「レックスがいない…」

世界一周688日目(5/18)

 

 

「ヘイ!

あと一時間以内にここから出てってくれ!」

テントの外で誰かの声がした。

あ、やべぇ。もうそんな時間か…。

 

 

公園で野宿しているわけだが、もちろんチェックアウトがある。

清掃員が来るのは7時らしい。
ここにもう数日寝泊まりするつもりなので、
次回以降はそれまでに出て行かなくちゃダメだな。

 

 

ここはアメリカ、ポートランド。滞在4日目。

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昨日気づいたのは
ワシントンパークから歩いて5分の場所にある
“Fred Meyer(フレッドマイヤー)”の三階には
個室トイレがあるということだった

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個室トイレがあれば洗濯はもちろんのこと、
頭を洗うことだって出来る。

三階という立地条件もいい。
スーパーのトイレはほとんど利用する客がいない。

またここにはミーティングルームもあり、テラスまであるのだ。

 

 

とりあえず客であることを証明するために
69セントのベーグルを三つ買って、トイレに直行した。

洗濯物を外で乾かし、コンセントで充電しながら、Wi-Fiに繋ぐ。

フレッドマイヤーはなんて素晴らしいスーパーなのだろう!

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だが、こんな恵まれた状況にずっと身を置いていることもできない。

11時頃になるとセキュリティに
「そろそろここから出て行ってくれ」と言われてしまったので
大人しく退散することにした。

 

 

 

 

 

 

 

次に向かったのは
Powell’s Books“という本屋だ。

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ここはその貯蔵量とユニークさから
ちょっとした観光地になっており、カフェも併設されている。
お土産だって売られている。立ち読みも文句が言われない。
まさにポートランドと言った本屋なのだ。

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僕はテーブル席について、日記を書いたり、
絵を描いて時間を過ごした。

こういうインプットの時間も大事だ。

 

 

 

ずっとここで作業するのももったいない気がした僕は
13時には作業を切り上げることにした。

どうせ寝床に行く前にはマクドナルドに行くのだ。
作業はその前にだってできる。

バックパックを背負ったまま、
iPhoneでパシャパシャと写真を撮っていると、
従業員のおじさんから声がかかった。
きっと僕を不審者扱いしているのだろう。

 

 

とっさに「トイレってどこですか?」と訊ねた。

するとおじさんは
僕のバックパックとギターをカウンターで預かると言った。
ここ以外の店でもある話だ。万引き防止だろう。

僕は身の潔白を証明するように「どうぞどうぞ」と
バックパックとギターを預け、トイレへと向かった。

その時気づいたのだ。

 

 

 

 

 

『レックスくんがいない』

と。

 

 

 

 

あれ?
そう言えば今日の朝はあったっけかな?

昨日はインド料理屋で写真撮ったな。

さっきまで座っていたテーブル席をチェックしてみる。
レックスはそこにはいない。

 

 

 

『おいおい!ふざけんなよ!
勝手にどっか行きやがって!』

 

 

 

僕は焦りより先に怒りに似た感情が浮かんで来た。

落としたとしたら、あそこか?

今日の行動範囲はかなり狭い。
どうせどこかに落ちているだろう。

 

 

 

まずは先ほどまでいたフレッド・マイヤーに向かった。

個室トイレや外のテラスまで見たが、そこにもレックスの姿はない。
徐々に焦りを感じる。

念のため、カスタマー・サービスに行って
落とし物の確認をしたのだが、クマのぬいぐるみはそこにはなかった。

あれ?ヤバいぞ。

ひとまず連絡先だけ書き残し、
寝床にしているワシントンパークへ向かった。
バックパックを担いで。

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焦りで歩調が早くなる。それに伴い汗もかく。

安全を考えて山の頂上にテントを張っているので、
そこまで続く階段を上っているとすぐに体が火照った。

そしてテントを張った場所にもレックスくんはいなかった。

 

 

 

『おいおい。マジかよ?
どこ行っちまったんだよ??!!』

 

 

 

もう一度パウエルズ・ブックスに行って
インフォメーションで訊ねてみるが、

なんの手がかりはなかった。

従業員は「お気の毒に..」そう言った。

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誰かの眼鏡は給水栓の上にあるってのに…。

 

 

 

the grateful deadのマスコットキャラクターであるデッドベア
何色もあるうち、相棒が僕に渡したのは
コズミックカラーのデッドベアだった。

 

 

「コイツらは双子の兄妹だから。
ちゃんと旅から戻って来て再会させよう」

そう言う相棒はちょっと乙女なところがあるなと思った。

再会

ドイツに来てくれた時に再会できたね。

 

 

出発直前に僕と相棒が出会ったドイツ人の面白いヤツ
「アレックス」から命名して、
双子のデッドベアの名前は「アレック」と「レックス」。

「どっちがいい?」と訊かれ、「アレック」でと僕が言うと、
相棒は「おれ、そっちが良かったのに」と言うもんだから、
僕はレックスを旅に連れて行くことにした。

 

 

 

旅の始めはなくさないようにサブバッグの中に入れていた。

写真を撮る時にサブバッグの下の方から
引っぱりだして記念写真を撮っていた。

『これじゃあレックスが旅の景色を見れていないな』
と思ったこともあった。

 

 

 

チェコで盗難に遭った時、
僕はレックスをギターケースの中に入れていた。

荷物がほとんどなくなってしまって思ったことは
『相棒になんて言ったらいんだろう?』ということだった。

ポリスレポートをもらい、自分が寝ていた場所へ戻る途中、
道端にレックスは落ちていた。

『レックスは戻って来た!』
僕はそう思った。

失ったものはバックパック丸ごと、ギター、雑貨を入れた手提げ。
ほとんど盗まれたのにも関わらず、
レックスだけは戻って来たのだ。

だからこそ、レックスくんが
どこかに行ってしまうなんて信じられなかった。

レックス in チャイナ

 

 

 

旅の後半からはサブバッグのボトルホルダーに入れていた。

そう言えば、最近、気づくとレックスくんの手が
ボトルホルダーからせり上がっているのをよく発見した。
僕はその度にレックスをボトルホルダーに押し込んだ。

レックスがどこかに行きたがっているようにも思えた。

 

 

『ふざけんなよ。
一緒に日本に帰るんじゃなかったのかよ?!

これから楽しくなってくるんじゃないか!南米だぞ!』

 

 

 

 

僕は打ち拉がれた。

何もする気が起こらなかった。

みんながそろって「I don’t know」と言った。

誰かに慰めてほしかった。

 

 

 

 

 

 

 

フラフラと向かった先はパタゴニア・ストア

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閉店間際のストアではスタッフたちは
楽しそうにお喋りをしていた。

僕はゾンビのように店内を見てまわり、
話を聞いてくれた男性スタッフ、ジュリアンは僕の旅の話を聞いて、
ボロボロになったウェアを新品と交換してあげようか?
とまで申し出てくれた。

僕は少しだけ元気をもらい、
「ベンチュラでお礼を言いたいんです」
と言ってその申し出を断った。

 

 

「どこ行っちゃったんだよ…?」

なんどもその言葉を口にした。

 

 

 

 

 

18時半。

僕の行き場はマクドナルドしかなかった。

 

 

“One thing I miss at the center of my heart
(心にぽっかりと穴が空いてしまったよ)

 

 

エルレガーデンの”The Autumn Song”の歌詞を思い出した。

まさにそんな感じだ。

僕は旅の仲間を失った。

今度こそ僕は一人になってしまったのだ。

 

 

 

ウダウダと時間をつぶし、23時に閉め出される。

バックパックがいつもより重く感じる。

階段を上り、ワシントンパークの上の方、
いつものポジションにテントを張った。

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6 件のコメント

  • シミさん

    きっと、レックス君・・・
    先回りして旅の安全を確保してくれてるんじゃない??

    どこかで、また再会できるとイイですが。。。

    • >ウタさん

      え..??!!僕の安全確保してくれてるんですか??!!
      どうりで最近ラッキー続きなわけだ。

      ということはいつかはレックスに追いつくことも

      …ある、のかな?

  • レックス~(/≧◇≦\)
    最近の記事だと、
    「相性ってあるよね。もちろんヒッチにも」に出てくるレックスくんの後ろ姿に愛らしさを感じてました…

    チェコ同様レックスとどこかで再開出来ることを願います…

    • >TAKASHIさん

      再会かぁ〜〜〜…
      そればっかりは運と縁次第ですよね。

      旅を続けていれば
      もしかしたらばったり出くわすかもしれません。

      「トイ・ストーリー」
      をどうしても思い出しちゃうんですよね。
      彼らは持ち主の元に戻ろうと必死になりますが、
      僕にはレックスがポートランドを楽しんでいるような
      イメージが浮かびます。

      まぁ、漫画家だからってももありますけどね笑。

  • レックス・・・。
    シミさんのブログの中で上位にくる、哀しい事件ですね。
    どうぞ、前向きにね。

    • >あっきーさん

      そうですね。
      戻って来たのも何かの縁だし。
      去って行ったも、何かの縁。

      ポートランドすっごいい良い街だったから
      あそこを気に入る気持ちも分かるんですよね…。

      だから前向きに考えられるんです。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    「旅する漫画家」。世界一周後(2013-2016)、現在は海沿いの町に潜伏中。そろそろ旅がしたいぞ!