「似顔絵大会は突然に」

世界一周293日目(4/17)

 

バックパッカーに
定評のある宿、

「Vali’s No Smoking Homestay」

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最近物価が上昇したのか、
宿の経営方針が変わったのかは知らないけど、

2014年3月の時点でこの宿の宿泊費は
イランで泊まったどの宿よりも高いかった。
ドミトリーで10ドル。

しかも他の宿だったら
フリーでWi-Fiが使えるのに
一日1ドルもとる。

だって3泊したら
単純に3千円以上かかるんだよ?
インドだったら何泊分だっつーの!

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待て待て。

インドが安過ぎたんだ…。
ここはイランだぞイラン。
ぱっとみ字面だけだったら名前に似てるけど。ぶつぶつ

 

 

それでも僕はここで
朝食を食べてみることにした。
ダブルルームに泊まっている
ドイツ人のお兄さんたちは

「ここのご飯は最高だったよ!」

と夕食(ちなみに5ドル)を
ベタ褒めしていたからだ。

バリーさんご家族と一緒に食事をするらしい。
うん。ホームステイっぽくていいじゃないか。

さすがにご飯に5ドルはかけられないけど、
朝ご飯くらいだったら食べてみてもいいかもな。

イランに来てからペルシャ語表記オンリーの
メニューばっかりで、宿の朝食以外はいつも
40,000リエル(150yen)くらいの
ハンバーガーやサンドイッチばかり食べていた。

どうせ外でバーガー喰うんだったら、
2ドル払ってしっかりしたものを食べよう。

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宿のママさんに声をかけて
朝食の用意をしてもらう。

出て来た朝食は残念ながら
期待以下のものだった。

僕が声をかけた時間が9時過ぎで
遅かったのかもしれない。

いや、ちゃんと訊いたんだよ?
「まだ朝食食べられますか?」って。

朝食のない様は、口の水分を
ごっそり持っていくパサパサした茶色いパンと
イランでよく見かけるグニグニしたナン
(何枚かは誰かの食べかけだった)。

申し訳程度のバターや酸っぱいチーズ。
アツアツじゃなくて生暖かい卵焼き。
そして紅茶と角砂糖。

バリーさんはゲストハウス以外にも
いくつか仕事を手がけているそうで
あまり宿には姿を見せない。

ママさんが用意してくれた朝食を、
生活感漂うダイニングのテーブルで一人で食べた。

外でハンバーガー食べた方がよかったなぁ…。

 

 

 

 

朝食を食べた後、
僕は宿に顔を出したバリーさんに
宿泊費を払おうとした。

「朝食食べたから12ドルだよね」

50万リエルをバリーさんに渡す。

 

「えっと、
12ドルは38万リエルだから、
12万リエルのお返しだね」

えっ?なんかおかしい!?

レートアプリで確認すると
12ドルは306,300リエルだった。

 

「ちょっとこれ見てよ!
そのレートおかしくない!?」

「いや!これはイランのレートだ。
だから38万で正しい」

 

なにぃぃ…?

 

ただでさえ10ドルとか高めの料金設定のくせに、
レートまで悪いだなんて…。
他の宿はレートに正確だったぞ?

納得いかなかった僕は思わず
持っていた20ドル札で支払いを済ませてしまった。

ドル払いだったため、いくらか多めに
リエルが返ってきたが、
今思うとドルなんかで支払う必要はなかった。

ドルの使用機会は多い。
こんなつまらない場面でドルを
使う必要なんてなかったのだ。

ただ、僕は損をしている気に
なってしまったのだ。
リエルの桁もデカい。数字のマジックだ。

だって結局のところ
2ドルくらいしか変わらなかったのに…。

 

 

支払いを済ませるとバリーさんは

 

「お金は争いを生む。
これで支払いは終わったから
大丈夫だね♪」

 

とフレンドリー・バリーを演じていた。

いや、実際いい人なんスよ。
今日の夜テヘランに列車で向かう僕に対して

「チェックアウトしても
時間まで宿にいてくれていいからね」

と申し出てくれたくらいだ。

あ~、嫌だね。お金の問題ってさ。

 

 

 

 

 

 

 

支払いを済ませて
僕はパソコンを開いて日記を書いた。
できることならネットにつないでおきたい。

宿を出て行くドイツ人のお兄さんに
Wi-Fiのパスワードを尋ねると、
医者志望の記憶力の良い彼は
ばっちしパスワードを教えてくれた。

まぁこれでおあいこね。

お昼までブログのアップやら情報収集をして
僕は宿を後にした。ここにいても
グダグダと時間を過ごしてしまうだけだ。

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次のお客さんはルーマニアのサイクリストだった。

 

 

 

荷物一式を持って向かった先は
1kmほど離れたシネマの前。

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昨日モスク周辺で
バスキングをして注意されたけど、
ここなら大丈夫っしょ!

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車の走行音でシャウトして唄った。

もう上手いのか下手なのかわからない。
声量があるのかないのか、
ギターの音が聞こえているのかいないのか。

それでも、ボチボチのレスポンス。
これで宿代その他と相殺って感じだ。

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そのまま歩いて駅に向かった。
時間調整と他のバスキング場所探しだ。
テヘラン行きの列車は12時。
現在15時過ぎ。あと8時間以上ある。

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途中で見つけたのは広場にたたずむ
祈りを捧げる人たちの銅像。

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ここで唄ったら
気持ちいいだろうなぁ~。

という自己満足で
人通りとか関係なしに唄った。

人がポツリポツリと集まり始めると
レスポンスが入り、警察が注意をしにきたところで
僕の路上演奏は終了。

あぁ~、外で唄うって気持ちええわぁ~♪

ジャイアンの気持ちがよく分かる。
聴いてくれる人がいるとね、
なおさらっすよ(笑)。

IMG_5494 「うわぁ〜ん!行きたくないよぉお〜!」
「いいから来い!チケットが売れ残って困ってたんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろん自分が
やるべきことは

路上演奏だけじゃない。

駅のカフェで漫画製作に取りかかった。

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いい感じのテーブル。

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決して明るくはないが、
かと言って暗すぎない照明。

10,000リエル(40yen)の紅茶を頼んで
僕は原稿用紙に下描き始めた。

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ここのカフェのスタッフは
かなりフレンドリーだった。

カフェのテーブル一台を
一人で使っているのにも関わらず、
文句らしいことは何一つ言って来ない。

「私の顔を描いてくれ」と言う
おっちゃんスタッフの似顔絵を
裏紙に描いてあげると、嬉しそうに
その裏紙を持って行った。

「おかわりいるかい?」
と新しい紅茶までくれた。

 

 

音楽もそうだけど、
漫画も国境を越えるよ。

仕事終わりのスタッフたちと
このカフェのマネージャー(と言っていた)は
僕のテーブルに集まってきて製作現場を見学した後、
さっきのおっちゃんと同じように
似顔絵をリクエストしてきた。

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「そんなに紙持ってないんだよね」

と言うと、
彼らはA4サイズの両面白紙持って来た。

僕はそれに0.9のシャーペンで
彼らの似顔絵を描いていった。

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気づいた時には
僕のテーブルで似顔絵大会が
開催されていた。

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漫画の下描きの続きに
とりかかる暇も与えてくれない。

「次は私ね!」と
キッチンで働いたこまでやって来て、

 

うん。女子のみなさん、

髪が見えればもうちょっと
描きやすいんですけどね…。

イスラム圏に暮らす女のコたちは
どこで自分のオリジナリティを出すのだろう?

メイクとかアクセサリーとかかなぁ。

もはや「顔」で
勝負なのかもしれない。

IMG_5529スタッフの一人が描いてくれた僕の似顔絵…らしい。

 

 

似顔絵を描いたり、
店内でギターを弾いたり、
時間はあっという間に過ぎていった。

スタッフのおっちゃんはさっきから
何杯も紅茶のおかわりを持ってきてくれる。

イラン楽し過ぎだな。
彼らのフレンドリーさは
旅人を退屈させないだろう。

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「私の顔も描いてくれないか?」

そんな中、頭にターバンを巻いた
イスラムチックな服を着た
落ちついた雰囲気の方が
声が声をかけてきた。

時々街で見かける宗教色の強い衣装。
何の仕事に就いている方だろうか?

こっちもちょっと緊張する。

僕が描いたその人の絵は
着ている服がどんなんだったのか
分からなかったため、足の方があやふやだった。

「なんだかゴーストみたいだね」

とその人は優しく笑った。

 

 

「君は何時の列車に乗るんだい?」

「12時のテヘラン行きです」

「そんなに遅いのか。
もしよかったら私と一緒に行かないか?
チケットは買い直せるよ」

「いやぁ、
一番安いチケットなんで…」

「差額は私が払おう」

 

なっ、なんだ
このシチュエーション!!??

カフェのスタッフたちが
「早く片付けな!」と僕をせかす。

でもなぁ、こんな身なりの
しっかりした方に
僕みたいな貧乏バックパッカーが
ご一緒させてもらっていいのかなぁ?

コーランの話2時間もきかされたらどうしよう?

 

 

『面白い方へ』

 

 

そんな言葉が頭の中に浮かんだ時、
僕の迷いはどこかにふっとんだ。

テーブルの上に散らかった
漫画の道具を片付けて、
忘れ物がないかチェックして
カフェのみんなにバイバイする。

プラットフォームへの自動ドアには
ターバンの方の姿が。

僕はバックパックを背負って
ダッシュで追いついた。

 

 

 

ターバンさんの後について入った車両は…

 

一等車だろ。

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4席から成るコンパートメントには
ティーパックやお菓子が2セットと
どちらからでもテレビが見れるように
椅子の間の頭くらいの位置に2つ。
もちろん寝台だってある。

先客は若い夫婦だった。

手渡されたチケットの値段
を確認すると20ドルくらい。

ちなみに僕がもともと持っていた
座席のみのチケットは6ドル。

 

 

 

「私の職業がなんだか分かるかい?」

ゆっくりと分かりやすい英語で
ホセインさんが僕に尋ねる。

 

「なんですか?」

「”religious man”だ」

「は、はぁ」

 

たぶんお坊さんや
牧師さんみたいなものなんだろう。

僕は失礼にならないよう、
椅子にはもたれかからずに座り、
相手の目を見て話しを聞くことをこころがけた。

 

 

「私も若い頃は自転車で
イラン中を旅したことがあったんだよ。
その時は1ヶ月以上かかったかな」

というホセインさん。
そんな若い頃の旅の経験があって
僕に声をかけてくれたんだと思う。

たわいもない話をしばらく続けた。

列車がどこかの駅に停まった時に
ホセインさんがふいに言った。

 

「今からお祈りをするけどついてくるかい?」

 

列車が停まったのは駅ではなく、
「Mosque」と書かれていた。

靴を脱ぎ祈りの場へホセインさんは入っていく。
一面に絨毯が敷かれたスペース。
一人分の祈りを捧げる空間が区切られていた。

イスラム教徒は一日に5回お祈りをする。

直立で祈りの言葉を呟き、
何かのささやきに耳をすませるようにして
両手を耳の後ろで広げるしぐさをし、
そのまま膝を折り、正座をして
床に頭をつけて祈りを唱える。

ホセインさんの他にも数人
この場所でお祈りをする人がいた。

僕は後ろの方で正座して、
ホセインさんが祈る姿をじっと見ていた。

 

 

 

僕が思ったのは

「信じることは思考停止なのか」

ということだった。

 

 

バラナシで出会った、
年配の編集者の方の投げかけ。

僕はその哲学じみた質問をやり過ごしたけど、
こうして神に祈りを捧げる人を前にして、
その問いを思い出さずにはいられなかった。

僕がその質問をホセインさんに投げかけると

 

「祈りは神とコンタクトをとる手段なんだ。
神は我々に語りかけてくれるんだよ」

 

と説明してくれた。

日本語で宗教を理解するのも難しいのに、
それを英語で説明、理解するのは難しい。

もっとイスラム圏に身を置かないと
その感覚を分かることはできないんじゃないかな。

 

 

 

 

その後もホセインさんとの対話は続く。

「見てごらん。あれがガス・プラントだよ」

と闇夜にライトアップされる
ガス工場の存在を教えてくれた。

 

「イランはアメリカとの
経済的な国交がないが、
だからと言って経済が遅れているわけじゃない。
資源だってあるし、イラン独自の
車のメーカーだっていくつかある。
そしてイランの経済発展には
核エネルギーが必要なんだ」

 

その言葉を聞いた時、
なんとも言えない気持ちになった。

日本はその利便性に頼り過ぎたばかりに
「核」の深刻な災害に悩まされることになった。

利権問題は複雑に絡み合い、
新しいエネルギーへと転換しようとしても
足の引っ張り合いのような事態が
起こってしまっている。

核廃棄物はどうなんだ?
臭い物にふたをするように、
一番重要な部分は上手い具合にはぐらかされる。

時代は繰り返してしまうのか?

「核」の甘い蜜を吸いまくった日本のおごりなのか?

ニュークリアーに頼らない
経済の発展はないだろうか?

 

 

23時をまわるとホセインさんと
僕は寝台を広げ、お互い上段のベッドに上った。

街灯のない真っ暗な荒野を
電車はひたすらに走る。

この線路はイランの首都テヘランへと続く。

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