「チョリータ」

▷11月8日/ボリビア、ラパス

 

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今僕が泊まっている「Inti Wasi」には四部屋ほどドミトリーがある。建物の二階と三階が客室として使われている。たぶん合計で50人は宿泊できそうな大きな宿なのだ。ちなみに一階はツアーの代理店になっている。

 

いつもレセプションにいるのはインディヘナの女性だが、彼女たちが経営者のようには見えない。部屋にはスペイン語と英語の両方で書かれた部屋の利用の注意書きが貼られていた。

 

ドミトリーの客の入れ替わりは頻繁だ。僕の隣のベッドにいつの間にか欧米人のお姉さんがやって来ていた。

朝起きると隣のベッドにTシャツとパンツ一枚の後ろ姿が目に付いた。いやはや。今日は朝からツイてるナァ…♪

 

とてもつなくぬるいシャワーを浴び終えた僕は一瞬『髪を切ろうか?」と魔が差した。

 

 

 

 

ここラパスは「ボリパー」と呼ばれる限りなくパンチパーマに近パーマを安くかけられることで有名なのだ。

長く伸びた髪を乾かすのも面倒だ。世界一周60ヶ国目の記念にここはひとつアフロヘアみたいな髪型にしてもいいかもしれない。

 

僕はどのように髪を切り、パーマをあててもらいたいか絵を描いて宿に隣接する床屋に足を運んだ。

宿の近くには床屋だか美容院だかが乱立しているので、店を見つけるのは容易い。日本人がここでボリパーをよくあてにくるのか、床屋のスタッフは「クルクルー!」と言って客引きをする者もいた。

 

 

僕が足を運んだ床屋(てかさ、美容院だか美容室だか、区別がよく分からないからここでは床屋って書く)はおばちゃんが一人でいた。

この店では先日料金を確認しておいた。カットが20ボリ、パーマは50ボリらしい。店によってはもっと安くやってくれるところもあるそうだ。

おばちゃんは前歯に「コ」の字型の金歯をはめ込んでいた。南米でよくこのような虫歯の治療跡を目にするが、はっきり言って見栄えが悪い。どうしてああいう形に金歯だか銀歯を当ててしまうのだろう?

僕はボリパーがいかに強いパーマなのかを知っていたので、なんとかして程度を弱くしてくれないだろうか?とおばちゃんに相談した。

おばちゃんは最初はノリ気だったのだが、僕の要望を理解するにつれて難色を示し始めた。終いには「そんなんうちじゃ無理だよ」と匙を投げる始末だ。僕はガッカリしてその床屋を後にした。

 

 

一旦宿に戻って再度ボリパーをあてるとどうなるのかを調べたのだが、一枚たりともまともなものがなかった。何故だか知らないけど、日本人旅行者の間でボリパーが流行って(?)みたいだが、あれはどう見ても罰ゲームだと僕は思った。

「ノルウェイの森」にミドリという女のコが出てくる。彼女の初登場シーンは5cmくらいのベリー・ショートだ。その理由は「パーマを当てたら水死体みたいな髪型になって死にたくなった」からと書いてあった。

うん。髪切るのミスるとさ、『あぁ、早く髪伸びないかな?』ってなるよね。命拾いしたよ。

 

 

 

髪が乾くと僕は宿の近くを散歩することにした。今日は日曜日ということもあり、閉まっている店も多かった。だが、通りの向こうの方まで小さな露店が並んでいる通りをたまたま出くわした。

野菜や果物、食べ物の屋台、生活雑貨などが売られている。エクアドルのキトでよく飲んでいた生絞りのニンジンジュースもここでは売られていた。ボリビアのニンジンジュースは少し苦味がらあった。

僕は通りに並んだ屋台を眺めながら散歩を続けた。
盲目のアコーディオン弾きのおじさんが日曜日ののどかな空気感を演出していた。僕は思わず2ボリコインを渡した。

小さな売店の柵越しに、飴玉口に含んだおばちゃんと犬が顔をのぞかせていた。チェコという名前らしいその犬は大人しく、毛ヅヤがよかった。おばちゃんはわざわざ写真を撮らせてくれた。

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ラパスはに来る前は治安の悪さが気になっていたが、実際に街を歩いてみると印象は大分違った。僕はラパスが好きだ。このまま何事もなく、君を好きでいさせて欲しい。

 

 

散歩から帰ってくると、少し絵を描いて時間を過ごした。最近移動やバスキングで少し腕が鈍っていた。

絵を描くことについて少し考える。自分のスタイルみたいなものができてくると同じものを描く傾向に走ってしまう。つまりマンネリ化だ。

絵の上達は自分の描いたことのないものを描くことよって得られるのではないかと思う。
被写体や構図など、今まで自分の知らなかったものを見るためには、写真を撮ることはもちろだが、”Instagram”や”Pintarest”なんかの画像共有サービスはかなり役に立つ。そしてWi-Fiは必要不可欠だ。

 

 

 

 

 

ラパスからいくらか山を登った場所にある「エル・アルト」という町で毎週木曜日と日曜日に「泥棒市」が開催されるというので僕は行ってみることにした。

また、日曜日にはインディヘナのおばちゃんたちが登場するプロレスも開催されるらしい。

前々から「オバプロ(おばちゃんプロレス)」は見たいと思っていた。少し情報収集をして僕は出かけることにした。

 

 

エル・アルトまではサンフランシスコ教会の前からコレクティーボ(乗り合いバン)が走っている。”CAJA”行きのバンがそうで、運転手に「マーケットに行きたい」と言うと、すぐに理解してくれた。

運転手はマーケットのすぐ近くで僕を降ろしてくれた。階段を上がったすぐ場所に縁日のように露店が密集していた。地元で行われるダルマ市なんかとは比べものにならないくらいの露店の数と混み具合だ。

ここではスリ被害が多発しているようで、僕はサイフとiPhoneくらいしか持ってきていなかった。念のためフリースジャケットの胸ポケットにそれらをしまっておいた。

泥棒市は今朝歩いたマーケットを何倍にもした規模で、どこも人で混み合っていた。

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売られているもので目を引くのはガラクタだ。車のパーツやネジのナット、ジッパーのファスナーの部分や、用途の不明なものが辺りで売られている。

また古着も多かった。掘り出し物もあるみたいだ。
僕は古着の知識に疎いが、アウトドアメーカーの「ティンバーランド」のブーツや、「ノースフェイス」や「コロンビア」のジャケットなんかをよく見かけた。ただ、あれが本物かどうかは分からないが。

 

 

僕は物に溢れた泥棒市を歩きまわり、ひとまずオバプロのチケットを買うことにした。

何人もの人に、どこでオバプロが開催されるか訪ねたのだが、ほとんど人は理解してくれなかった。

昨日会ったアンドレアとマイラは「チョリータ」と言えば伝わると言ったが、みんな首をかしげる。

 

 

 

歩いてみると泥棒市の規模がかなり大きいことも分かってくる。『もしかしたらオバプロ行けないんじゃないか?』そんな不安も覚えるくらいだ。ここで友達とはぐれたら、まず見つけ出すことはできないだろう。

スペイン語の辞書アプリで「レスリング」と調べると「ルチャ・リブレ」と出てきた。あぁ!そうか。

そこからは話が早かった。ジェスチャーを交え訊いてまわっているうちにだんだんとオバプロが行われる会場へと距離を縮めていった。

他の人のブログではさも当然にオバプロを見ているように書かれているが、情報収集怠るとマジで大変だ。

 

 

なんとか開始30分前に会場に着くことができた。チケットは50ボリビアーノで¥850くらいだ。現地人は15ボリ(¥270)で観ることができる。

会場はフツーの体育館の中央にリングが絶対されており、その周りを柵が覆っていた。ツーリストは柵に沿ってプラスチック椅子に座り、現地人は観客席に座っていた。

席は六割ほどしか埋まっていなかった。日の沈まない夕方からプロレスが始まるなんて意外だ。

開始時刻を過ぎても試合が始まる気配はなく気がついたらうたた寝をしていた。

 

 

試合は5試合ほど行われたが、そのすべてにインディヘナのおばちゃんが出るわけではなかった。

最初はごくフツーのプロレス。いや、どこかコントじみていた。プロレスが「ショー」であることはみんな了解済みだが、それでも当たっても痛くなさそうな空パンチを見ていると、思わず笑ってしまう。ツーリストも地元民もみんな口を開けて笑っていた。そんななかで子供達だけが熱狂して声援を送っていた。その後継が微笑ましい。

 

 

試合が消化されるにつれ、試合の内容も熱を帯びてきた。三試合目にようやくインディヘナのおばちゃんが登場し、待ってましたとばかりに会場が沸いた。

もちろんコメディの要素を多分に含んでいたので、笑いながら見ていられる。
中にはキス魔のおばちゃんがいて、試合に観客を巻き込みさえもした。

ボリビアのプロレスは「いい者」と「悪者」がはっきりしており、プロレスを始めて観る僕でさえ、どちらを応援すればいいのかすぐに理解できた。

あのヒラヒラのスカートを穿き、三つ編みヘアーのおばちゃんがリングの上を舞う。「ズタン!バタン!」とキャンバスが軋む。

子供達には熱狂を。大人たちには笑いを。駄試合もあったけど、僕は満足して試合を見終えた。

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外に出ると僕はコレクティーボを降りた場所まで歩いて戻ることにした。15分ほどの距離でそこに着くまでに道に迷ったりもしたため、空はどんどん暗くなっていた。

エル・アルトからラパスの街が一望できる。黄色い街の灯りがゆらめき、寒さに僕はジャケットのポケットに両手を突っ込んだ。

 

 

 

コレクティーボに乗り、再びサンフランシスコ教会の前で降りた。教会の近くの広場では何かコントのようなものが行われており、階段は人で埋め尽くされていた。

決して豊かではないボリビアでは人々を楽しませるこうい催し物が重要なんだと思う。ここに住む人々にはそれらを受け入れる土壌がある。だからこそ路上パフォーマンスにもレスポンスがもらえるのだ。

1.5ボリL&Mのタバコを二本買い、一本か吹かすと僕は宿に戻った。

 

 


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ABOUTこの記事をかいた人

「旅する漫画家」。世界一周後(2013-2016)、現在は海沿いの町に潜伏中。そろそろ旅がしたいぞ!