世界一周644日目(4/4)
結局、
空港のスタッフに叩き起こされることはなかった。
少し前の情報だが、
2012年に快適に寝られる空港の第10位に選ばれたこともある空港
でもあったからだ。(てか誰がそんなこと決めたんだよ)
ここはカナダ、トロント、空港のベンチの上。
エティハド航空の飛行機から頂戴してきた薄手のブランケットは
なかなかに役に立った。
僕はトイレで身だしなみを整え、
ATMから140カナダ・ドルを引き下ろし、
無料でプリントアウトできる機械で
アメリカ出国のチケットをプリントアウトした。
最後にここから街に出るのにどうすればいいのかを調べて、
僕はようやく重たい腰を上げた。
外は気持のいいくらいの晴天だった。
どこか日本の冬の始まりみたいな寒さだった。
空港から街までは3.5ドルで街までアクセスできるということだった。
乗り場を空港のスタッフに訊き(なんなら複数人に訊いてダブルチェックし)
僕はバスに乗り込んだ。
どういうわけだか、バスはお釣りが出ないものだった。
手持ちの小銭が足りなかったが、運転手は
「それでいいよ」と2ドルちょっとで僕をバスに乗せてくれた。
トロント市街を囲む朝のハイウェイをバスはスムーズに走る。
当然ながら窓の外には英語で書かれた看板しか見えない。
キプリン駅に到着した僕は
そのまま地下鉄に乗り換えることにした。
料金はどこも一律3.5ドルらしく、
さっき乗って来た空港からのバスもそれに含まれているらしい。
これなら空港泊ってのもありかもしれない。
とりあえず街の中心地と思わしき場所で
僕は降りて見ることにした。
いや、実際は間違えてたんだけどね。
どういわけだか外にはほとんど人が歩いていない。
冬の空気を吸い込んで気ままに歩く僕。
今日は可能な限りトロントの街を歩き回ってみようと思う。
小さな売店に入ってみたのだが、想像していた通り物価は上がっていた。
朝の朝食代わりに菓子パンを食べてそのまま町歩きを再開した。
あ!まるこさん、ワーホリに来てたんですね!
トロントの町にはウォールペイントが沢山。
僕としてはこれを見るのは楽しかったな♪
CNNのタワーまで行ってみたのだが、
そこまで賑わっているようには思えない。
さらに僕は歩いた。
カナダ最大規模の都市と聞いて期待してやって来たのに、
あまりに静かだ。
僕は面食らってしまった。
トロントって
こんな街なのか?!
トロント
の街をほっつき歩いて見つけたのは、一軒のカフェだった。
入り口にはトリップアドバイザーのステッカーが貼ってあることから、
どうやらここは有名なカフェであることが分かった。
どうして僕がこのカフェに惹かれたのかと言うと、
単純にコーヒーとマフィンのセットが安かったからだ。
3.5ドルで食べらるのだ。
店主はマシンガントークをする人だった。
お客さんに誰構わずペラペラペラペラと何かを喋っている。
僕の時も簡単に質問されたのだが、一瞬で一方的なお喋りになった。
彼にとっては喋ることと呼吸することが同義でもあるように思えた。
それでも店主からは嫌な感じはしなかった。
ずっとトロントでカフェを営む話好きのおっちゃんっていった感じだ。
それにカフェの中に入ってみて分かったのだが、
内装も味が出ているのだ。
席数は窓際の席とテーブル席が4台ほど。
カウンター越しには黒板に手描きでメニューがかかれ、
入り口付近には小さな物販コーナーがある。
これは他のチェーン店には出せない味だ。
お店の人の好みが繁栄されている。まさにオリジナル。
途中で体が不自由なおばあさんが入って来た。
店主は紳士的に扉を開け、そのおばあさんを中に通す。
僕と相席することになった。
おばあさんはモソモソとした話し方をし、
ミルク入りのコーヒーをほんの一口飲んで、
またモソモソと何かを言うとどこかに行ってしまった。
僕もおばあさんとおしゃべりをしたのだが、
何て言っているのかちっとも分からなかった。
ネイティヴの英語というよりか、とても独特な喋り方をするという感じだ。
僕はマフィンをあっという間に平らげて、
パソコンを開くと日記を一本書いた。
今日の町歩き
にはルールがあった。
「極力マップを見ないで街を歩く」
というものだ。
だからこそさっきのカフェみたいな
思いも寄らない発見がある。
街の繁華街らしき場所。
グレイト・ハウンドのバスが発着するターミナル。
沢山のジャパニーズ・レストラン。
ゲイ公認の虹色の旗があちこちに掲げられた通り。
それでも人の数はまばらだった。
みんなどこかでまだ冬眠でもしてるようだった。
僕はこの街でバスキング(路上演奏)をするつもりだったが、
そんな気もどこかに失せてしまった。
結局マップアプリを開いて大好きなパタゴニアの場所を見つけると、
僕はそこに向かって歩き出した。
その途中でまた探していたものを見つけた。
画材屋も僕が立ち寄らずにはいられないお店の一つだ。
入っただけでテンションが上がる。
お気に入りのペンがここでも扱われていないかチェックしてしまう。
高っっ!!!
こうしていろんな国の画材屋さんに足を運んできたけれども、
日本の「世界堂」に勝る規模と品揃えの画材屋には未だ巡り会えていない。
もちろん画材屋さんがそれぞれ持つ「味」はあるんだけどね。
僕は消しゴムをなくしてしまっていたので、
ステッドラーの消しゴムを二個と
0.1ミリと0.2ミリの日本製のペンを二本、サインペンを二本、
そしてアイディア帳と小さなスケッチブックと買った。
今ちょっとした企画を考えている。
うまくいくは分からないけど、やる価値はある。そう思っている。
クレジットカードで大枚を叩き、そのままパタゴニアに直行した。
その途中でチャイナタウンも通り抜けた。
カナダは移民の国だ。街を歩いていると多くのアジア人を見る。
ここに昔から住んでいる人もいれば、
別の国からやって来た人もいるのだろう。時々中国語も聞こえる。
チャイナタウンを通り抜けるとこの国の一面が見れたような気がした。
パタゴニア
の看板を見た瞬間、僕の口角は自然に上がった。
もう僕はすっかり世界中のパタゴニアを巡るレポーターに
なっているのではないだろうか?
あ、レポートしてないな。単なるいいお客さんだ。
どこの国でもそうなのだが、
スタッフさんたちは僕のことを温かく迎えてくれた。
それよりも、僕がパタゴニア製品まみれの格好をしているので、
愛情が伝わっているのだと思う。
いや、なんだろね?単に好きなだけさ♪
僕が世界一周をしていることや、
トロント以前にアフリカを二ヶ月旅していたことを話すと、
スタッフさんたちはかなり僕によくしてくれた。
閉店一時間前で僕の他に客がいなかったってのもある。
沢山話すことができた。
そしてスタッフさんたちから、沢山のステッカーを頂き、
その中でも驚きだったのが
40%割引のセールス券を頂いたことだった。
「これね、4月30日までしか使えないけど」
こういうのってすげー嬉しいです。
40%ものディスカウントが受けられスーパーな券だっていうのに、
僕が選んだのは35ドルのボクサーブリーフだった。
今まで穿いていたH&Mのオーガニックコットンのパンツは
もうボロッボロで穴が空いては何度も縫って修理してきた。
完全に使えなくなってしまったのもある。
ここらで丈夫なヤツを手に入れたかったのだ。
消費税を入れて23ドル。
たぶん旅が終わるまでは僕をサポートしてくれると思う。
「またね!」と言って大好きなパタゴニアを後にした。
外は
すっかり暗くなっていた。
僕はどこかで時間をつぶせる場所を探した。
見つけたのは「Piza Piza」という名前のファストフード店。
なんと3.99ドル(税別)でピザのスライス二枚と
ドリンク(日本で言うMサイズ)、
それに加えてポテトチップスまで手に入るのだ。
ここに来て、僕はここがアメリカと陸地続きなことに気がついた。
量的にここはアメリカなんだと思う。
コンセントのない場所で絵を描いたり、日記を書いて時間をつぶした。
特筆すべきは
明らかにアバズレビッチな女のコが僕にハグを求めてきたことだろう。
僕はかなり戸惑った。
『もしやコイツおれの荷物を盗む気なのでは?』という疑念さえ浮かんだ。
何より奇妙だったのは、
ビッチは僕の後ろのテーブルに座っていたのだが、
彼氏も同伴していたということだった。
僕は彼氏に
「なぁ、コイツどうにかしてくれないか?」
とアイコンタクトを送ったが、彼氏は無言でニンマリするだけだった。
え?何?そういうのが好きなの?SMなのか?
僕はぎこちないハグをした。ちっとも嬉しくなかった。
なんなんだよ?分けわかんねー。
外を見ると雪が降り出していた。
通行人がフードを被っているのが見えた。もう何なんだよ..。
雪が止むのを待って、僕は外に出た。
外は一段と寒くなっていた。
トロントは僕のカナダの旅のスタート地点でもあり、ゴールでもある。
明日はモントリオールへ行こうと思う。
ヒッチハイクポイントと思わしき場所付近まで歩いて向かい、
近くの公園にテントを張った。
雪の上にテントを張るなんて初めての経験だった。
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