「夜空。揺れる炎」

世界一周219日目(2/2)

 

ネパールの
朝は寒い。

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ちょっと早起きしたところで、
ベッドから出る気にはなれない。

今眠らせてもらっている部屋は
ビジェイのお父さんと一緒の部屋。

ここに来てから特にiPhoneのアラームを
かけるようなことはしていない。

ビジェイ一家と同じ生活リズムで
僕の一日が始まるのだ。

 

 

起きたのは10時前。

あれ?みんなと一緒の
生活リズムはいずこに?

や!ちょと待って!
弁解させて欲しい!

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ビジェイ家のご飯のボリュームは
かなりのもんなのだ。
ガッツリレベル。

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僕の一日の食事量の半分くらいはある。
それにビジェイの食べるスピードは
かなりのものなので
僕もそれに負けじとガツガツ食べる。
もちろん美味しい♪

それに
一日に4回くらい出される
甘いブラックコーヒー。

大きなマグカップに並々と入っている。

 

貧乏性の僕がめちゃくちゃ喜んだのは
言うまでもない。

 

まぁー…
何が言いたいかと言うとですね、

 

食べ過ぎです(笑)

 

『やべえ…
朝メシ喰う気しねえ…。
寝よ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブラザー!
(時々ビジェイは僕のことをそう呼ぶのだ)
今日は歩いて15分くらいの
妻の両親の家に行こう」

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ビジェイのうちの裏には
小さな家庭菜園がある。

 

「貧しかった頃は
ここに家が建っていたんだ。
トイレなんてこれさ」

 

と言って菜園にある
こじんまりとしたトイレを指差すビジェイ。

一念発起、マレーシアへの出稼ぎの末、
DXNというグローバル企業に
就職することができたビジェイ。

めちゃくちゃ頑張ったんだろうな…。

 

 

 

インド人顔のおっちゃんと立ち話。

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こういうのを見ると
小さなコミュニティの繋がりを感じる。

「立ち話もなんだから、
うちでコーヒーでも飲んでいってくれ!」

そういって不動産業を営むおっちゃんの家で
コーヒーをごちそうになった。

ここに来てから
コーヒーめちゃくちゃ飲んでるなぁ…。

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「彼もね、今の職に就く前は
色々な仕事を経験してきたんだよ。

そのどれもうまくいかなかったんだけど、
今はこうして不動産業で
暮らしていけるようになったんだ」

ビジェイもそうだけど、
さっきのおっちゃんも
ガッツのある人だったんだ。

その優しさは今まで
くぐり抜けて来た苦労によって
培われたものなのかもしれない。

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畑のあぜ道を通り抜けるのは
ちょっとしたアドベンチャーだ。

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僕の母親の実家を思い出す。

埼玉県、籠原という小さな町。
小さい頃、畑や田んぼで
ザリガニ釣りして遊んだ。

 

ビジェイの奥さんの実家で
クッキーを食べながらサッカー観戦した。

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今回ごちそうになったのは
ジンジャー・ティー。
飲み過ぎるとトイレに行きたくなる(笑)

奥さんの実家のみなさんも
ニコニコして温かく僕を迎えてくれた。

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あぁ、なんかこういうのいいなぁ。
「家族」を感じる。

ガキの頃はそういう親戚同士の付き合いが
退屈に感じたけど、今はその良さも
理解できる歳になったのかもしれない。

 

インドに来る際に一緒になった
ビジェイの義父さんと。

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分かりやすくネパールの言葉で
何かを僕に説明してくれた
みたいなんだけど…

ネパール語は
さっぱりわかりません。 

みんな爆笑してた(笑)

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「午後からは
ネパールガンジにあるオフィスに行くけど、
ヨスケはどうする?」
ちなみに僕の名前は「陽介(ようすけ)」だ。

「僕は絵を描くよ」

「そうか。
それじゃあ僕は3時か
4時には戻ってくるから」

 

そう言ってビジェイは
僕に作業場を与えてくれた。

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やっぱり僕はお金のことを
どうしても考えてしまう。

使わせてもらっているベッドは
本当は家族の誰かが
使っていたものなのだろう(実際そうだと思う)とか。

毎日の食事とコーヒーは
やっぱりどこからか
買って来ているんだろうなとか。

そういうにに対して、
お金のやり取りは発生するものだろうか?

たまたま国境で会った日本人に
ここまでしてくれるホスピタリティーは
どこからやって来るんだろう?

 

だけど、僕にはそんなに
沢山お金を払うことはできない。

「ありががとうございました。はい5千円♪」
みたいにね。

 

 

 

自分にできることー。

 

 

 

作業机に向かって
ビジェイの家族の絵を描いた。

寒さで鼻水がしょっちゅう出るし、
かじかんだ手で上手く線を引くことはできない。

描かないスパンが空いてしまうと
やっぱり下手になる。

日本から持って来た限られた数の色ペンでは
表現できないところもある。

 

できあがった絵は漫画家としては
アレなレベルだけど、温かさは描けた。

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返ってきたビジェイに絵をプレゼントした。

「おお!サンキュー!」

喜ぶビジェイ。

 

そのワンフレーズで僕は嬉しいんだ♪

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『さてと、
ブログの下描きでも
しましょうかねぇ…』

とパソコンを広げて
しばらくすると
ヤツが来た。

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ダッシュでトイレに駆け込む。

 

原因は分かってる。

 

 

 

食い過ぎだ(笑)

 

 

 

これでも7ヶ月いろんなところ
を旅してきたんだ。
どうして自分が今こうして
「はうあっ…」ってなってるのか分かってる。

中国でメシの上手さに
一日5食くらい食べていた時のあの症状。

あの時はー…そうだな。
一日アイス5本くらい食べてたね!
おかげで4キロ太ったんだった。
今は体重計に乗ってないから分かんねーけど。

 

とりあえずインドの下痢止めを
半錠噛み砕いて飲んだ。ベッドに横になる。

 

「おーい!ヨスケ。
奥さんの実家に行こう!」

「うっ…うん!
その前にー…
トイレ行っていい?」

 

 

 

寒空の下、
バイクに二人乗りして
電灯のない夜道を走る。
星と月が見えた。

「ビジェイ、
僕は奥さんの実家に行けるけど、
メシは喰えないから!」

 

 

 

停電でロウソクの灯る真っ暗な家。
家の裏でみんながたき火を囲んで
楽しそうにしている。

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「ネパールではね、
この季節こうして食事の後に
みんなでたき火を囲むんだ」

「へぇ…」

 

パチパチと音をたてて燃える
薪とゆらゆらと揺れる炎。
炎を見てるとどこか落ち着いた。

 

「ヒンドゥー教ではね、
炎は神様の力が宿るとされているんだ。
人は生まれた時に火の温かさを必要とし、
人は死んだ時に火を必要とする。
だから食べ残しとかは
火にくべたりしないんだ」

 

おじいちゃんが乾燥した
トウモロコシの芯を
持って来てそれを火にくべた。

 

「こうやって食べ終わった後も
燃料として使えるだろ?
それに灰は肥料になるんだ」

 

ビジェイの家庭菜園もオーガニック。
化学肥料は一切使っていない。

日本で時々耳にする僕は、
遠くは慣れたネパールで
体験することになったのだ。

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「ほら、お食べ」

おじいちゃんが次に持って来たのはターリー。
じいちゃんにも食べれないって言ったのに…。
いじめか!!!?

 

「び、ビジェイ、僕、
これ以上食べれないって言ったー…

うえっぷ…
気持ち悪くなってきた…」

 

そのままビジェイの奥さんの
実家のベッドにダウン。

20分ほど休ませてもらって、
ビジェイの家に戻った後、
歯を磨いてソッコーでベッドに横になった。

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でもさー、やっぱ家族ってあったけーわ。いつかは僕もー…。

 

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