「島根のヒッピー」

3月24日/日本、鳥取

 

 

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下の階でみさが支度をする音が聞こえた。

ちゃんと行ってらっしゃいを言わないとな。僕はすぐに布団から出て、一階へと降りて行った。

 

 

みさの出勤を見送って、僕も一日の活動を始めることに。

まず最初にキッチンでお湯を沸かして白湯を飲む。朝は食べはしないけれど、何か温かいものが飲みたくなる。できたらコーヒーだけども。

日野町の朝は寒かった。カップから白い湯気がほんのりと立ち上るのが見えた。

 

 

必要以上に物がない家というのも、ある意味集中するのに役立ってくれる。

ほんとうにハヤトの家には物がないのだ。面白そうな本やハヤトの趣味であるレコードなんかはあるけれど、ここにWiFiはないし、漫画だってない。

僕はただ居間の真ん中にあるテーブルに座って、カタカタとパソコンのキーボードを叩いた。文章を書くにはとてもいい時間だった。朝の作業も嫌いじゃない。

 

 

 

ハヤトも二階にある自分の部屋で作業をしてきた。9時前になると、二階から降りてきてた。

 

 

今日もハヤトの家には友達がやって来るらしい。

なんだか来客の多い家だ。

 

 

なんでもその友達は島根に住むヒッピーだというのだ。その友達の名前はコウスケと言い、奥さんと子供と一緒に服を作りながら、スローライフを送っているらしい。

 

 

「自宅出産でさ、ハサミでヘソの尾切るのが嫌だったから、代わりに竹で切ったらしいよ」

とハヤトが言った。

お、おおお..!一体どんなヒッピーがハヤトの家にやって来るのだろう?

 

 

 

 

 

 

日中の予定は昨日と変わらない。

ハヤトも最近来客続きで仕事がそこまで捗っていないようだ。お互い一人になる時間も大切だろう。

 

今日は作業場を変えてみることにした。
この日野町にはWiFiが入る場所は公民館の他にもあるらしいのだ。

なんだか日本ってよくわからない。
海外だったらないような場所にWiFiがあったりするから。ネット回線はライフラインの一部ってことだろうか。

 

 

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車で10分ほど行った場所にスーパーがあった。昨日カレーの食材を買った場所だ。

その場所はスーパー以外にも酒屋や婦人服、化粧品、文房具などを売る小さなテナントがいくつか入っていた。マルエツと似たようなものだろうか?

 

そのスーパー(?)の一角には団欒スペースがあった。

テーブルが三台と人が5人くら座れそうな床から少し浮いた座敷のようなスペース。あと椅子が何台かだ。

ほんとうにちっぽけなスペースなのだが、そこでWiFiを使うことができた。キャリアと契約していなくても使える。フリーのWiFi。

なんだそれが意外だった。こんな場所で。ただ、コンセントの使用は禁止されていた。

 

ハヤトには夕方に迎えにきてもらう約束をして僕たちは別れた。

 

 

 

 

 

テーブル席に着くと、コーヒーをすすりながらいつもの作業をする。

最近は毎日インスタグラムに自分の作品をアップしているのだけれど、インスタグラムは写真が一枚ずつしかアップできないので、一度に大量の写真をアップすることができない。それだけでも地味に時間がかかってしまう。

 

 

iPadの画面をパタパタ叩いていると、私服の女子中学生たちがそのスペースにやってきた。

目の端で彼女たちの姿を捉える。みなそれぞれにスマートフォンを持っており、ぺちゃくちゃとおしゃべりをしていた。

彼女たちの話ぶりを聞く限り(僕は外からの会話が不可抗力で頭の中に入ってきてしまうのだ)担任の先生の離任式のためにここまでやって来たみたいだ。もしくはそこまで行くのか?まぁ、詳しくはわからない。

今はバスを待っている最中のようだ。人の少ない町ではバスの本数も少ない。

 

 

女のコの一人が

「◯◯ちゃんが東京に行ったんだよね。いいよね〜」

と羨ましそうに言った。そうか。都心以外に住む若い子たちは東京に焦がれるものなのは変わらないのか。

 

 

確かに東京には実に色々なものが溢れている。

いや、溢れすぎている。人も物も。

僕が旅を通して改めて思ったのはそういうところだった。

人々が忙しなく行き交い、常に何かに追われて生きているようなそんな感じ。今いる日野町とはまるっきり逆だ。

 

 

そんな東京を知っているからこそ、自分は移住したいと思うのかもしれない。もちろん自分の行ったことのない土地に対する憧れのようなものもある。

反対に、彼女たちは今住んでいる場所しか知らないからこそ、東京に行きたいと思うのかもしれない。

世界一周だって同じだ。見たことがないものに胸を躍らせて、「その場所を自分の目で見て、感じてみたい!」という純粋な欲求が僕を旅に駆り立てた。

 

もし、仮に、自分に子供がいて、その子が「東京に行きたい!」と言い出したら、僕はどうしよう?

漫画家の妄想で僕はいつかの未来を想像する。

特に女のコは危険だ!向こうでどうしようもない男に引っかかったらと考えると!

あぁ!もうっっっ!
お前に娘は絶対にやらんっっ!

って、妄想行き過ぎた(笑)

 

 

それでも、僕は、自分の子供に旅をさせるのだろう。自分がそうしてきたように。

どんなにネットが発達して、その場にいながら外の情報が手に入っても、やはり自分で見ないことには分からないのだから。

ただし、男を見る目は磨いて欲しい(笑)

何言ってんだよ。おれ。

 

 

 

 

 

 

「それでさ!バスに乗っている間、△△、ずっとイノシシのこと話してたんだよね!」
「△△、イノシシの話題になると、止まらないよね〜!」

 

 

イノシシて..!

 

超ローカルな話題だな!僕も今まで生きてきてイノシシの話題する女のコには初めて遭遇したな。

 

 

不可抗力的に入ってくるガールズトーク。そこから膨らむ妄想。

そのせいで作業はあまり進まなかった。台湾にいた時は時間制限を気にしながら作業していたのに、今では好きなだけWiFiが使えてしまうのだから。

 

 

 

 

 

 

ダラダラとブログのアップをしていると、ハヤトと友達がやって来た。

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ハヤトとコウスケは同級生。

 

 

最初「ヒッピーの友達」と聞いて、どんなドレッド頭のヤツがやってくるんだろう?と思ったが、コウスケは日向の縁側と緑茶が似合いそうな、優しい目をしたお兄さんだった。

今回はハヤトに新作の服を発表するためのフライヤー作りを頼みに来たらしい。二人は僕の前の席に座ると、打ち合わせを始めた。

こんな場所で(っていう言い方は失礼だけど)MacBookProとAIRを広げている僕とハヤトはなんだか、先進のノマドみたいだな、と僕は思った。まぁ、僕は使いこなせてないんだけど。

 

 

 

その間、僕はマシンガンの資料探しに時間を費やしていた

先日ヒッチハイクの際に似顔絵のオーダーをくれたモトマツさんからの要望は、「マシンガンを持ったギャングスタにして欲しい」というものだった。

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こんなんばっか。かゆいところ(描きたいアングル)に手が届かないもどかしさ。

 

 

車の中で見せた、パースでのギャングスタを題材にしたウォールペイントを気に入ってくれたからだろう。

アプリやGoogle画像を駆使してあれこれマシンガンの画像を探したのだけれど、なかなかいいモデルが見つからない。終いには銃の構え方なんかも気になり始め、作業は難航した。

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重そう..。

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それと土佐犬を描いて欲しいというご要望もいただきました。

 

 

ちょっと話はそれるけど、実際銃を撃つとなると、映画で見るような片手打ちはできないそうだ。反動が強すぎるんだって。漫画でも銃を撃つシーンがよくあると思うけど、ああいうカッコイイ打ち方も、実際は存在しないのだ。

いや、知ってたけどさ。気になりだすと、一体どんな風に銃を描けばいいのか分からなくなってくるよ。

 

 

思い通りの資料が見つからず、延々と資料探しに時間を費やしてしまう。

これは漫画を描いている時に時々陥るドツボだ。僕はこれで2時間費やした。

『これで千円じゃ割に合わないよな』なんて考えが一瞬頭に浮かぶが、車に乗せてもらって何言ってんだよ。だ。絶対似顔絵が家に届いたら嬉しいに決まってる。誰かが待っててくれるんだったら、僕は絵が描ける。

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ランボーさんも、この通り!あなたのお気に入りのマシンガン(これショットガン?)はなんですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

17時になると、食材を少し買ってハヤトの家に戻ることにした。

今日はコウスケが料理を作ってくれるらしい。友達やその知人が作る料理と聞くとワクワクする。一体何が食べられるのだろうか?

 

 

コウスケが料理をしている間、僕たちはくつろいで過ごした。

ハヤトも古くからの友人に会えて気分が良さそうだ。体を気持ち良さそうに揺らしながらDJをしている。僕もハヤトの流す音楽を楽しんだ。

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食前酒もまた最高に美味かった。灯油ストーブの上でかまぼこを炙り、ビールや日本酒に併せて食べると、これがまた美味いこと!

 

 

僕は下戸なのですぐに酔っ払ってしまった。

ハヤトがおもむろにディジュリドゥを持ってくる。僕は気分は60年代のビートジェネレーションに活躍したサックスプレーヤーばりに、ディジュリドゥを吹きまくった。演奏はへっぽこだったけどさ。

 

ここにきた時、ハヤトに僕がオーストラリアのパースで出会ったWHALES AVE(ホエールズ・アヴェニュー)のCDを聴かせたのだが、それを聴いて彼のディジュリドゥ熱が再発したらしい。昨日二万円する新しいディジュを買ったのだ。

後で奥さんに「事前報告してください!」って怒られたらしいけど(笑)。

 

 

コウスケの料理はゆっくり一品ずつ出来上がった。

僕たちはそれらをひとつひとつ味わい深く食べた。

どれもこれも美味しく感じたのは、ここが最高の空間だからだろう。

 

今晩がここで過ごす最後の夜。三日間とも全てが楽しかった。

てご亭」というのがハヤトの家の名前だ。

あなたも一度来てみませんか?音楽と美味い飯と酒。これさえあればどこでもハッピーになれることは間違いないね。

 

 

 

 

「あ、シミ、ここにもマシンガンあるよ」

酔っ払った頭でハヤトが取り出したレコードのジャケットを見る。

そこにはジェームス・ブラウンが不自然な構え方でマシンガンを撃つジャケットがあった。

 

 

これは何かのお告げか?

星の数だけあるジャケットの写真にたまたまマシンガンを持ったジャケットがあるなんてさ。

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視線は前方でその構えってことは、間違って引き金引いちゃった感じだ。ドジっ子ブラウン笑。


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