「パースも佳境だぜ!」

2月19日/オーストラリア、パース

 

 

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カーペットの上で目をさますと、8時にはテーブルに向かってアイディアを描き始めた。

ここはWHALES AVE(ホエールズ・アヴェニュー)のヨウスケさんとビュンヒーが住むシェアハウス

家主はタキさんという日本人の方だ。他にもここにはヨウスケさんのガールフレンドとバスカー仲間の韓国人、ユンも暮らしている。

 

 

僕はどうしてユニット名に「ホエール(くじら)」とつけたのか、ヨウスケさんに尋ねたみた。

名前の由来は

「クジラが夏の海を追って生きていくように、二人も夏を追いかけるように世界を旅するから」

だそう。

 

 

最初聞いていたイラストは一点だけじゃなく、小さいものが数点あった。ご存知の通り僕はパソコン編集のスキルは持っていないので線画だけしかか書くことができはい。

二人はそれでも構わないと言う。ユンはイラストレーターなどの編集ソフトをMacBook Proの中にばっちし持っていたからだ。

っていうかね、みんなMacBook Pro持ってんだよな。これが。やっぱアーティストにはProなのかなぁ。日本に帰ったら絶対買い直そうと思う。

 

なぜだか今日はからだが変な疲れ方をしていた。

昨日の夜遅くまでイラストの案を二人とともに出し合ったからだ。

今までは一人で創作活動を続けてきたわけだけれど、こうして他の人間と考えを共有して新しい者を生み出していくには、また脳みその別の部分を使うということなんだろう。ヨウスケさんも今日は疲れが体に残っていると言っていた。

 

 

 

 

10時過ぎには僕たちは家を出た。ホエールズ・アベニューの二人は今日はフリーマントルでライブのオファーをもらっているらしい。

僕だけマレーストリートで降ろしてもらい、僕はいつものように図書館へ行き、さっそく絵を描き始めた。

 

 

最初に取り掛かったのはアイコンの絵だ。

アイコンやロゴというのは一見シンプルに見えるがだからこそ難しい。やはり手書きよりパソコンやタブレットを使って描いた方が綺麗な線も弾ける。だからこそ、今回は手描きのよさをどう出していくのかが僕の課題だった。

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いつものようの14時まで図書館で作業していたわけだが、効率はあまりよくなかったように思える。

なんだか頭がよく回らないのだ。

僕はヨウスケさんのことが気になった。ライブに支障をきたしていないだろうか?

 

 

 

 

図書館を出ると、僕はいつものようにマレーストリートへ行きバックパックの上に座って絵を描き始めた。

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マレーストリートは金曜日ということもあり賑わいを見せていた。

バスカー友達のニモが本腰を入れてバルーンアートをやっている姿を初めて見たような気がした。

 

 

今日も路上で絵を描いていたわけだが似顔絵のオーダーは取らなかった。

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既にセキュリティのアダムから他の漫画のオーダーももらっていたし、昨日別の人からも(上のやつね)同じようなオーダーをもらっていたからだ。

漫画のオーダーをもらった時、1ページ仕上げるのに一時間半から二時間はかかってしまう。稼ぎで言うのであれば、似顔絵の依頼がたくさん入った方がいいのだが、オーダー漫画を描いている時は暇じないし、これを仕上げれば確実にお金が手にはいるのだ。

本当はあまり受けたくなかったのだが、評判を聞きつけて他のセキュリティが僕にオーダーメイド漫画を依頼してきた。お客はインド出身の女性で、彼女はルークに描いたような結婚から二人の娘の出産までを描いて欲しいと僕に言ってきた。なぜだかそれも威圧的に。

 

 

僕がこうして路上で受けたオーダーの製作に取り掛かっているのかというと、それは数日前にオーダーをくれ女のコにまだ会えていないからだ。

描いた漫画は他の依頼主にちゃんと届いたが、彼女は今日も現れなかった。

うーーーん。これ渡せなかった場合、どうしようかな?

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ヨウジさん渋い♪

 

 

 

 

 

18時になるとマレーストリートを引き上げてマクドナルドで作業することにした。

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今の僕はふたつの依頼を受けている。

ひとつはホエールズアヴェニューgs新しく作るホームページのイラスト作成。もうひとつはショッピングモールで働くセキュリティのルークの家にウォールペイントを描く以来だ。

 

 

22時半になるとマクドナルドにルークが僕を迎えに来てくれた。

彼はどこか疲れたそうな顔をしていた。酔っ払いがモール内のトイレの水道管を壊したらしい。

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僕はルークの車に乗り、彼の家まで向かった。ドライブ中はホエールズアヴェニューのCDを聴いていた。

ルークの家はパースのシティセンターから車で40分ほど離れた比較的新しい郊外にあった。まだ開発途中で周りの景色もどこか荒涼としていた。まるでそこだけイランだかモロッコの乾燥地帯にあるようだった。住宅地の家の造りもいたってシンプルで外観だけでは他の家と区別がつかなかった。

 

家の中に上がるとジュリアが僕たちを迎えてくれた。お腹が大きく膨んでいることに目がいった。もう三ヶ月もすれば子供が生まれるらしい。

時刻も遅かったのでさっそく僕たちはウォールペイントの打ち合わせを始めた。

僕たちが寝たのは1時過ぎだった。

 

 

こういう忙しさが楽しくもあり、有難くもある。

オーストラリア旅終了間際。

最後になっていい依頼をもらえたと思う。

 

 


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