だが穴のサイズが合わず、スカスカで弦が固定されない。どうしたかと言うと、布切れをピンにかませて6弦を張った。どこかのサイトで「ティッシュを挟めばいい」とも書かれていた。でも、さすがにテッシュじゃねえ?

 

 

弦を張り替えると僕は久しぶりに路上演奏をしてみたくなった。だが、人通りはほとんどない。

まるで一人で練習しているような感じだ。ゴーストタウンを待ち行く人は、僕がそこにいないように通り過ぎていく。

おいおいなんだよ。やっぱここでも演奏のレスポンスっって薄いの?

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だが、食べ物の差し入れをしてくる人が二人いた。

手に入れたのは1リットルのオレンジジュースとポテトチップス、それにバターチキンパイを三つだ。なぜだかニュージーランドではミートパイをよく見かける。

バスキングは1時間少しで切り上げたが、その頃には町はますます静まり返っていった。

 

 

そんな僕が行くのは結局サブウェイだ。コンセントもあり、iPadやポータブルバッテリーなんかを充電することができた。

21時まで作業し外に出ると、空はなんとも言えない寂しい色に変わっていった。風も強くなり思わずボタンシャツ羽織った。

 

 

クリスマスに思い出すのは「ホームアローン」だ。そして最近読んだ「ライ麦畑でつかまえて」もシーズン的にはクリスマス前の三日間の話。

一人残されたケヴィンがクリスマスの町を彷徨う、あのちょっぴり寂しい感じを僕は自分のものとして感じることができた。でも、この感覚は嫌いじゃない。

 

 

町のみんなはほんとうにどこに行ってしまったんだろうと思う。まるでどこかで大きなイベントが開催されていて、町の人たちはみんなそこへ行ってしまったような静けさだ。

 

 

 

寝床に向かう途中にバーガーキングを見つけた。そこには「FLAMING FAST Wi-Fi」と書かれている。まさか、Wi-Fiの速度を売りにしているなんてね。

僕は騙されたと思って外でiPadをWi-Fiに繋げて見ると、これが意外になかなか早いWi-Fiだったんだな。おかげでブログをアップすることができたよ。

 

 

タウランガの町には海沿いの大きな公園があった。

明日の朝、ここから見える景色に期待して僕は海の見えるところにテントを張った。

 

 

テントの外から波打つ音がだんだんと近づいてくるのが分かる。

潮の満ちていくのを感じることができた。

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