「わざわざ砂漠で寝るだなんて物好きだよ。僕たちは」

世界一周557日目(1/6)

 

 

5:45

にセットしたアラームが鳴った。

 

 

『うっ…、あと15分だけ…』

 

 

僕の眠る二段ベッド(梯子のついてないやつだ)の上から
マサトさんがまだ寝ているのを見て、
起きられなかった時のために予備でかけている
6時のアラームまで掛け布団の中に頭をうずめた。

 

 

ここはエジプト、カイロ
これから向かうは砂漠だ

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前日ダハブから一緒に来たみんなから
「白砂漠、黒砂漠に行こう!」と誘われた。

ツアー料金は240ポンド(3,953yen)。

 

 

いつもなら「ツアーに興味ないんだよね」と言って、
お金をケチっているところだが、
みんなの誘いに乗って僕も連れて行ってもらうことにした。

ダハブで一時期
一緒のディープ・ブルーに泊まっていた
ムツブくんが僕たちのために
ツアーを申し込んでくれたというのだ。

 

 

聞いた話によると、
砂漠ツアーは普通に申し込めば
9000円もするところなのだが、
彼はまとまった人数でツアーに参加するからという理由で
半額までに値切ってくれたと言うのだ。

建物の2階にある「スルタン・ホテル」で申し込んだらしい。

 

 

 

 

回りのみんながテキパキと
パッキングをしているのを見て僕もベッドから降りた。

チェックアウトする形で
メインのバックパックを宿に置かせもらうことにした。

サファリ(今僕たちが泊まっている宿だ)のスタッフは
とても親切で「どうぞ、どうぞ」と言うように
僕たちの荷物を預かってくれた。

砂漠ツアーは一泊二日。

明日にはまたここに戻ってくる予定だ。

 

 

 

 

砂漠のある町までは自
分たちでバスに乗って行くことになる。

夜が明けたばかりの東の空が
ほんり明るいカイロの町を僕たちは歩いた。

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外はダハブに比べると、だいぶ寒い。
吐く息が白くなるくらいだ。

そんな中で早朝から仕事にとりかかる
エジプト人の姿をチラホラ見た。

早朝の町はどこも危険な感じはなかった。

 

 

 

バスターミナルは宿から歩いて
8分ほどのところにあった。

チケットがイッチーの手から配られる。

チケットを受け取ると、
そのまま58番乗り場から僕たちはバスに乗り込んだ。

 

 

ウトウトしていると
バスはいつの間にか走りだしていた。

外の景色を見るまでもなく、僕は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝7

時半にカイロの町を出発したバスは、
僕が眠りから覚めた時もまだどこかを走っていた。

出発から6時間でようやく砂漠の町に着いた。

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バスを降りると、
そこは小さな町で、車が通ると砂塵が舞った。

ツアーのガイドが僕たちを迎えてくれ、
僕たちは昼食を振る舞われた。

 

 

そのタイミングでツアーガイドのアラン
「砂漠の入場料を払ってくれ」と言い出した。

砂漠の入場料は45ポンド(692yen)。

僕はツアー料金の内訳は知らないが、
ツアーを申し込んだ時点で全てが含まれている手はずだった。

 

 

「これは断固たる拒否だな」

 

 

自信を持ってイッチーが言う。

交渉担当のイッチーが英語でペラペラと意思表示をする。

スタッフたちは困った様子だった。

 

 

最初はツアーを申し込んだスルタン側の
落ち度のように思えた。

だが、ここまで来るのに100ポンド近くかかるのだ。

往復分で一人にかかるツアー料金が相殺してしまう。

そこから砂漠の入場料を差し引くと、
ツアーガイドに入るお金が
10ポンドそこらになってしまう計算だった。

 

 

僕は払ってもいい気になって来たが、
イッチーの「絶対に払わない!」熱意に押され、
黙って成り行きを見ていた。

結果的に、スルタンホテルにスタッフたちが
後日請求するということで話がまとまった。

僕たちはお金を払わなくてもいいことになったが、
どこか後ろめたい気持になった。

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昼食を食べ終わると僕たちは
ランドクルーザーに乗り込んだ。

町を出ると、道は荒野と砂漠を
突っ切るように果てしなく伸びており、
車の一番後ろに座っていると
どこからともなく小さな砂の粒子が舞い込み、
着ていたパタゴニアのアウターには
いつの間にか砂が積もっていた。

 

 

 

車内ではイッチーの下ネタトークが炸裂した。

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僕は下ネタがあまり得意ではなので、
特に会話に参加することはなかったが、
聞いているだけで笑えるようなものばかりだった。

いつの間にか、大学生のケイスケ君が
ゲイ(っていうかオカマ)の設定になっており、
「いやぁね!トシちゃん!」と言って、
イッチーと股間をまさぐり合っている姿は
端から見ると馬鹿らしいけど、

それがかえってツアーの雰囲気を
面白おかしなものにしてくれた。

 

 

イッチーからはポンポンと話題が出てくる。

下ネタに動じない女子二人に僕は感心してしまった。

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砂漠を30分以上突っ走ったところで
ランドクルーザーは止まった。

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後ろの扉が開けられ、
外に出ると一気に冷たい風が僕たちに吹き付けた。

ガイドのアランからは
ここが黒砂漠だと説明された。

目の前に広がる光景は確かに見応えがあったが、
想像していたよりも黒い印象は受けなかった。

 

 

アランは
これは溶岩が固まったものらしく、
もろいため数十年後には黒い砂丘そのものが
なくなってしまうのだと説明してくれた。

試しに、拾った岩石同士を叩き付けると
岩石はパラッと崩れた。

 

 

近くに山があったので、元気な大学生二人が
トコトコと頂上を目指して登り始めたのだが、
3分の1も行かないうちにアランから
「危ないから」とストップがかかった。

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「もう次の場所に行くぞ」

と早急に車に乗せられる。

そこまで見る場所はなかったとしても、
黒砂漠の滞在時間は15分もなかった。

 

 

 

途中景観のいい場所で降りて写真撮影会があったが、
それも5分もかからなかった。

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「ほら!車に乗った!」
「えっ?もう?」

 

 

なんだか忙しいツアーだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たちが次に降りたのは
クリスタルが砂に混じった場所だった。

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砂を手に取ると、
中に透明な結晶が混じっているのが分かった。

みんなはクリスタル広いに夢中になった。

アランだけがスタスタと歩き、
僕たちも遅れをとらないように、
クリスタルを広いながら彼の後を追った。

 

 

小高い岩山の上に立つと砂漠一面が見渡せた。

砂煙で遠くの方は薄く幕が張ったように滲んでいた。

僕たちはそこからの光景に息をのんだが、
アランは「寒いから」と言って
さっさと車の中に戻って行った。マイペースなやつだ。

 

 

僕たちはクリスタル探しや
写真を撮ることに夢中になっていたが、
いつの間にかイッチーの姿が消えていることに気がついた。
きっとクリスタル採集に夢中になっていることだろう。

どこからともなくふらっと戻って来たイッチーに
「どこに行ってたの?」と尋ねると、彼が放った一言は

 

 

 

「うんこ」

だった。

 

 

どこまで本当か信じられないから怖い(笑)

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ツアー自体は、目当ての場所に行くよりかは
移動時間の方が圧倒的に長かった。

車内ではかならず一人か二人が居眠りしており、
イッチーは絶えず下ネタを振りまいて
他のみんなを楽しませていた。

 

 

 

 

次に降りたのはメインの白砂漠だった。

カッパドキアを彷彿させるキノコみたいな形の奇岩が
ポコポコと至る所に生えている。

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風のせいで、地面の砂は不思議な模様ができていた。

まぁ、見応えあったな。

一人だったら来なかっただろうけどね。

 

 

僕は一人で旅をする方が気楽で好きだが、
グループで旅をするいい点というのも理解できた気がする。

日本では、海外旅行を全くしたことのない人間が、
サイトを通じて同じ旅先に興味を持った人を募って、
グループで旅するものがあることを知っていたが、

なるほどね。
確かにみんなで行った方が楽しい時もあるよね。

 

 

 

そう考えると、こうして僕を
ツアーに誘ってくれたみんなの存在がありがたかった。

あっちは気楽に誘ってくれたんだろうけど、
あの体験は今少し時間を置いて振り返ってみると
貴重な体験だったってことがよく分かった。

きっと、日本に帰ったあとも、
みんなで砂漠に行ったことはずっと覚えていると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3つ

の砂漠を見終わり、
ランドクルーザーは来た道を引き返した。

辺りはあっという間に暗くなり、
僕は何度もウトウトしていた。

車内では相変わらず下ネタトークが繰り広げられており、
議題は

「一番好きな体位はなにか?」

ということだった。

 

 

「俺っすか?
俺は”松葉返し”っすね」

「あぁ~~~!
“松葉返し”ね~!
良い線いってるなぁ!」

 

 

意外に大学生の知識は凄い(笑)。

てか体位にそんな名前ついてたの?渋いな…。

 

 

 

 

 

四方を岩に囲まれた場所に車は停車した。

今日はそこでキャンプするらしい。

空には満月から数日しか経っていない月が
辺りを照らしていた。

ライトをつけなくてもぼんやりと影ができた。

風は勢いを増し、
僕は持って来たブランケットで首元を覆ったが、
それでも寒さを感じた。

 

 

ツアーガイド二人はそんな風の吹き付ける岩場で、
車を一面の壁と見立てて、
三方を囲む、かこいを作ってくれた。

風が遮ることができると、
今度は車に積んでいた薪を下し、
僕たちのためにたき火をおこしてくれた。

火がつくと、晩ご飯の調理に取りかかった。

 

 

なんだかんだで、
ちゃんと仕事をしてくれるツアーガイドたちだった。

女のコの誰かが「あとでチップあげなきゃね」と呟いた。

 

 

料理ができるまで、
僕たちは震えながらたき火を囲み、話をする他なかった。

通年のツアーだから、
こんな寒い時期にわざわざツアーに参加する僕たちは
どれだけ物好きなんだろう?

寒さのあまりに貧乏揺すりをしながら僕は考えた。

 

 

 

煙がしょちゅう目に入り、目から涙が出た。

たき火の横においたヤカンの水が沸騰すると、
ご飯の前に温かい紅茶が配られた。

小さなカップに入ったそのわずかな量の温かい飲み物が
どれだけありがたかったことか。

 

 

紅茶を飲むと、お腹の方がじんわりと温まった。

だんだん月が高く登り、それに従い、
辺りもだんだん明るくなって来た。

 

 

囲いをの中で振る舞われた晩ご飯も、
想像以上に美味しかった。

 

 

ガイドのブラック・タイガー(あだ名)は
英語がそこまで上手くないので口数の少ないヤツだったが、
空いた容器を見ると「どうだ?おかわりするか?」
と気をきかせてくれた。

僕にもタバコをタダで一本分けてくれた。

 

 

 

 

 

「あ~!やべえ!
またおれ元カノと同じ仕草しちゃった!」

食べながら体を左右にゆすりながらイッチーは言った。

 

 

「ははは。何それ?」

「いや、ノリちゃんって美味しい物を食べると
「おしし~い~!」ってこうやったんだよ。
ノリちゃ~~~~ん!」

「ノリちゃ~~~~ん!」

 

 

僕たちはイッチーをからかって、
“ノリちゃんダンス”を踊った。

 

 

「ノリちゃ~~~~~~~んっっっ!!!」

 

 

そんなノリちゃんから結婚すると
報告が入った時のイッチーには同情せざる得ない。

イッチー、いい人見つかるといいね!

 

 

 

 

夕食が済むと、僕たちはまたたき火を囲んだ。

マットが置かれ、地面からの冷えを直に受けずに済んだが、
たき火の煙は相変わらずで僕は何度も涙を流した。

食後のミントティーがふるまわれ、それをすすりながら、
ぺちゃくちゃとトークに花は咲いた。

 

 

会話のトーンは違えど、
話されているのは相変わらず下ネタだ。

話されているのは女性陣に対する
「ほんとの所、それはどうなの?」という内容。

 

 

風よけの隅ではトークに加わらない男女が
毛布をすっぽり被って乳繰り合っていた。

 

 

 

22時を過ぎて、他のみんなよりも先に
僕は毛布の中に潜り込んだ。

支給されたのは厚手の毛布一枚で、
もってきたブランケットを使っても寒かった。

月は真上に昇っており、
顔を出すとまぶしかったので、僕は頭まで毛布を被った。

 

 

隣りからは乳繰り男女のポソポソとしたトークが聞こえるし、
たき火の方からは、ちょっとした青春トークが聞こえた。

 

 

 

1月の砂漠はアホみたいに寒かった。

特に足先からの冷えはハンパ無く、
一人では眠ることができなかった。

隣りにはガイドのタイガーがミイラのように眠っているが、
彼にすりつくことはできなかった。

僕にそういう趣味はないから(笑)。

 

 

 

みんながトークを終え、毛布に引き上げてきたところで、
僕はようやく寒さから開放された。

隣りに横になったケイスケくんに助けを求めた。

毛布越しに肩を寄せさせてもらい、足を重ねた。

 

 

 

人肌のぬくもりが
こんなに温かいものだなんて思わなかった。

毛布が体温によって温まると、
僕はそのぬくもりの中でようやく眠りに就くことができた。

 

 

 

旅先で出会った日本人がエジプトの砂漠で身を寄せ合って眠る。

これもなかなか悪くない。

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てか、ショウヘイくんがテントと寝袋持って来てたんですけど、
賢いなぁと思いました。

彼曰く、「インドのツアーで学んだ」らしいです。

でも、なんかいいよね。こういうみんなでいくツアーもさ。

あまりに居心地がよくて、
ズルズルグダグダしちゃいそうだからさ、僕はそろそろ行くね。

みんなありがとう。

 

 

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