「まさかの仕事依頼」

1月12日/オーストラリア、メルボルン

 

 

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「カシュッ!カシュッ!カシュッ!」

 

 

深夜2時にスプリンクラーが起動し始めた。

寝床を探している最中に別の場所でもスプリンクラーが作動しているのを見て、『あぁ、ここはそういう公園なのだな』とわかった上で、スプリンクラーが設置されていなさそうな小さな池のほとりにテントを張ったのだが、まさかこんな場所にもスプリンクラーがあるだなんて。

 

僕はスプリンクラーの射程距離にはいたが、かと行って直撃というわけでもなかった。僕のテントでもなんとかしのげそうなくらいのダメージだ。水がテントを打つ「ザババババ…」という音が気にはなったが、僕はそのまま眠ることにした。

 

 

 

 

深夜5時。

再びスプリンクラーが起動して、僕はその音にびっくりして目を覚ました。なんで三時間おきに起動するのか分からない。何?アホなの?

 

ここでメルボルンの野宿場所について少しだけ書いておきたい。っていってもこの時はまだ一日目なんだけど。

メルボルンの中心地には川沿いに大きな公園がある。青い芝生が生い茂り、その上にテントを貼ったのであれば寝心地が良さそうだなと思えるほどだ。

オーストラリアの日照時間は日本に比べると長く、メルボルンは大きな都市なので、街のメインストリートには常に誰かがいるように思える。

だから夜中に公園を人が通ることもあるのだが、オーストラリアはかなり治安がいいので、よっぽどのことがなければ襲われたりしないだろう(絡まれたりはするだろうけどね)。それで公園自体は野宿し放題に見えるのだが、

一番の問題はスプリンクラーがあちこちに設置されていることなのだ。

 

まぁ、野宿で睡眠が変則的になるのは慣れっこなので、朝起きても特に頭がボワボワするだとかはなかった。馬鹿でかい公園なので清掃員と鉢合わせになり怒られることもない。けっこう自由な国みたいだ。

 

 

 

 

 

 

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テントを片付けると、セブンイレブンで1ドルのコーヒーを買った。以前読んだ他の人のブログにもこの1ドルコーヒーが出てきたが、まさか今も続いているとは驚きだ。

メインストリートのスワントン・ストリートにあるベンチに腰掛けると、僕はゆっくりとコーヒーをすすった。iPadで時刻を確認し9:00を過ぎると、ある場所へと向かった。

スワントン・ストリートから一本別の通りにそのオフィスはあった。短い階段を登ると、そこにはオフィスワーカーたちのためのカフェがあり、シャツやスーツを着たビジネスマンたちがそこでエスプレッソやカプチーノなんかを飲んでいる。バックパックを背負ってTシャツ姿の僕は明らかに場違いであることは間違いない。それでも意を決してオフィスビルディングへと乗り込んでいった。

 

 

昨日路上で漫画を描いていると、ホワイトカラーの人から話しかけられた。

立ち話でそんなの長い時間は話さなかったのだが、「オフィスの壁に漫画を描いてほしい」という依頼だった。だいたいこういう時の話は流れることが多い。一応オフィスの場所とその人の連絡先、そして本日の待ち合わせ時間を決めて、その人と別れた。面白そうな予感はしたがそれ以上のものは感じなかった。

 

 

三階にその人の働くオフィスがあった。

カードキーをタッチして開閉する仕組みのようで扉は閉じられている。中には人のいる気配がない。ドアを叩いてみるが誰も出てこない。

僕はもしかして場所を間違えてしまったんじゃないかと、再びエレベーターに乗りグランドフロアに降りた。二台あるエレベーターの中心には電子版があり、各フロアにオフィスを構える会社の名前が書いてある。教えてもらった会社名は確かにそこに書かれていた。

一瞬僕はこの話が流れてしまったのではないかと思った。きっと彼は今日休みか何かで、僕との約束のためにわざわざオフィスに来るのが面倒臭くなってしまったんじゃないかと僕は考えた。

もとよりそこまで期待していなかったので、こういう時はすんなり諦めることができる。エレベーターに乗って再び帰ろうとすると、ちょうど彼がやって来た。お、おお⁇

 

 

 

バレットはそのまま僕をオフィスの中へと案内してくれた。

そこには四人ばかしの人が広々とした部屋でパソコンに向き合っていた。きっと僕がドアをノックした音は届いていなかったんだろう。たしかにオフィスはできたばかりのようで物がほとんどなく、がらんどうな印象を受けた。

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バレットは僕のことを同僚たちに簡単に紹介してくれた。

彼らはそれぞれに自分の名前を名乗ったが、一度に多くの名前を言われても覚えられるわけがない。愛想笑いを浮かべてその場をやり過ごす。それより、大事なのはほんとうに漫画を描くのかどうかだ。

 

バレットの話によると4枚の壁に漫画を描いてほしいということだった

壁はホワイトボードの素材でできていたため、ペンキなんかは使わない。やり直しはいくらでもきくってわけでだ。

なるほど。僕はだんだんと話がつかめてきた。できたばかりのオフィスなので味気ない。だから絵を描いてほしい。とのことだ。

飽きたらまた別のアーティストを雇えばいいわけだし、今回の作品は一時的なもの、期間限定みたいな感じだ。なんだか井上雄彦が廃校になった学校の黒板にチョークで漫画を描いていたのを思い出した。あの時はスラムダンクの続きを描いたんだったっけ。

バレットはラップトップからグーグルで検索したアメコミの写真を僕に見せてくれた。スパイダーマンとかバットマンとか、よく見かける感じだ。

 

 

「それでー、どんな漫画を描けばいいんですか?」

「ああ。そうだったね。我々”System Partners”を主人公にした漫画を描いてほしいのさ!」

 

 

ざっくりとした内容はこうだ。

システムパートナーズがビジネスパートナーを競争他者をモデルにした悪者から救う、そういった内容の話だった。

 

 

「それで、いくら払えばいいのかな?」

「いや、できてから、そちらが決めてください。僕もホワイトボードに漫画を描くのは初めてのことなので、どんなものかはまだわかりませんし」

 

バレットも仕事の途中だったので、これ以上グダグダと時間をとるのは悪いような気がした。僕はサクッと打ち合わせをして、明日もここに来ることを決めてオフィスを後にした。

 

 

 

まず向かったのはオフィス用の事務用品が売られている店だった。いつ、どんな国でも、文房具を扱う店に来ると僕はテンションが上がる。

いくつかあるホワイトボード用のマーカーから一番しっくりくるものをピックアップした。道具の費用は向こうが出してくれるとのことだったが、買いすぎてもしょうがないので、極太マジック2本、通常サイズ2本、それにカラーを3本買っておいた。それだけで34AUドルもした。えっと、今レートが下がってて1AUドル=80円だから、「34×80円=¥2,720」か。それでも高えよ!

 

道具を仕入れると、スワントン・ストリートもスターバックスで充電をしながら二時間くらいキャラクターデザインに取り掛かった。アメコミといえども、話がざっくりしすぎていて、どんなキャラクターにすればいいのかよく分からない。

一番最初に作ったのはシェパードをベースにした二頭身のミニオンズみたいなキャラクターだった。

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もちろん、ずっと壁画漫画に時間を費やすわけにもいかない。

今日は丸一日時間があるわけだし、バスキングをやらないわけにはいかない。昨日は全然レスポンスがなかったけど、今日はどうだろうか?

 

 

スターバックスを出るとスワントンストリートの同じ場所でいつものように漫画を描き始めた。

だが、レスポンス薄さは相変わらずだ。

昨日も路上で会ったハーフのエミちゃんに似顔絵を描いたり、中華系の男の子の似顔絵を半ば無理矢理描いて、そこから次のオーダーにこぎつけた。

似顔絵をオーダーしてくれた人たちの感触はかなりよかった。値段は向こうが決めるシステムなのに30ドルとか支払ってくれる人もいた。「うわ〜!これ超クールだよ!」と言ってくれるレディ・ガガみたいなエッジの効いたファッションをした女のコたちもいた。

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似顔絵を描かせてくれるなら、その人を喜ばせる自信は、ある。

ここで僕に求められているのはもっと別のことなのかもしれない。

ここのバスカーはやっぱり音楽が多いのだけれど、みんなアンプをもってやっている。自分を引き立てなくてはオーストラリアでやっていくのは難しいのだろう。

 

 

五時間以上やって今日のアガリはやっと54ドルとかだ。

ここでワーホリをしている日本人の女のコに会ったんだけど、そのコが言うには「一時間20ドル」の時給らしい。平均六時間働くとして一日120ドル。それにチップが加わるんだろう。うおお、ならまとも働いたほうが稼げるじゃねえか。

なるほどね。だからオーストラリアに来るわけだ。そのコも「出稼ぎに来ました」と言っていた。

 

 

寝るまで時間はスターバックスに閉店まで作業し、その後マクドナルドで作業という流れだった。壁画漫画の方は絵コンテまで完成。

こっちの進行はいい感じだ♪

 

 


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